Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のフリーバージョンとして、CentOSとともにかつて活発に開発が進められていたディストリビューションにScientific Linuxがある。開発の中心的存在となっていたのは欧州最大の原子核研究機関のCERN(Conseil Europeen pour la Recherche Nucleaire:欧州素粒子物理学研究所)と米国のフェルミ国立加速器研究所で、RHEL 6をベースとするScientific Linux 6.1あたりまでは、ときにCentOSを凌駕するスピードで開発が進んでいたこともある。
だがそれ以降は、チーフアーキテクトのRed Hatへの移籍などがあり、急速に開発ペースがダウン、さらに2014年にCentOSがRed Hatのスポンサードプロジェクトとなってからは、Scientific Linuxの開発に参加してきたチームが次々と離れていく事態となっていた。2015年にはそれまでScientific Linuxをコアで支えてきたCERNもプラットフォームをCentOSへと移行している。
そうした中でもフェルミ研だけは地道に開発を続けてきたのだが、ついに終わりのときが近づいてきたようだ。フェルミ研でScientific Computing Divisionのヘッドを務めるJames Amundsonは4月22日(米国時間)、Scientific LinuxはRHEL 8をベースとするバージョン(Scientific Linux 8)の開発は行わず、今後はフェルミ研のプラットフォームをCentOS 8に移行することを発表した。理由はフェルミ研が現在注力するニュートリノプロジェクト「DUNE」やその他のプロジェクトに実験リソースを割くことを優先するためだとしている。
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この決定により、Scientific Linuxは2018年12月にリリースされた「Scientific Linux 7.6」をもって最終バージョンとなる。なお、Scientific Linux 6および7に関しては当面、サポートを継続する予定だという。
Amundsonのメールは「これまでScientific Linuxに貢献してきてくれたすべての人に、そしてこれからもそれを(サポート業務として)継続してくれる人々に感謝したい(Thank you to all who have contributed to Scientific Linux and who continue to do so.)」と結ばれている。Goodbye Scientific Linux!