2020年11月に発表されたARMベースのApple M1チップとそれを搭載したMacハードウェア(MacBook Air、MacBook Pro、Mac mini)は、一般ユーザはもとより、アプリケーション開発者の間でも評価が高いが、残念なことにApple以外のOSはいまのところ動作しない。M1 Macのリリース当初、Linus Torvaldsは「Linuxが動くなら欲しいけど、サポートしてくれない企業(Apple)と闘う気もない」とコメントしており、メインラインがサポートに動く予定もしばらくはなさそうだ。だが、リバースエンジニアリングで"Linux on M1 Mac"を実現する動きがいくつか出始めている。2021年1月1日から活動がスタートした「Asahi Linux」もそのひとつだ。
- Asahi Linux
- Asahi Linux -GitHub
- Sponsor @marcan on GitHub Sponsors
Asahi Linuxは個人開発者のHector Martin "marcan"が主導するプロジェクトで、YouTubeコンテンツ作成者やクリエーターなどを対象にしたクラウドファンディングプラットフォーム「Patreon」やGitHubスポンサーから寄付を募って活動を行っている。プロジェクト名の"Asahi"は日本語の「朝日」と「旭りんご」に由来しており、AppleがMacintoshというりんごの名前を自社のフラグシップに使用したストーリーに寄せているようだ。
開発者のMartinはリバースエンジニアリングを得意とする開発者で、過去に「PS4 Linux」や「AsbestOS(PS3 Linuxのブートローダ)」といったプロジェクトに参加してきたとある。その経験を活かしてApple M1チップをリバースエンジニアリングし、最終的には「Arch Linux ARM」のような形態でのディストリビューションリリースを目指しているという。
Martinは2月5日、カーネル開発者向けのメーリングリスト「LKML.org」にASAHI Linuxの最初の成果物となるパッチを投稿しているが、その中にはsimplefbベースのフレームバッファやMac Mini 2020用のデバイスツリー、さらに「m1n1」というMac Mini 2020を対象としたブートローダーも含まれている。
- [PATCH 00/18] Apple M1 SoC platform bring-up -Hector Martin
- AsahiLinux/m1n1 -A bootloader and experimentation playground for Apple Silicon -GitHub
そのほかのApple M1 MacにLinuxをポーティングする動きとしては、米フロリダに本拠を置くCorelliumが1月に「M1 Mac上でUbuntuのUSB/NVMeブートを実現した」としてそのチュートリアルを公開したことが話題になった。ただしいずれのプロジェクトにおいても、M1 MacのGPUアクセラレーションのサポートがハードルとなっており
、今後の"Linux on M1"における大きなポイントとなりそうだ。
- How We Ported Linux to the M1 -CORELLIUM