「ぶっちゃけ、僕自身はライブイメージを直接必要としていないし、ライブイメージのことはとくに気にもかけていない。にもかかわらず、かなりの時間をライブイメージ作成に費やす羽目になっている。数人のメンバーも僕と同じようにライブイメージ作成にすごく時間を使っていて、そのことには本当に感謝しかない。でも、それでも追いつかないのが実情なんだ」
これは6月26日にDebian開発者として著名なSteve McIntyreがDebian開発者向けのいくつかのメーリングリストにクロスポストした内容の抜粋だ。そしてこのMcIntyreのポストをProject DebianのPaul Wiseが8月4日に開発者向けのニュース「Misc Developer News #44」であらためて拾ったことで、Debian Liveの今後の開発体制にちょっとした注目が集まっている。
- IMPORTANT: Do live Debian images have a future? -Steve McIntyre
- Misc Developer News (#44) -Paul Wise
本コーナーでもお伝えしたとおり、約2年ぶりのメジャーアップデートとなった「Debian 9 "Stretch"」は6月17日にリリースされたものの、その直後にライブイメージのバグが見つかり、わずか4日後の6月21日にDebian 9.0.1を出すことになる。
こうした一連のドタバタを受け、これまでライブイメージ開発に関わってきたMcIntyreは、ライブイメージ作成にそれほど情熱をもっていない自身および数人のメンバーのみでライブイメージの開発を続ける状況を「十分とはいえない」と評している。
Stretchのライブイメージ作成では新ツールの「live-wrapper」が使われ、過去のビルドツールに較べてずいぶん使いやすくなったという。だがそんな便利なツールがあっても、作成したライブイメージがごくわずかしかテストされない状態でリリースされてしまっては意味がない。ライブイメージのバグがほとんどレポートされることなく正式リリース至ってしまった今回の件についてMcIntyreは「ライブイメージを事前に使ってテストする十分な数のメンバーもいなければ、バグの有無を気にかけるメンバーもいなかったことを示している」と述べている。
ライブイメージを"標準的なレベル"までに押し上げるには現在の体制では無理がある ―McIntyreは「より多くの人々による、一貫していて、継続可能な開発体制が必要」と強調している。この問題をふたたびニュースとして取り上げたWiseは「もし、(Debian開発者が)支援に動かなかったら、McIntyreはライブイメージ作成から完全に手を引いてしまうだろう。そうなるとDebianに残された道は、ライブイメージがなかったころのインストールに戻るしかない」と警告し、関心をもつように呼びかけている。"存在してあたりまえ"に思われがちなライブイメージだが、Debianユーザがそのまま恩恵を受け続けるには、何らかの動きが必要なようだ。