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2020年8月5日Linux 5.8がリリース、コーディングスタイルに"inclusive terminology"適用

Linus Torvaldsは8月2日(米国時間⁠⁠、⁠Linux 5.8」を公開した。前バージョンのLinux 5.7のリリースから約2ヵ月、7本のリリース候補(RC)版を経ての公開となる。

Linux 5.8 -Linus Torvalds

Linux 5.8のリリースについてLinusは「ぎりぎりまでLinux 5.8-rc8(8本目のリリース候補)を出そうかどうか迷ったけど、それほど大きな問題がない以上、リリースまでもう1週間待つことに意味はないと判断した」とコメントしている。マージウィンドウの時点で過去最大のカーネルサイズだったLinux 4.9に迫るほど「Really Big」といわれたLinux 5.8だが、どうやらカーネルサイズがリリースの支障になることは避けられたようだ。

Linux 5.8におけるおもなアップデートは以下の通り。

  • メモリスラッシング(memory thrashing)発生時におけるスワッピングの改善、またswapinessの最大値を200に
  • カーネル空間のデータ競合(data race)を動的に検知する「Kernel Concurrency Sanitizer(KCSAN⁠⁠」
  • 汎用的なパイプを活用したカーネル→ユーザ空間イベント通知メカニズム
  • procfsにおける複数のプライベートインスタンスのサポート(1つの名前空間に存在する複数のprocfsがそれぞれのマウントオプションをもてるようになる)
  • pidffdがsetns()の第1引数として指定可能になり、プロセスの名前空間への関連付けが容易に
  • ARM64におけるセキュリティ強化(ClangのインストゥルメンテーションパスであるShadow Call Stackのジェネリックサポート、ARMv8.5-BTIのカーネル/ユーザ空間でのサポート)
  • インライン暗号化ハードウェアのサポート
  • 新たなセキュリティケイパビリティとして、CAP_SYS_ADMINの特権がなくてもBPFの操作を実行できる「CAP_BPF⁠⁠、パフォーマンスモニタリングを実行できる「CAP_PERFMON」が追加
  • IPv6におけるマルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)をサポート
  • IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)によって「IEC 62439-2」として標準化されたプロトコル「Media Redundancy Protocol(MRP⁠⁠」のサポート

なおLinux 5.8ではメインライン開発では初となる"inclusive terminology"ガイドラインをコーディングスタイルに適用しており、Linux 5.8以降は「master/slave」⁠blacklist/whitelist」など差別的とされる専門用語をドキュメントやシンボルネームに使用することを避ける方針を明らかにしている。

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