前回 に引き続きゴールデンウィーク特別企画として、Ubuntu Japanese Teamのメンバーが実際にどのようにUbuntuを使っているのかを紹介します。
後編は水野が担当します。難しい話題ではありませんので、気楽に読んで頂ければと思います。
筆者とUbuntu
筆者がUbuntuに出会ったのは6.06の頃になります。しかし筆者はいくや氏とは違い、昨年まではUbuntuの一利用者にしかすぎませんでした。
以前より筆者は「ソフトウェアは(できれば)フリーであって欲しい」と考えています。ですが現在、フリーなソフトウェアだけでは不便を感じてしまうことがあるのも事実です。しかし"フリーなソフトだけでもなんとかなるんじゃないか?"という手応えをUbuntuは感じさせてくれました[1] 。そんなUbuntuをもっと広めたい、Ubuntuのために何か貢献したい、と考えてUbuntu Japanese Teamへ参加したのが昨年夏のことになります[2] 。
Ubuntuの利用
筆者の自宅では家族も含め、全員がUbuntuユーザです。これは自宅ネットワーク管理者である筆者が「Ubuntuならサポートするよ」と言った[3] 結果なのですが、Windows以外を触ったことがない家族も今のところなんとかUbuntuで生活できているようで、トラブルはほとんどありません。
デスクトップとして注目されているUbuntuですが、LTSであるHardyを自宅サーバとしても使用しています。自宅内のインフラを提供するためのDHCPサーバやDNSサーバはもちろんのこと、本連載でも紹介したPXEブートによるインストールサーバとしてもUbuntuは活躍中です。また外部から自宅にアクセスするためにSSHサーバにもなっています。
その他、安価に購入できるML115G5を利用した仮想マシンホストがあります。仮想マシンを提供する手段は色々ありますが、UbuntuではKVMとvirt-managerを使用するのが簡単です。もちろんこれらのパッケージはSynapticから導入することができます。
そして仮想マシンを利用して、現在サポートされているバージョンのUbuntuを全て動作させています。これによって不具合を見つけた場合に旧バージョンでの動作を確認したり、パッケージをバックポートしたりといった作業が随分楽になりました。
またモバイルマシンでもUbuntuを使用しています。筆者はEeePC 900AやDell Inspiron mini 9、HP 2133などNetbookを数台所持していますが、すべてUbuntuで動作しています。UbuntuはNetbookのような比較的非力なマシンでも動作してくれますし、9.04の高速起動にはとても助けられています。
ソフトウェア
筆者はソフトウェアに関してはかなり保守的かもしれません。新しいアプリケーションをインストールすることはあまりなく、ほとんどの時間を端末とEmacsの中で生活しています。Web閲覧、メール、チャット、Twitter、などはほとんどEmacsで行っており、もちろん本連載の原稿もEmacsで執筆しています。端末はmlterm、シェルはzshを使用しています。日本語入力にはATOKを使うこともありますが、基本的にはAnthyを使用しています。
Hardy以降のUbuntuにはemacs-snapshotというパッケージがあり、このパッケージを使用することで開発版であるEmacs23を導入することが出来ます。Emacs23はフォントのアンチエイリアスが可能になっており、Japanese Teamの提供しているIPAフォントなどと組み合わせることで、美しい日本語環境を構築することができます。
Ubuntuの魅力
Ubuntuの魅力は、なんといってもDebian由来の豊富なパッケージです。必要なソフトを端末からapt-getするだけで全て導入できるのは偉大です。この仕組みに慣れてしまったため、Webからソフトをダウンロードしたり、アプリケーションのCD-ROMを出し入れしたりという作業には戻れなくなってしまいました。前述の通り筆者はUbuntuのインストールもネットワークから行うため、自宅のマシンはデスクトップであってもCD/DVDドライブは搭載されていません。
また本連載の58回 で言及しましたが、筆者は$HOMEに置く設定ファイルをサーバ上でバージョン管理しています。そのため新しいマシンにUbuntuをインストールしなおしても、以下の2行ですぐに同じ環境を作りなおすことができます。
$ sudo apt-get install (必要なソフトウェア)
$ svn co (サーバのリポジトリ) (チェックアウト先)
環境を復元するのにかかる時間は再インストールの手間を含めても一時間未満ですので、筆者は環境全体のバックアップというものを作ったことがありません。
筆者は言ってみれば趣味でUbuntuの開発に参加しています。ですがUbuntuは決しておもちゃではありません。道楽として楽しみながら実用的でもある、そんなバランスのとれたUbuntuはこのうえなく魅力的だと思います。そしてそんなUbuntuに、片隅とはいえ自分の名前がクレジットされるということを、筆者はとても嬉しく思っています。