クラウド運用のリアルを変革につなげるには?―「Cloud Operator Days Tokyo 2022」の歩き方

#02「Cloud Operator Days Tokyo 2022」オンデマンドセッションを楽しもう ―編集部の“推しセッション”大紹介

クラウド運用管理にスポットを当て、技術やノウハウを共有するカンファレンス「Cloud Operator Days Tokyo 2022⁠⁠。その本編と言えるオンデマンドセッションが6月27日から配信中です(オンデマンド配信は7月27日まで⁠⁠。

Cloud Operator Days Tokyo 2022 運用者に光を! ~変革への挑戦~
URL:https://cloudopsdays.com/

今回は、オンデマンドセッション7トラックの概要と、全71セッションの中から編集部おすすめセッションをご紹介します。あわせて、7月27日(水)にオンライン/オフラインのハイブリッド形式で行われるクロージングイベントの見どころも先取りでお届けします。

「CODT2022」の7トラック

「Cloud Operator Days Tokyo 2022」では以下の7トラック(テーマ)で構成されています。昨年の5トラックから2本 ――昨年は共催イベントが1トラックあったので、実質3トラック増えた形になります。

  • 大規模システム運用 …11セッション
  • 運用苦労話(しくじり、トラシュー)…12セッション
  • 運用自動化(Dev/Ops、CI/CD)…17セッション
  • 社内基盤(情シス、開発環境)…10セッション
  • Cloud CoE …3セッション
  • サービス・アプリケーション運用 …12セッション
  • 製品・技術トレンド …6セッション

では各トラックの特徴を見ていきましょう。

[大規模システム運用]では、昨年同様大手のネット企業によるセッションが並びます。まさにここでしか聞けない話ばかり。今年は海外からの登壇があるのも新しいですね。

[運用苦労話]「Cloud Operator Days Tokyo」ならではの体験談が並んでいます。今年は大きな失敗談というより、1つのプロジェクトの中で失敗あり、うまく行った施策あり、と成功談/失敗談を織り交ぜたセッションが多く、よりリアルな現場を感じます。

[運用自動化]も人気の高いトラックです。自動化そのものより、⁠何のための自動化か」を見据えたセッションが目立ちます。自動化のせいでかえって不便になっては本末転倒ですから。

ほかのトラックのセッションがより実践的になっていく中、⁠社内基盤]トラックは、さらに便利なツール、システム活用法やアイデアを示したセッションが目立ちます。日々の運用の中に創造性を見出す努力を惜しんではいけませんね。

[Cloud CoE]は、この連載の#01でも触れましたが、メインテーマである「変革への挑戦」にもつながる今年の「Cloud Operator Days Tokyo」のコンセプトを象徴するトラックです。3セッションですが、いずれも日本では先進的な取り組みとなる興味深い事例が並んでいます。

意外に、というと失礼ですが、今年新設された[サービス・アプリケーション運用]のトラックには、日々の運用管理に新たな視点をくれるヒントが含まれたセッションが多いと感じました。皆さんツールの使いどころを外しません。

同じく新設の[製品・技術トレンド]トラックは、運用管理に関係する最新の技術の解説を入れつつ、実例も紹介した欲張りなセッションが並びます。

いずれのトラック/セッションも、参加したい方はいつでも無料で登録、動画を視聴可能です。各セッションは1本20分程度。集中して聞くにはちょうどいいサイズではないでしょうか。

編集部のおすすめセッション 2022版

では昨年のレポートに続いて今年も、気になったタイトルからおすすめのセッションをいくつがご紹介しましょう。とはいえ、今年はタイトルに工夫をこらしたセッションが多く、セレクトが格段に難しくなりました。いろいろと対策されていますね(苦笑⁠⁠。

[運用苦労話]神エクセルもない状態からの脱却、読める書けるぞTerraform

島津 直道(DENSO Corporation)

「神エクセル」…いきなりのパワーワードがタイトルに入った気になるセッションです。AWSを使ったサービス環境構築を最初いちいち手動でやっていた時代から始まり、Terraformの利用が便利そうと気づき、既存のTerraformコードのコピペ利用 → 少し書き換えて運用 → 利用環境に応じたコードの最適化 → Terraform利用のノウハウの共有化…とDevOpsのお手本のような進化のストーリーが展開され、聞いていて気持ちいいです。中でも「秘伝のタレ化」の話には共感を覚えました。何ごとも少し考えてから受け入れないと、結局回り道になってしまいますね。⁠秘伝のタレ化⁠⁠、私の好きな言葉です。(笑

あと、タイトルにあるExcelがなかなか出てきません。ただのキャッチかと思っていたら……結末はセッションを視聴してご確認ください。

[運用自動化]文書作成ソフトからの脱却 ~Markdownによるアラート対応手順書CI/CD~

照井 渓(株式会社ハートビーツ)

文章作成ソフト、つまりWordですね。Excelの次はWordをなんとかしようというお話。

エンジニアが日々行う作業の中で、最も労力のわりに楽しくない作業の1つといえば、ドキュメント作成ではないでしょうか? もちろん文書作成が得意なエンジニアの方も大勢いらっしゃいますが、とくに顧客に提出する仕様書は、見栄えと読みやすさを兼ね備える必要があり、ドキュメント作成にまつわる苦労話は枚挙にいとまがありません。

