Ubuntu Weekly Recipe

第727回格安2in1 PC、FFF-PCM2BにUbuntu 22.04 LTSをインストールする(前編)

2回に渡って2in1 PCFFF-PCM2BにUbuntu 22.04 LTSをインストールし、活用する方法を紹介します。まずは準備編です。

2in1 PCを買ったワケ

筆者は第715回で紹介したようにThinkPad X13 Gen2 AMD(以下ThinkPad)を入手し、まさに本記事もこれで執筆しています。バックライト付きのキーボードにしておいて本当によかったと思っています。

それはさておき、それから何ヶ月もしないうちにFFF-PCM2Bを買ってしまいました。一体なぜなのでしょうか。

筆者の頭がおかしいからとかそういうのは一旦横に置くこととして、以前主に電子書籍を読むのに8インチのAndroidタブレット端末を使用していましたが、これが壊れてしまいました。かといって、タブレット端末不毛の時代なのでこれと言ってよさそうな後継モデルが見つかりませんでした。ThinkPadは、寝転がって使うにはちょっと大きいというのもあります。

そこで8インチくらいのディスプレイがあり、縦横の画面切り替えができ、かつUbuntuがインストールできそうなタブレット端末ないし2in1 PCを探し始めました。検討していったところ、純粋なタブレット端末はキーボードの扱いにやや面倒な印象があったので、2in1 PCに絞って機種を探すことにしました。

FFF-PCM2Bを選択したワケ

予算が青天井であればもっと選択の幅は広かったのですが、なにせThinkPadを入手したばかりなので、お安めのもの、できれば4万円程度のものを見ていきました。

格安2in1 PCと聞いてまず思いつくのは、ドン・キホーテのNANOTE NEXTです。価格的にはバッチリですが、Ubuntuを使用するのは少々苦労するとの情報を得ていたので、他の機種にしたほうがよさそうだと判断しました。

そんな時に見つけたのがFFF-PCM2Bです。NANOTE NEXTと比較すると価格はやや高めですが、ディスプレイは8インチで希望どおりの大きさであり、SSDが増設できるのも魅力的でした。そしてもちろん、筆者が検索した段階ではUbuntuをインストールしたという記事が見つからなかったのもポイント高いです。

結論から先に書くと、何の苦労もせずにUbuntu 22.04 LTS(以下Ubuntu)が動いてしまい、拍子抜けしてしまいました。

SSDを購入するか否か

前述のとおりFFF-PCM2BはSSDを増設できます。もちろんeMMCがあるので、SSDがあろうとなかろうとUbuntuのインストール自体は可能です。

詳細は後述しますが、今回は256GB SSDを購入することにし、eMMCは使わないことにしました。

SSDを購入するメリットはあるのか。eMMCのまま使用するか、SSDを増設するか、またその場合にどのようなパーティションの構成にするかはさまざまなパターンがあるので、可能な限り網羅しました。

ハードウェア概要

FFF-PCM2Bのハードウェアはおおむね次のとおりです。

役割 型番 備考
SoC Intel Celeron N4120
メモリー 1536MiB LPDDR4 2133MHz *4 合計6GB
Wi-Fi Intel Wireless 3165
microSDカードリーダー USB2.0-CRW
Webカメラ 2M Front Camera
eMMC hDEaP3 128GB
タッチパネル Goodix Capacitive TouchScreen

本体左側には上からUSB-PD兼用Type Cポート、USB 3.2 Type Aポートがあります。右側には上からイヤホンジャック、USB 2.0 Type Aポート、microSDカードスロットがあります。

