今回は第576回で紹介したGPD MicroPCにUbuntu 20.04 LTSをインストールします。
第576回との違い
GPD MircoPCは現在でも入手でき、またUbuntu 20.04 LTSや19.10(サポート終了)のリリースによって第576回と比較して簡単にインストールできるようになっています。
今回は第576回を継承しつつ新たにGPD MicroPCを購入された方向けにUbuntu 20.04 LTSをインストールし、活用するための方法を紹介します。
SSDの入れ替え
必須ではありませんが、今回はSSDをTranscend TS256GMTS430Sに交換することにしました。Windows 10はインストールせず、Ubuntu 20.04 LTSのみをインストールします。
SSDを交換する際のGPD MicroPCの分解方法は検索すればいくらでも見つかるので省略しますが、ギターのピックを使用して本体に傷をつけずに分解する方法を見かけます。筆者はもちろんギターのピックは所有しておらず、またこれだけのために購入するのもどうかと思ったので食パンの袋の留め具(バッグ・クロージャーというらしいです)を3つほど使用しました。
これで無事に分解できたのですが、5本ある非常に小さなネジを一つどこかに飛ばしてしまいました。その後がんばって見つけましたが、飛んでもわかりやすいところで作業するようにしましょう。
Ubuntu 20.04 LTSのインストール
交換したSSDにUbuntu 20.04 LTSをインストールします。もちろん、元のSSDのままでWindows 10を消さずにインストールしても構いませんし、Ubuntuのみのシングルブートにしてもいいでしょう。
いずれにせよUbuntu 20.04 LTSのインストール自体には特殊なことはありません。USBメモリーのインストールイメージから起動して普通にインストールしてください(図1)。
各種設定
第576回の「GPD MicroPCにおけるUbuntuの使い方」を参考に、各種設定を行ってください。
テーマ(外観)は本体の色を考慮して「暗い」のほうが合っている気がします。変更する場合は「設定」-「外観」-「ウィンドウの色」を「暗い」にしてください。
CapsLockキーをCtrlキーにする場合は、方法がいくつかあります。一つは「Tweaks」パッケージをインストールした後に、「キーボードとマウス」-「追加のレイアウトオプション」-「Ctrl position」の「Caps LockをCtrlとして扱う」にチェックを入れて(図2)、再起動することです。
ハイバネートとハイブリッドスリープ
GPD MicroPCはその特性上常用するようなものではなく、必要なときにさっと使うようなものでしょう。昨今のノートPCはバッテリーの容量が増加していて普段使いだとスリープで問題ないでしょうが、GPD MicroPCの想定用途とは少しばかり乖離があります。この点においてハイバネートや最近よく使われているハイブリッドスリープを使用すれば解決しますが、やや複雑な設定が必要です。とはいえ、そこを乗り越えると格段に便利になるのでここで紹介します。
まずはスワップファイルを拡張します。昔はハイバネートを使用する場合はメモリと同容量のスワップパーティションが必要といわれていましたが、今はそのようなことはなく、そもそもスワップパーティションではなくスワップファイルになっています。しかしながら、メモリと同容量の8GBのスワップファイルであればそれほど巨大というわけでもないので素直に拡張することにします。
拡張と表現していますが、正確には作り直しになります。次のコマンドを実行してください。
ここでスワップファイルのUUIDが表示されるため、忘れずにメモしてください。
/etc/default/grubにスワップファイルのUUIDを追加します。
の行に追加します。例は次のとおりです。
前述のとおりスワップファイルを拡張した際にUUIDが表示されているので、これを貼り付けてください。
設定完了後次のコマンドを実行してください。
ここで一度再起動します。
root権限がなくてもハイバネートできるよう、/etc/polkit-1/localauthority/50-local.d/com.ubuntu.enable-hibernate.pklaというファイルを次の内容で保存してください。
さて、一度コマンドラインでハイバネートを実行してみます。
しかし再起動しても新たにログインしたのと同じ状態になってしまいます。したがってpm-utilsパッケージに含まれている/usr/sbin/pm-hibernateと/usr/sbin/pm-suspend-hybridを使用することにします。
次のコマンドを実行してください。
見てのとおり、pm-utilsパッケージをインストールし、systemdのハイバネートとハイブリッドスリープの設定を書き換えるためコピーしています。
/etc/systemd/system/systemd-hibernate.serviceは次のように編集します。コメントは省略しています。
/etc/systemd/system/systemd-hybrid-sleep.serviceは次のように編集します。コメントは省略しています。
一番下の行を書き換えているだけです。
次のコマンドのとおり、設定ファイルを再び読み込んだ後に、ハイバネートを実行できるようになります。
ハイブリッドスリープを実行する場合は、次のコマンドを実行してください。
コマンドラインではなくGNOME Shellからハイバネートやハイブリッドスリープを実行する場合はHibernate Status Buttonをインストールするといいでしょう(図3)。
Fcitxを使用する場合
IBusの代わりにFcitxを使用することもできます。この場合はMozcのキーバインドを変更する必要がないので設定がシンプルになります。問題点としてはGNOME Shell上で「仮想キーボード」「入力メソッド」「スキン」のサブメニューが表示されないことですが、これは最新版の4.2.9.8で修正されました。筆者のPPAに最新版をアップロードしてあるので、これを利用しましょう。
次のコマンドを実行してください。
再起動してログインするとFcitxが起動するようになります。
Fcitxの設定を表示し、「入力メソッド」タブが「キーボード-英語(US)」と「Mozc」になっていることを確認します(図4)。
「全体の設定」タブでは、オンオフキーが何になっているかを確認します。半角全角キーはないのでCtrl+Spaceキーがデフォルトですが、必要であれば変更します。また「入力メソッド起動のその他のキー」は「無効」にしておくといいでしょう(図5)。
IBusのアイコンは右上に表示されたままですが、「設定」の「地域と言語」にある「入力ソース」をどれか一つにすれば表示されなくなります(図6)。