こうした状況を社内のタスクフォースで解決した事例の紹介です。ある程度定型の文書ではありますが、いくつかのパラメータを指定することで、顧客向けの監視仕様書をほぼ自動で作成できるしくみを構築したそうです。ドキュメント作成自動化のキモとなる「HEARTBEATS Flavorred Markdown extention(hbfm⁠⁠」というMkDocsのエクステンションは、GitHubで公開されています。こうしたオープンな姿勢もすばらしい。

ホントにそのとおりですね
ホントにそのとおりですね

[運用苦労話]転生したら大規模サービス運用担当者になっていた件~AzureでSaaS提供に奮闘する男の物語~

本田 昂大(株式会社フィックスポイント)

「転生したら~になっていた件⁠⁠、このタイトルには引きつけられますね。期待通り、いきなり「転生したら~」にからめた小芝居が始まります。さらに自己紹介と、その途中でまたひと芝居?といった流れで進みます。

聞く方が十分すぎるほどほぐれてから始まった本題では、いたってまじめなお話が展開されます。Azureを使った運用自動化サービスをゼロからはじめたところ、順調に規模が拡大します。しかし、大規模化につれて運用側の人員も増やして…というわけにはいかず、しかもミッションクリティカルなサービスを続けなければいけないという難題を、いかにして解決してきたかが詳しく語られます。

最後に重要なキーワードとして、#01で紹介したプレイベントでも話題に上った「SRE(Site Reliability Engineering⁠⁠」の導入を現場で実践するためのポイントが、わかりやすくまとめられています。

ちなみにこのセッション、長いです。ほかのセッションがだいたい20分前後のところ、40分もあります。前説だけで8分くらい経っていました。飽きることはないのですが、視聴は少し時間に余裕のあるときにおすすめです。

[サービス・アプリケーション運用]開発者と運用者の壁をぶち壊せ!InnerLoopとOuterLoopとは?

星野 真知(VMware)

「壁をぶち壊せ」とは勇ましいメッセージです。コンテナを使用したサービスでは、機能要件(=アプリ側)と非機能用件(=インフラ側)の切り分けのため、コンテナを使ったシステムを採用する場合も多いですが、それだけでは実はクロスオーバー領域は解消されないというお話。コンテナの中にも含まれるOS的部分に不具合が生じた場合、アプリ開発者かインフラ担当者(つまり運用側ですね)どちらが担当するのか、という問題を解決するため、VMwareが提唱しているのが「InnerLoopとOuterLoop」という考え方です。

プレイベントでも今後のトレンドとして話題になった、運用担当者が開発者により近いところまで担当すべきという考え方と似た方法論ですが、InnerLoopとOuterLoopでは、現場で実践しやすい具体的な形にまで踏み込んでいるのが大きな特徴です。このセッションでは、さまざまな要素からなるInnerLoop/OuterLoopのエッセンス部分をわかりやすく紹介しています。

[サービス・アプリケーション運用]そのシステム、ちゃんと理解できてます? - Jupyter Notebookを用いた運用のススメ

谷沢 智史(株式会社ボイスリサーチ)

Jupyter Notebookは一般にはPythonなどのプログラムをブラウザベースで実行するのに使われることが多いツールですが、これをインフラ運用管理に使ってみようというセッション。

スライド主体のセッションが多い中、このセッションはほとんどデモ動画で構成されています。そのデモも、環境構築のところからすべて見せているという徹底ぶり。親切です。Jupyter Notebookからターミナルアプリを起動してコマンドラインを使ってリモートで仮想マシンを操作できるのを初めて知りました。もちろんシェルコマンドも実行できます。

Jupyter NotebookはMarkdownでコメントを入れながらコマンド実行ができるので、記録したNotebookを共有することでシステムへの理解につながります。共有するためのしくみについても説明やデモがあります。実践的なセッションです。

Jupyter Notebookからターミナルを起動
Jupyter Notebookからターミナルを起動

今回ご紹介したセッションは、⁠運用苦労話]が2セッション、⁠運用自動化]が1セッション、そして[サービス・アプリケーション運用]が2セッションでした。⁠サービス・アプリケーション運用]に代表されるように、昨年に比べると、より具体的、実践的なノウハウ紹介が増えているように思えます。

7/27 クロージングイベントの詳細も明らかに

オンデマンドセッションの配信が終了する7月27日(水)10:00~17:20にかけて、クロージングイベントがオンライン/リアルのハイブリッド形式で開催されます。オンデマンドセッションに登録された方は、クロージングイベントに現地参加可能です。詳しくは開催概要をご覧ください

当日最初のキーノートセッションには、デジタル庁 Chief Architect/東京大学 教授 江崎 浩 氏による講演、そしてOpenInfra FoundationのExecutive Directorを務めるJonathan Bryce氏とおなじみOpenInfra Foundation COOのMark Collier氏による対談も予定されています。

このほか、オンデマンドセッションでもフィーチャーされていた「Cloud CoE」をテーマにしたパネルディスカッションや、イベントのハイライトとなる ⁠輝け!クラウドオペレーターアワード2022」授賞式など、盛りだくさんのセッションが予定されています。

セッションや参加者の詳細は、クロージングイベントのページをご覧ください。

Cloud Operator Days Tokyo 2022 クロージングイベント
URL:https://cloudopsdays.com/0727closing/
Cloud Operator Days Tokyo 2022 運用者に光を! ~変革への挑戦~
URL:https://cloudopsdays.com/

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