先週に引き続き先月から今月にかけて開催された、Ubuntuにおけるアプリ開発コンテスト「Ubuntu App Showdown」のノミネート作品の中で、特におもしろそうなアプリを紹介します。
デスクトップの設定に関するアプリ
Cuttlefish
Cuttlefishは特定のイベントに対して、指定した操作を自動的に行うアプリです。
例えば、指定したSSIDの無線LANに接続した時はプロキシをオンにする、ノートPCのACアダプターを接続したら特定のアプリケーションを起動するというように、何かしらかの「イベント(Stimulus)」に対して指定した「アクション(Action)」を起こさせることができます。
またイベントとアクションの対応は「Reflex」として複数保存することができ、状況に応じて個々のReflexを有効・無効にして使い分けることも可能です。
指定できるイベントは次のとおりです。
- アプリケーションが起動したとき、終了したとき
- 特定のBluetoothデバイスを接続・切断したとき
- Bluetoothデバイスがオン・オフされたとき
- ACアダプターを接続・切断したとき
- 指定したUSBデバイスを接続・切断したとき
- 指定したSSIDの無線LANに接続したとき、ネットワークから切断されたとき
- 画面をロック・アンロックしたとき
また、アクションとして次の項目を指定できます。
- アプリケーションの起動や終了
- サウンドボリュームの設定
- Bluetoothのオンオフ
- 標準のプリンターの変更
- 壁紙の変更
- 待機
- 無線LANのオンオフ
- プロキシ設定の変更
- Pidginのステータス変更
- 電源状態をハイバネートやサスペンド、再起動、シャットダウンに変更
- 画面のロック・アンロック
- Reflexの有効化・無効化
ノートPCをいろいろな環境に持ち運ぶ際、環境に応じて設定を変えたい場合、とても便利なツールとなるでしょう。
MenuLibre
MenuLibreはdesktopファイルの編集ツールです。desktopファイルとは、デスクトップ環境においてアプリケーションを起動するメニューに表示する項目や、実行するコマンド、アイコンなどを指定するファイルであり、アプリケーションごとに/usr/share/applicationsの下に保存されます。
Unity環境であればDashの検索対象となりますし、XubuntuやLubuntuであればアプリケーションメニューに表示される項目そのものとなります。
MenuLibreはシステムにインストールされたすべてのdesktopファイルを編集し、ユーザー単位のdesktopファイルとしてホームフォルダーの.local/share/applicationsの下に保存できます。
例えば次のような項目を設定できます。
- メニューのアイコン
- メニューのタイトル
- メニュー選択時に実行するコマンド
- メニューを表示するカテゴリーの変更
- 起動時にクイックリストに表示する項目の追加や削除
- メニューに表示するかどうか
desktopファイルはUnity以外のデスクトップ環境でも使用されているので、アプリケーションメニューを細かくカスタマイズしたい場合は便利に使えるでしょう。
Slidewall
Slidewallはシンプルな壁紙チェンジャーツールです。システム設定の「外観」でもインストール済みの壁紙であれば一定時間ごとに切り替えることができますが、このツールを使えば好きな壁紙を好みのタイミングで切り替えられます。
さらにライブ壁紙モードも用意されており、一定時間ごとに地球の昼夜の様子や壁紙サイトから自動で壁紙をダウンロードしてランダムに表示するさせることも可能です。
Variety
VarietyもまたSlidewallと同じ壁紙チェンジャーツールです。
壁紙のダウンロードURLを自分で指定できること、壁紙に対してImageMagickを使ったエフェクトを追加できるといった点がSlidewallと異なります。
これによりFlickrの特定のユーザーの写真をランダムにダウンロードして壁紙として使用したり、壁紙はすべてグレイスケールで表示させることが可能になっています。
ファイルやデータの管理をするアプリ
ShowMyFaves
ShowMyFavesはローカルにインストールされたすべてのブラウザのブックマークを一元的に管理できるアプリです。
ブックマークページのサムネイル表示や、Facebookを使った共有、Ubuntu Oneへのバックアップが行えます。
初回起動時はサムネイルをロードするため、起動するまでに時間がかかることに注意してください。
Unity bookmarks
Unity bookmarksはブックマークのクイックアクセスツールです。
