今回はUbuntu 18.04 LTSの32ビット(i386)サポート状況を振り返りつつ、ネットブックの名機、ASUS Eee PC 901-16GにUbuntu MATEをインストールします。
Ubuntuの32ビットCPU包囲網
Ubuntuは17.10から32ビット(i386)版インストーラーの配布を取りやめました。もちろん18.04 LTSでも同様です。今どき64ビット(AMD64)に対応しないCPUでUbuntuが満足に動くのかと言われれば難しいことは明白なので、リリースエンジニアリングの負荷軽減としては正しい方策のように思います。
ただしこれはフレーバーには及んでおらず、リリースされたすべてのフレーバーで32ビット版のインストーラーが用意されています。サポート期間は3年間なので、2021年までは使えるということです。
そもそもAMD64に対応したCPUが初めてリリースされたのが2003年、インテルのCPUのAMD64対応版(Pentium4)が初めてリリースされたのが2004年と[1]、15年ほど前のことです。現在世の中で可動しているのはAMD64をサポートしたCPUがほとんどであるというのは動かしようのない事実でしょう。
一方、AMD64に対応しないCPUも販売され続けました。ネットブックは大ブームとなりましたが、ほとんどがAMD64サポートをしないIntel Atomが採用されていましたし、その後もノート用のCPUで最後までAMD64に対応しなかったものが販売されました。いずれにせよ10年ほどは経過していることになります。
10年前のPCを現役で使い続けるのはなかなか厳しく、PCのトレンドやパーツ価格の上昇もあり一時期よりはPCの値段も上がってしまいましたが、それでも買い換えると格段の快適さを得られることでしょう。
Ubuntuの話に戻ると、現在開発中の18.10では各フレーバーでも32ビット版インストーラーの配布が中止されることになりました。具体的にはKubuntu、Ubuntu Budgie、Ubuntu MATE、Ubuntu Kylin、Ubuntu Studioが対象です。XubuntuやLubuntuは今のところリリースされる予定です。ただし先のことはわかりません。
インストールするネットブックの紹介
そんなAMD64にも対応しないCPUを搭載した、発売当時から非力であったネットブックに最新のUbuntu MATE 18.04 LTSをインストールして快適に動作するか検証するのが今回の記事の主旨です。
使用するのは第59回と第324回で使用したASUS Eee PC 901-16Gです。今年で発売から10周年です。筆者は発売後ただちに入手したわけではないので購入から10年経ったわけではありませんが、保存状態がよく、故障はありません。バッテリーも健在です。
なぜLubuntuやXubuntuではないのかというと、Lubuntuが必要なほど低いスペックではないのと、Xubuntuは第324回で紹介済みで、あまり代わり映えしないからと、ほかにも理由がありますが後述します。
10年前のネットブックはどんなスペックだったのか、あらためて確認していきましょう。次はlshwコマンドの結果です。
CPUはIntel Atom N270の1.6GHzで論理2コア、この頃はまだチップセットが2つに分かれており[2]、グラフィックはノースブリッジ(Mobile 945GSE Express)に内蔵されています。詳しくはIntelによる解説をご覧ください。
N270はPAEに対応しており、普通にインストールできるのはポイントが高いです。
メモリは1GB増設して2GBになっています。これが今回概ね快適に利用できている理由の一つと思われます。購入時点の1GBでははっきりいって少ないです。
型番の「16G」はSSDの容量ですが、今回使用したのはバッファローが販売していた32GB SSDに交換しています。多いのに越したことはないですが、16GBでも問題なく使用できるでしょう。インストールするアプリケーションを削りたい場合は「最小インストール」も選択できます。
ディスプレイサイズは8.9インチで、解像度は1024*600ドットです。今から考えると信じがたいくらい解像度が低いですので、これをどうするのかというのも一つのポイントです。
この頃はまだ有線LANに重きがあったからなのかどうかはわかりませんが、Atheros(現Qualcomm Atheros)社製ギガビットイーサに対応したチップを積んでいるのが興味深いです。無線LANはRalink(現MediaTek)RT2790で、どちらも社名が変わっているのが諸行無常を感じます。
Ubuntu MATE 18.04 LTSのインストールと使用感
では実際にUbuntu MATE 18.04 LTSをインストールしていきましょう。インストーラーはcdimage.ubuntu.comあるいはそのミラーから取得します。「ブータブルUSBの作成」などでインストーラーをUSBメモリにコピーします。
BIOSでUSBメモリから起動するように変更したあと、ブートし、インストーラーを起動します。
インストールを進めていきますが、ここで解像度の壁にぶつかります(図1)。「インストール」ボタンが押せないので下のパネルを右クリックし、「プロパティ」を開きます。ここに「自動的に隠す」があるので、これにチェックを入れると「インストール」ボタンが表示されます(図2)。
これでもまだはみ出してしまう場合は、Altキーを押しながらウィンドウを移動させましょう。
インストール完了後、再起動してログインします。画面右上の歯車アイコンをクリックすると「このコンピューターについて」があるので、ここをクリックしたのが図3です。「利用可能なディスク容量」が少なく感じますが、これはスワップファイルがそれなりのファイルサイズになっているからです。
第496回でも紹介しましたが、Ubuntu MATEには「ネットブック」というパネルレイアウトがあるので、これを設定してみます。「MATE Tweak」を起動し、「パネル」タブから「ネットブック」を選択してください(図4)。
CPUの負荷が高い状態がずっと続くため、「ウィンドウ」タブの「ウィンドウマネージャー」を「Compiz」にしました(図5)。これで負荷を下げられるようになりました。
実際にこの状態で本原稿を執筆してみましたが、特に支障はありませんでした(図6)。少し遅いくらいでおおむね快適に動作しています。ただしウィンドウマネージャーを変更してもファンはずっと回り続け、Eee PC 901-16Gが全体的に暖かかったのが印象的でした。10年前のネットブックでUbuntu MATE 18.04 LTSを使用するのは少々荷が重いということでしょう。