Ubuntu Weekly Recipe

第637回GPD MicroPCにUbuntu 20.04 LTS版をインストールする

今回は第576回で紹介したGPD MicroPCにUbuntu 20.04 LTSをインストールします。

第576回との違い

GPD MircoPCは現在でも入手でき、またUbuntu 20.04 LTSや19.10(サポート終了)のリリースによって第576回と比較して簡単にインストールできるようになっています。

今回は第576回を継承しつつ新たにGPD MicroPCを購入された方向けにUbuntu 20.04 LTSをインストールし、活用するための方法を紹介します。

SSDの入れ替え

必須ではありませんが、今回はSSDをTranscend TS256GMTS430Sに交換することにしました。Windows 10はインストールせず、Ubuntu 20.04 LTSのみをインストールします。

SSDを交換する際のGPD MicroPCの分解方法は検索すればいくらでも見つかるので省略しますが、ギターのピックを使用して本体に傷をつけずに分解する方法を見かけます。筆者はもちろんギターのピックは所有しておらず、またこれだけのために購入するのもどうかと思ったので食パンの袋の留め具バッグ・クロージャーというらしいです)を3つほど使用しました。

これで無事に分解できたのですが、5本ある非常に小さなネジを一つどこかに飛ばしてしまいました。その後がんばって見つけましたが、飛んでもわかりやすいところで作業するようにしましょう。

Ubuntu 20.04 LTSのインストール

交換したSSDにUbuntu 20.04 LTSをインストールします。もちろん、元のSSDのままでWindows 10を消さずにインストールしても構いませんし、Ubuntuのみのシングルブートにしてもいいでしょう。

いずれにせよUbuntu 20.04 LTSのインストール自体には特殊なことはありません。USBメモリーのインストールイメージから起動して普通にインストールしてください図1⁠。

図1 筆者のGPD MicroPCの「このシステムについて⁠⁠。⁠ディスク容量」が256.1GBになっている
画像

各種設定

第576回「GPD MicroPCにおけるUbuntuの使い方」を参考に、各種設定を行ってください。

テーマ(外観)は本体の色を考慮して「暗い」のほうが合っている気がします。変更する場合は「設定⁠⁠-⁠外観⁠⁠-⁠ウィンドウの色」「暗い」にしてください。

CapsLockキーをCtrlキーにする場合は、方法がいくつかあります。一つは「Tweaks」パッケージをインストールした後に、⁠キーボードとマウス⁠⁠-⁠追加のレイアウトオプション⁠⁠-⁠Ctrl position」「Caps LockをCtrlとして扱う」にチェックを入れて図2⁠、再起動することです。

図2 CapsLockキーをCtrlキーにする方法
画像

ハイバネートとハイブリッドスリープ

GPD MicroPCはその特性上常用するようなものではなく、必要なときにさっと使うようなものでしょう。昨今のノートPCはバッテリーの容量が増加していて普段使いだとスリープで問題ないでしょうが、GPD MicroPCの想定用途とは少しばかり乖離があります。この点においてハイバネートや最近よく使われているハイブリッドスリープを使用すれば解決しますが、やや複雑な設定が必要です。とはいえ、そこを乗り越えると格段に便利になるのでここで紹介します。

まずはスワップファイルを拡張します。昔はハイバネートを使用する場合はメモリと同容量のスワップパーティションが必要といわれていましたが、今はそのようなことはなく、そもそもスワップパーティションではなくスワップファイルになっています。しかしながら、メモリと同容量の8GBのスワップファイルであればそれほど巨大というわけでもないので素直に拡張することにします。

拡張と表現していますが、正確には作り直しになります。次のコマンドを実行してください。

$ swapoff -a
$ sudo fallocate -l 8g /swapfile
$ sudo mkswap /swapfile

ここでスワップファイルのUUIDが表示されるため、忘れずにメモしてください。

/etc/default/grubにスワップファイルのUUIDを追加します。

GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash"

の行に追加します。例は次のとおりです。

GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash resume=UUID=6ce18d51-bc98-4218-966b-e216817f097e"

前述のとおりスワップファイルを拡張した際にUUIDが表示されているので、これを貼り付けてください。

設定完了後次のコマンドを実行してください。

$ sudo update-grub

ここで一度再起動します。

root権限がなくてもハイバネートできるよう、/etc/polkit-1/localauthority/50-local.d/com.ubuntu.enable-hibernate.pklaというファイルを次の内容で保存してください。