Unity bookmarksによく使うブックマークを登録し、常時起動するようにしておけば、Launcherのアイコンを右クリックしたときに現れるクイックリストや、インジケーターからそれらのブックマークに素早くアクセスできます。
Lockbox
LockboxはGPGで暗号化されたディスクイメージを作成するツールです。
このディスクイメージにファイルを保存しておけば、秘密鍵がある環境でしかディスクイメージのファイルにアクセスできないので、例えばUSBメモリー上に作成したディスクイメージを置いておけば、暗号化機能付きのUSBメモリー代わりに使えます。
イメージの作成にはGPGの鍵が必要になります。まだ鍵を作っていない場合は、「Setup Encryption」から「Add Key」を押して作っておくと良いでしょう。さらに「Setup Disk」で暗号化したいディスクイメージを作成します。
ディスクのロック解除は、インジケーターにある鍵マークのアイコンから「Unlock」を選ぶか、メインウィンドウの「Virtual Disk State」をオンにするだけです。すると自動的にマウントされて、ファイルブラウザーなどからアクセスできるようになります。アンマウントすると、再びロックされます。
Switz
Switzは「ちょっとした便利ツール」を集めたアプリです。例えば、時計、システムモニター、メモ帳、TODOリスト、天気予報などを一つのウィンドウにまとめて表示してくれます。
PPA Software Center
PPA Software CenterはLaunchpad上にあるPPAを検索できるアプリです。Launchpadにある膨大なPPAの中から指定した名前にマッチするパッケージを検索してくれます。
さらに表示されたパッケージをダブルクリックすると詳細内容が表示され、インストールに必要なadd-apt-repositoryなどのコマンドをクリップボードにコピーできます。
検索に時間がかかるのが難点ですが、パッケージ名は覚えているけど誰のPPAかを忘れた場合に便利でしょう。
ゲームや学習ツール
Picsaw
Picsawは好きな画像をジグソーパズル化できるゲームです。
画像はピクチャフォルダーの中から選択でき、さらに難易度を12、28、60ピースから選択できます。最後にShuffleボタンを押せばゲーム開始です。
ピースが少ないこと、背景に縮小された元画像が表示されることから、それほど難易度は高くありません。好きな画像を選択できるので、真っ白な画像を用意してチャンレンジすれば、あっという間に時計の針が進んでいくことでしょう。
PYEnglish
PYEnglishはランダムに表示される単語を使って英作文を作る語学アプリです。主語、述語、時制、疑問形や否定形、目的語が指定されますので、それにあわせた文を作成してください。
正しい文章を入力している間は、入力ボックスの右側に緑のチェックマークが表示されます。最後まで正しく入力できたら、ウィンドウの下部に「Well done」と表示されます。「3 Lives」ボタンを押すと、3回まで正解を教えてもらえます。
Python Trainer
Python Trainerは次々と出題される問題にPythonスクリプトで回答していく、Pythonの学習ツールです。
テキスト領域にPythonコードを入力し、Checkボタンを押せば、コードが正しいかどうかを計算します。正解すれば、Nextボタンで次の問題に移動します。
ちなみにインデントは半角空白4つしか受け入れないようです。あと現時点では、一度終了すると最初からやり直しになるので注意してください。
まとめ
2週に渡るアプリの紹介、いかがでしたでしょうか。
今すぐにでも使えるほど完成度が高いもの、面白そうだけどもう少しつくりこみが必要なものなど、さまざまな応募作品が存在しますが、いずれも3週間という応募期間で作られたものばかりです。
つまりLinuxにおけるデスクトップアプリの開発は、それほど難しいものではありません。ぜひ日曜大工のような感覚で、アプリ作りに挑戦していただけたらと思います。
今回紹介したアプリはPPAから導入できますが、今後すべてリポジトリを追加することなくソフトウェアセンターから導入できるように、Application Review Boardと開発者が協力してソフトウェアやパッケージの品質向上を行っています。その成果が公開されたら、Ubuntu Weekly Topicsで案内できればと思いますので、期待してお待ちください。
ちなみに、例えばPYEnglishなど一部のアプリはすでにLaunchpadでも翻訳できるようになっていますので、翻訳に興味のある方は、Launchpadのプロジェクトページも確認してみると良いでしょう。