2月14日にリリースされたUbuntu 18.04.2 LTSからは、Raspberry Pi 3シリーズへのインストールが簡単になりました。今回はハイエンドモデルであるRaspberry Pi 3 Model B+ にインストールしてみます。
Raspberry Pi 3とUbuntu
Raspberry Pi 3(以降RasPi3)シリーズに関しては、本連載では直近だと第450回 と第451回 で紹介していますが、その後2年以上も取り上げてきませんでした。これはUbuntuが公式にRasPi3に対応しておらず、動作させるのが大変だったからです。それでも動作情報は有用であることには違いないので、『 Software Design』誌の姉妹連載『Ubuntu Monthly Report 第103回 Raspberry Pi 3 Model B+でUbuntu 18.04 LTSを使う 』で取り上げましたが、何度も心が折れそうになるほど検証が大変でした。
そんな状況を見かねたからかどうかはわかりませんが、ポイントリリースであるUbuntu 18.04.2 LTSにあわせてRasPi3シリーズのサポートが一気に進み、非常に簡単に使えるようになりました。なお18.04.2 LTSでもカーネルのバージョンは4.15です。
そればかりか64bit版であるARM64に対応したインストールイメージもリリースされました。ただし今回は32bit版であるARMHFを使用します。本連載の内容はARM64でもARMHFでも同様のはずですが、動作確認は行っていません。実メモリが1GBしかないのにARM64はちょっとどうなのかなくらいの理由で、深く考えているわけではありません。
Ubuntu WikiのRaspberryPi の内容をベースに、『 Ubuntu Monthly Report 第103回』の内容をブラッシュアップしてお届けします。
今回検証するRasPi3はModel B+にしますが、Model Bでも同様のはずです。
用意するもの
用意するものは前述のとおりRasPi3 Model 3B+、microSDカード、USB-ACアダプター、有線LANに接続するためのケーブル、ホストであるUbuntu PC、USB接続のmicroSDリーダーライターなどです。USB-ACアダプターはいくつか所有していますが、専用の電圧が高いものが行方不明だったので、終売となったUSB-ACアダプターにもなるPanasonicのモバイルバッテリーを使用しましたが特に問題なく動作しました。
事前準備
ホストPCで前述のRaspberryPi のページからubuntu-18.04.2-preinstalled-server-armhf+raspi3.img.xzをダウンロードしてください。
ダウンロードしたアーカイブを右クリックして、「 ディスクイメージライター」で開いてください。もし選択できない場合は「別のアプリケーションから開く」で選択してください。
すると「ディスクイメージをリストア」が表示されるので(図1 ) 、転送先にmicroSDカードを選択して「リストアを開始」をクリックしてしばらく待っていると完了します。
図1 「 ディスクイメージをリストア」では「転送先」を間違わずに選択する
ホストPCで必要な作業は済んだので、microSDカードを取り外してRasPi3 Model B+に接続してブートしてください。
初期設定
無事にブートできると、Ubuntu Serverのようにユーザー名とパスワードを入力することになります。初期設定ではユーザー名とパスワードは共に"ubuntu"(引用符は不要)です。認証に成功するとパスワードの変更を求められますので、好きなパスワードを入力してください。
ログイン後DHCPで割り当てられたIPアドレスが表示されるため、これを参考にホストPCからリモートログインします。ホスト名でアクセスしたい場合は"avahi-daemon"パッケージをインストールし、ホストPCから次のコマンドを実行してください。
$ ssh ubuntu@ubuntu.local
ロケールとキーボードとリポジトリの設定
ロケールとキーボードの設定はリモートでやったほうが楽なため、そうします。ログイン後、次のコマンドを実行してください。
$ sudo locale-gen ja_JP.UTF-8
$ sudo dpkg-reconfigure -f noninteractive locales
$ echo "LANG=ja_JP.UTF-8" | sudo tee /etc/default/locale
$ sudo timedatectl set-timezone Asia/Tokyo
キーボードレイアウトの変更は、/etc/default/keyboardを開いて
XKBLAYOUT="us"
を
XKBLAYOUT="jp"
に書き換え、次のコマンドを実行してください。
$ sudo dpkg-reconfigure -f noninteractive keyboard-configuration
パッケージのダウンロードサーバーを国内ミラーに切り替え、ダウンロード時間を短縮します。/etc/apt/sources.listファイルのすべての行をコメントアウトし、次の行を追加したあと保存してください。
deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ bionic main restricted universe multiverse
#deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ bionic main restricted universe multiverse
deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ bionic-security main restricted universe multiverse
#deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ bionic-security main restricted universe multiverse
deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ bionic-updates restricted main multiverse universe
#deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ bionic-updates restricted main multiverse universe
deb http://jp.archive.ubuntu.com/ports/ bionic-backports restricted main multiverse universe
#deb-src http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ bionic-backports restricted main multiverse universe
完了したら忘れずに次のコマンドを実行してパッケージのアップデートを行ってください。
$ sudo apt update
$ sudo apt upgrade
一旦ここで再起動しましょう。
スワップファイルの作成
RasPiは3B+でもメモリが1GBしかないため、スワップファイルを作成しましょう。例としてルートパーティション(/)にswapfileという1GBのスワップファイルを作成します。ファイル名と置き場所はUbuntu 18.04 LTSをインストーラーからインストールした場合と同様です。次のコマンドを実行してください。
$ sudo fallocate -l 1g /swapfile
$ sudo chmod 600 /swapfile
$ sudo mkswap /swapfile
$ echo '/swapfile swap swap defaults 0 0' | sudo tee -a /etc/fstab
$ sudo swapon -a
デスクトップ環境のインストール
デスクトップ環境をインストールしたい場合は以下の操作を行ってください。使用できるデスクトップ環境はいろいろとありますが、今回はXfceとします。
まずはパッケージをインストールします。次のコマンドを実行してください
$ sudo apt install xubuntu-desktop
続けてネットワークのバックエンドをsystemd-networkdからNetwork Managerに切り替えます。/etc/netplan/50-cloud-init.yamlを
network:
version: 2
renderer: NetworkManager
の3行にし、次のコマンドを実行してください。
$ sudo netplan try
エラーメッセージが出ていない場合は適用し、再起動します。
デスクトップマネージャ(LightDM)が起動するので、ログインしてください。
日本語環境に必要な設定を行っていきます。左上のメニューの「設定」にある「Language Support」を起動してください。「 Install / Remove Languages」をクリックし、「 Japanese」にチェックを入れて閉じてください(図2 ) 。すると必要なパッケージがインストールされます。「 Language for menus and windows」に「日本語」が追加されたので、これをドラッグ&ドロップして上に持ってきます(図3 ) 。「 Apply System-Wide」をクリックしてパスワードを入力すると設定が反映されるので、一度ログアウトして再ログインしてください。これで日本語環境になりました。
図2 「 Japanese」にチェックを入れて「Apply」
図3 日本語を追加し、リストの一番上に持ってくる
使用するインプットメソッドはIBusでもFcitxでもいいですが、デフォルトは前者になっています。もし日本語が打てない場合はMozcが登録されていないことが考えられるので、IBusの設定を起動して「入力メソッド」タブを開き、「 追加」をクリックして「日本語-Mozc」を追加してください(図4 ) 。
図4 「 入力メソッド」タブでMozcを追加する
Mozcに切り替える場合は、Super(Windows)+Spaceキーを押してください。
IBusを使用する場合はステータスをわかりやすくするため、次のコマンドを実行するといいでしょう。
$ gsettings set org.freedesktop.ibus.panel xkb-icon-rgba '#ffffff'
コラム再掲:4月14日は技術書典6!
来週末の4月14日(日)に池袋のサンシャインシティで技術書の即売会である「技術書典6 」が開催されます。
本連載の執筆陣も参加している「team zpn」も「う30」で出展予定ですので、近隣の皆様はお誘い合わせの上、ぜひご来場ください。
技術書典6では、次のような本の頒布を予定しています。
うぶんちゅ! まがじん ざっぱ~ん♪ vol.9
うぶんちゅ! まがじん ざっぱ~ん♪ vol.8
Ubuntuを活用したあれやこれやを解説した合同誌
ざっクリわかるUbuntu 18.04 LTS Server
Ubuntu Serverの基本的な使い方がわかる本
頒布形態は物理冊子版とDRMのないPDF/EPUBセット版(電子書籍版)の2種類です。目次や頒布価格等の詳細はサークルページ をご確認ください。