Ubuntu Weekly Topics

2013年11月8日号Ubuntu 13.10 日本語Remixのリリース・Ubuntu “OIL”・UWN#341

Ubuntu 13.10 日本語Remixのリリース

Ubuntu Japanese Teamは、11月7日にUbuntu 13.10の日本語Remixをリリースしました。日本語Remixは、オリジナルのUbuntuには含めにくい、日本語環境に特化した修正を加えたものです。特に13.10ではインプットメソッド(IM)まわりの調整が加わっており、⁠現在のLinuxにおけるデスクトップ環境を熟知していて、自力でたいていの設定を行える人」以外のすべての日本語利用者にお勧めします。

なお、通常は日本語Remixはubuntu.comでISOイメージが公開されてから数日以内(ただし地球の一日だとは誰も言っていない)にリリースすることが通例となっていましたが、今回はいろいろな理由からリリース候補版の作り直し(複数回)とそれに伴う動作テストのため、通常のリリースよりもリリース時期が遅くなっています。

今回のリリースでは32bit・64bitそれぞれのISOイメージをリリースしています。通常の推奨は64bitですが、快適な利用のため「メモリ4GBを超える環境では64bitを使う」⁠それよりもメモリが少ない場合は32bitを使う」ということをお勧めします。

これは、64bit版を使うことで直接的なメリットを得られるのは、デスクトップ環境では次の点であるためです。

  • 仮想マシン(たとえばVirtualBox)を使うことで、64bitゲストを扱うことができる。
  • 一部のファイルシステム(特にXFSとext4)において、ファイルシステムの上限容量が増える。
  • CPUインテンシブなタスクの処理性能が向上する(CPUによっては逆に劣化する可能性もある⁠⁠。
  • プロセスから4GB以上の空間にアクセスできる。

このうち最後のものは、たいていのデスクトップ環境では無縁な話です。超高解像度のフォトレタッチや動画のたぐいを扱う場合や、開発環境として利用し、デスクトップ上でDBを走らせる、と言った特殊なケースでは有効な可能性がありますが、⁠デスクトップ」よりはワークステーションに分類されるタスクと考えられます。また、3番目が有効に機能するケースも「デスクトップ」というカテゴリで考えるとフォトレタッチやビデオレンダリングといった類で、有効なケースは非常に限定的です。サーバー環境であればこうした特徴がうまく機能する可能性が高いのですが、典型的なデスクトップ環境ではあまり性能に寄与しないということです。

一方で、64bit環境にすると既存の32bit環境のライブラリが導入(&32bitアプリケーションを使う場合はメモリ上にロード)されるため、全体としてのメモリ消費量は確実に増加します。システム全体として十分なメモリ容量を確保できない場合、⁠32bit環境の方が快適」ということも珍しくありません。

こうした事情により、64bit環境の導入は「システムに搭載されているメモリが4GBを超えている場合」をひとつの目安とすることをお勧めします。この目安は、一般的なデスクトップ環境であれば4GBを超えるメモリを要求するケースはまずなく、64bitにすることによるメモリ消費の増大も許容できるだろうという想定によります[1]

……とはいえ、もちろんこうした事情を把握しつつ、⁠でも64bit環境の方が気分がいい」という理由で64bit環境を導入するのも良い選択のひとつです。

既存の環境をアップグレードする場合は事前にバックアップをとった上で、アップグレード処理中にリリースノートを確認することをお勧めします。特に13.10では日本語入力周りの変更点が大きく、何も知らずに利用しようとすると途方に暮れる可能性があります(とはいえ日本語Remixではim-setup-helperのおかげでかなりの部分が簡単に設定できるようになっているため、素の状態や開発途上の頃に比べるとそれほど苦労はしません⁠⁠。13.04の日本語Remixからアップグレードした場合、13.10の日本語Remixと同じ状態にするには、あらためてパッケージレポジトリを追加する必要があることに注意してください。

なお余裕がある場合(あるいはより詳細な背景を把握したい場合⁠⁠、リリースノート以外に、次のUbuntu Weekly Recipeの記事もあわせて確認することをお勧めします。