[Re-enable hibernate by default in upower]
Identity=unix-user:*
Action=org.freedesktop.upower.hibernate
ResultActive=yes

[Re-enable hibernate by default in logind]
Identity=unix-user:*
Action=org.freedesktop.login1.hibernate;org.freedesktop.login1.handle-hibernate-key;org.freedesktop.login1;org.freedesktop.login1.hibernate-
multiple-sessions;org.freedesktop.login1.hibernate-ignore-inhibit
ResultActive=yes

さて、一度コマンドラインでハイバネートを実行してみます。

$ systemctl hibernate

しかし再起動しても新たにログインしたのと同じ状態になってしまいます。したがってpm-utilsパッケージに含まれている/usr/sbin/pm-hibernateと/usr/sbin/pm-suspend-hybridを使用することにします。

次のコマンドを実行してください。

$ sudo apt install pm-utils
$ sudo cp /lib/systemd/system/systemd-hibernate.service /etc/systemd/system
$ sudo cp /lib/systemd/system/systemd-hybrid-sleep.service /etc/systemd/system

見てのとおり、pm-utilsパッケージをインストールし、systemdのハイバネートとハイブリッドスリープの設定を書き換えるためコピーしています。

/etc/systemd/system/systemd-hibernate.serviceは次のように編集します。コメントは省略しています。

[Unit]
Description=Hibernate
Documentation=man:systemd-suspend.service(8)
DefaultDependencies=no
Requires=sleep.target
After=sleep.target

[Service]
Type=oneshot
ExecStart=/usr/sbin/pm-hibernate

/etc/systemd/system/systemd-hybrid-sleep.serviceは次のように編集します。コメントは省略しています。

[Unit]
Description=Hybrid Suspend+Hibernate
Documentation=man:systemd-suspend.service(8)
DefaultDependencies=no
Requires=sleep.target
After=sleep.target

[Service]
Type=oneshot
ExecStart=/usr/sbin/pm-suspend-hybrid

一番下の行を書き換えているだけです。

次のコマンドのとおり、設定ファイルを再び読み込んだ後に、ハイバネートを実行できるようになります。

$ sudo systemctl daemon-reload
$ systemctl hibernate

ハイブリッドスリープを実行する場合は、次のコマンドを実行してください。

$ systemctl hybrid-sleep

コマンドラインではなくGNOME Shellからハイバネートやハイブリッドスリープを実行する場合はHibernate Status Buttonをインストールするといいでしょう図3⁠。

図3 ⁠Hibernate Status Button」をインストールすると「Hibernate」「Hybrid Sleep」が追加される
画像

Fcitxを使用する場合

IBusの代わりにFcitxを使用することもできます。この場合はMozcのキーバインドを変更する必要がないので設定がシンプルになります。問題点としてはGNOME Shell上で「仮想キーボード」⁠入力メソッド」⁠スキン」のサブメニューが表示されないことですが、これは最新版の4.2.9.8で修正されました。筆者のPPAに最新版をアップロードしてあるので、これを利用しましょう。

次のコマンドを実行してください。

$ sudo add-apt-repository ppa:ikuya-fruitsbasket/fcitx
$ sudo apt install fcitx fcitx-mozc
$ im-config -n fcitx

再起動してログインするとFcitxが起動するようになります。

Fcitxの設定を表示し、⁠入力メソッド」タブが「キーボード-英語(US)」「Mozc」になっていることを確認します図4⁠。

図4 ⁠キーボード-英語(US)」「Mozc」になっていることを確認する。順序もこのとおりにする
画像

「全体の設定」タブでは、オンオフキーが何になっているかを確認します。半角全角キーはないのでCtrl+Spaceキーがデフォルトですが、必要であれば変更します。また「入力メソッド起動のその他のキー」「無効」にしておくといいでしょう図5⁠。

図5 ⁠入力メソッド起動のその他のキー」「無効」にする
画像

IBusのアイコンは右上に表示されたままですが、⁠設定」「地域と言語」にある「入力ソース」をどれか一つにすれば表示されなくなります図6⁠。

図6 IBusを使用しない場合の設定例
画像

おすすめ記事

記事・ニュース一覧