Ubuntu Weekly Recipe

第488回Tinker Boardファーストインプレッション

今回はASUSが発売しているシングルボードコンピューター、Tinker BoardでUbuntuを使用する方法を紹介します。

Tinker Boardとは

Tinker BoardはASUSが発売しているシングルボードコンピューターです。誤解を恐れずにいえば、Raspberry Piのようなものです。

Tinker BoardがRaspberry Piと比較して優れているのは、メモリーが2GB搭載されていることです。これだけあればデスクトップ用途で使用してもメモリーを心配する必要がないのではないかと思います。価格も正規代理店で税抜7,980円(筆者の購入時点)であり、割安感はないものの高すぎるということもないように思いました。

Tinker Board用のOSは、Tinker OS AndroidとDebianがあり、Ubuntuはありません。そこでarmbianのイメージを使用することにします。これはUbuntu 16.04 LTSベースです。

Raspberry PiとはSoCが異なるため、Raspberry Pi用のイメージは使用できません。

Tinker Boardと一緒に購入したもの

Tinker BoardはRaspberry Pi 3よりも消費電力が多く、給電には注意が必要です。汎用品のAC-USB変換アダプターしかない場合は、専用品を買っておくのが無難でしょう。筆者もこれを使用しています。ACアダプターはもちろんですが、USBケーブルに電源ボタンがあり、これがとても便利です。

Raspberry Pi 3と一緒に買ったACアダプターと、Nexus 7(2013年モデル)のACアダプターでも起動は確認しましたが、後者は安定的に使用できるかどうかは未知数です。

基盤むき出しのまま使うのも何なので、ケースも購入しています。基本的にはTinker BoardはRaspberry Piシリーズと同じ基盤の配置であるため、ケースもそのまま流用できる場合もあります。しかしRaspberry Piシリーズにはないヒートシンクがあり、これのせいで使えないケースもあります。そのため、使えるとわかっているケースを買っておくのもひとつの案です。

なお、今回は購入していませんが、microSDカードも必要です。読み書きがそれなりに高速で、8GB以上のものがあればいいでしょう。今回は16GBのものを使用しました。

armbianイメージのコピー

armbianのTinker Board用イメージは新旧2つのカーネルで提供されていますが、今回はlegacyのほうを使用します。Tinker BoardのSoCはずいぶん前にリリースされたものであり、あまり大きな違いはないだろうという判断です。

armbianではイメージのコピーにEtcherを推奨しているのですが、これが実に優れもののツールです。armbianでなくても安全にRaspberry PiやTinker Board用のイメージのコピーをしたい場合にはEtcherを使用するといいでしょう。ddコマンドでifとofオプションを間違えたり、転送先を間違えたりなどで大惨事になることを避けることができます。

Ubuntu用にはAppImageで実行ファイルが提供されていますが、リポジトリを追加することもできます。実はDebパッケージでもリリースされており、とりあえず使いたいのであればリリースページからamd64.debないしi386.debのファイル名を持つパッケージをダウンロードし、インストールするといいでしょう。

armbianのイメージは7zipで圧縮されています。展開にはp7zip-fullパッケージが必要になるため、インストールしていない場合はインストールし、Etcherの起動前に展開しておきましょう。

Etcherの使い方は非常にシンプルで、転送するイメージと転送先のmicroSDカードを指定し、パスワードを入力するだけです図1⁠。

図1 イメージ転送ツール、Etcher
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初回起動時の設定

microSDカードへの転送が終わったら、Tinker Boardに挿して起動します。起動するとコンソールのログイン画面になるので、ユーザー名"root"、パスワード"1234"(引用符は不要)を入力してログインします。するとrootのパスワード変更ができるようになります。現在のパスワードを入力後、任意のパスワードを2回入力します。

続いてユーザーを作成します。任意のユーザー名とパスワードを2回入力するとデスクトップ環境(Xfce)が起動します。

日本語設定

このままでは日本語では使えないため、設定を行います。第450回を参考にしつつ、改めて方法を紹介します。

作業はSSH経由で行うか、armbianから行うかは任意ですが、今回は前者とします。armbianにはsshサーバーがインストールされているため、早速SSHで接続します。avahi-daemonで名前解決ができる場合は、次のコマンドで接続できます。

$ ssh (ユーザー名@)tinkerboard.local

まずはリポジトリの設定を日本のミラーにします。/etc/apt/sources.listを次のように書き換えてください。

deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ xenial main restricted universe multiverse
deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ xenial main restricted universe multiverse
    
deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ xenial-security main restricted universe multiverse
deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ xenial-security main restricted universe multiverse
    
deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ xenial-updates restricted main multiverse universe
deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ xenial-updates restricted main multiverse universe
    
deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ xenial-backports restricted main multiverse universe
deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ xenial-backports restricted main multiverse universe

書き換えが終わったら保存します。

リポジトリを更新し、パッケージをアップデートします。次のコマンドを実行してください。

$ sudo apt update
$ sudo apt upgrade

最初のコマンドでエラーが出た場合は、書き換え時のコピー&ペーストのミスがある可能性があるので、確認してください。

続いてロケールやタイムゾーンの設定です。次のコマンドを実行してください。

$ sudo locale-gen ja_JP.UTF-8
$ echo "LANG=ja_JP.UTF-8" | sudo tee /etc/default/locale
$ sudo dpkg-reconfigure -f noninteractive locales
$ echo "Asia/Tokyo" | sudo tee /etc/timezone
$ sudo dpkg-reconfigure -f noninteractive tzdata

日本語キーボードを使用している場合は、/etc/default/keyboardのXKBLAYOUT="us"XKBLAYOUT="jp"に変更し、次のコマンドを実行してください。

$ sudo dpkg-reconfigure -f noninteractive keyboard-configuration

ここからがarmbian独自のところで、不足している日本語関連のパッケージをインストールします。

$ sudo apt install fonts-takao fcitx fcitx-frontend-gtk2 fcitx-frontend-gtk3 fcitx-frontend-qt4 fcitx-frontend-qt5 fcitx-mozc fcitx-config-gtk fcitx-ui-classic  chromium-browser-l10n language-pack-gnome-ja* language-pack-ja*

ここまで完了したら再起動します。再起動後自動的にログインし、日本語メニューになっているはずです図2⁠。

図2 日本語化したarmbian
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armbianの独自な点

最後に、armbianの独自な点を見てみましょう。パッケージ化されていないファイルもあるので、すべて洗い出すのは困難ですが、時間の許す限り調査してみました。

armbianは独自のリポジトリを持っており、そこからインストールされているパッケージは次のとおりです。

armbian-firmware
armbian-tools-xenial
hostapd
libvdpau1
linux-dtb-rockchip
linux-headers-rockchip
linux-image-rockchip
linux-u-boot-tinkerboard-default
linux-xenial-root-tinkerboard
sunxi-tools

hostapdとlibvdpau1とsunxi-toolsはUbuntuのリポジトリにもあります。その他はパッケージ名を見ればどんな役割なのかの想像がつきます。

なお、Raspbianにはraspi-configという設定ツールがありますが、armbianにもarmbian-configという設定ツールがあります。今回はarmbian-configを使いませんでしたが、ざっと確認したところ、最低限設定しておかなくてはいけないようなものはない、あるいはすでにコマンドで実行していました。どんなことができるのかは一度見ておくといいでしょう図3⁠。

図3 armbian-config
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今後の目標

今後はさらに素に近いUbuntuを構築してみたいですが、時期は未定です。

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