  • 第295回 リリースノートの使い方
  • 第296回 Ubuntu 13.10と日本語入力
  • 第297回 Ubuntu 13.10でインプットメソッドFcitxを活用する
注1
IntelのNetburstやCore MAベースのCPU(≒Pentium4とCore 2シリーズ)は64bit環境ではレジスタ増加分による性能向上以上にペナルティが大きく、⁠x64はi686を前提にしたx86環境よりもレジスタ効率がよくなる分高速化する」という通例に反してむしろ遅くなる可能性があります。4GBを超えるメモリ搭載量のシステムは多くの場合DDR3メモリ世代のため、⁠4GB以下のメモリ搭載量のシステム」というくくりでPentium 4やCore 2シリーズを捉えることで、⁠64bitにするとむしろCPU性能は発揮できなくなる」という問題を回避できるという理由もあります。とはいえPentium 4はCore 2シリーズはすでにリリースから少なくとも5年は経っており、最新の環境に比較するとあまり快適ではないので、どちらでも良いといえばどちらでも良いという考え方もできます。

Ubuntu “OIL”

OpenStack Summit 2013の基調講演において、Canonical/UbuntuのMark Shuttleworthが『Ubuntu OIL』発表しました。OILはOpenStack Interoperability Labの頭文字を取ったもので、⁠ハードウェア・ソフトウェアの両面から相互運用性を整える」ためのアライアンスプログラムです。明示されているパートナーはDell, EMC, Emulex, Fusion-io, HP, IBM, Inktank/Ceph, Intel, LSi, Open Compute, SeaMicro, VMwareとクラウド関連のプレイヤーがひと通り揃っており、きちんと機能すると「○○は動くが××が動かない」といった事態が大幅に減少することになります。

このプログラムのCanonicalやUbuntuにとっての意味は、⁠OpenStackを構成するいろいろなパーツを、Ubuntuのユーザーが任意に選べるようになる」ことです。OpenStackは各モジュールごとに利用するハードウェア・ソフトウェアを選択できるものの、現状では「その選択肢を取るには~~のパッチAを当てた上で設定ファイルに○○と書く必要があり、さらに▲▲と連携するにはこのプラグインを入れてパッチBを当てる必要がある。ただし、▽▽と連携するにはパッチBが干渉するためこうした問題を回避するパッチCを適用しなくてはならないが、これを当てると今度は設定ファイルに○○と書いていると動かなくなる」といった賽の河原的パズルと戦う必要があるのですが、相互運用性を追求するプログラムが立ち上がることにより、必要に応じてアラカルト的に構成を選択することができるようになります。

あわせて、JujuによるUbuntu上でのCloudFoundry環境の構築がサポートされることも表明されました。CloudFoundryはPivotal社(EMC/VMwareの子会社)が開発する「PaaSレイヤ」を提供するためのソフトウェアで、VMware/vSphereだけでなく、AWSやCloudStack・OpenStack等、さまざまなクラウド基盤上にインストールできるアプリケーションプラットフォーム(というか一種の抽象化レイヤ)です。Cloud Foundry環境をPaaS基盤として開発したソフトウェアは、Cloud Foundryが動作する環境で利用できるという特徴を持ちます。開発用にローカルサーバー一台で構成することも可能で、⁠手元のマシンからクラウド上まで」柔軟な利用が可能です。

ソリューションとしては「Turn Key」タイプ、つまりコマンドひとつで構築できる、というものだと発表されています。実現すると、⁠Ubuntu ServerベースのOpenStack環境に、Jujuを用いて簡単にCloud Foundry環境をデプロイし、手元で開発したアプリケーションを動かす」という環境が整うことになります。

UWN#341

Ubuntu Weekly Newsletter #341がリリースされています。

その他のニュース

今週のセキュリティアップデート

usn-2009-1:Firefoxのセキュリティアップデート
usn-2010-1:Thunderbirdのセキュリティアップデート
usn-2011-1:Libavのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-November/002299.html
  • Ubuntu 13.10・13.04・12.10・12.04 LTSがリリースされています。LP #1242802にまとめられた複数の脆弱性を修正します。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
  • 備考:Ubuntuの通常のアップデートポリシーとは異なり、upstreamの新バージョンをそのまま取り込んでいるため、バグ修正や挙動の変更を含みます。

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