そして裏側にはM.2 SATA 2240スロットがあり、ここにTS256GMTS430S(以下SSD)を増設しています。

図1「このシステムについて」のスクリーンショットです。⁠ディスク容量」はeMMCとSSDの合算です。

図1  FFF-PCM2Bの「このシステムについて」
図1

バックアップ

なにはなくても、最初にeMMCにインストールされているWindowsのバックアップを取りましょう。

バックアップを取るのはClonezillaがお勧めです。筆者が使用した限りではバックアップ、リストアともに失敗したことがありません。

ただしこの手のPCにありがちな、画面を縦に表示してしまう問題は発生するので、本体を縦にしてバックアップを実行しましょう。なお画面が縦になるのはここだけではなく、GUIが起動しない間は常に縦になっています。

実際の操作方法は、ガイドに従って行えば間違いようがないので省略します。

また本体右側のUSBポートはUSB 2.0です。満充電にして左側のUSBポートを2つ使用し、ブート用とバックアップデータ用にするか、ブート用を右側に、バックアップデータ用を左側に接続するといいでしょう。

もちろん他に使用しているバックアップツールがあればそちらを使用してもいいです。

SSDの取り付け

SSDの取り付けは簡単で、精密ドライバーがあれば誰にでもできます。ひっくり返して蓋を取り、ネジを取ってSSDを取り付け、SSDと蓋のネジを止めるだけです。

精密ドライバーは100円ショップでも売ってますが、よく使うのであればもう少しいいものを買ったほうがいいでしょう。

パーティションの構成を考える

FFF-PCM2Bには内蔵のeMMCにWindows 11 Pro(以下Windows)がプレインストールされています。また、前述のとおりSSDを追加しています。

そしてUbuntuをインストールするわけなので、パーティションの構成は次の選択肢が考えられます。

eMMCにWindows
デフォルトですが、本記事を読む必要がありませんので、選択肢から外していただけるとありがたいです。
eMMCにWindowsとUbuntuのデュアルブート
eMMCの容量は128GBなので不可能ではありませんが、使い込んでいくと容量不足に悩むこともあるかもしれません。
eMMCにUbuntu
Windowsなんて使用しない場合というには、充分にありえる選択肢でしょう。
eMMCにWindows、SSDにUbuntuのデュアルブート
主に使用するのはUbuntu、とりあえずWindowsがあればいいという場合にはシンプルでおすすめの構成です。
SSDにUbuntuをインストール
eMMCにインストールされているWindowsは消してしまいます。
SSDにWindowsとUbuntuのデュアルブート

今回はこれにしました。

256GBのSSDはデュアルブートにするには充分な容量であること、使用するかどうかはさておきWindowsを消す積極的なメリットがないのが主な理由です。

この選択肢にする場合は、先程eMMCからバックアップしたWindowsをSSDにリストアしてください。

eMMCとSSDの特性

SSDにWindowsとUbuntuのデュアルブートに決めたわけですが、eMMCとSSDにはそれぞれ特性があります。これをよく見極める必要があります。

eMMCはSSDと比較して遅いです。そして、当然ですが容量を増やせません。

一方SSDはeMMCよりは速いです。とはいえSATA接続なので、NVMe接続のSSDよりは遅いです。また別途購入して増設するので、容量は好きに選べます。好きにとはいいつつも128GB、256GB、512GBからの選択にはなるしょう。512GB以上が必要となるような用途であれば、もう少し別のPCを選択したほうがいいように思うので、実質は128GBと256GBからの選択になるはずです。

こういう機会もあまりないので、今回はeMMCと256GB SSDでベンチマークを取ってみました。ベンチマークにはいつもと同じく「ディスク」を使用します。

まずは「ディスク」で表示してみます。図2がeMMC、図3がSSDです。

図2  ⁠ディスク」でeMMCを表示したところ
図2
図3  ⁠ディスク」でSSDを表示したところ
図3

カタログスペックではeMMCは128GBですが、実際は125GBしかないようです。また内部的にはSDカードとして認識されているようです。

ベンチマークを見ていきます。今回は結果が安定していたサンプルサイズを100MBにし、3回測定したうちの3回目を掲示します。図4がeMMC、図5がSSDです。

図4  eMMCのベンチマーク結果
図4
図5  SSDのベンチマーク結果
図5

速度に関しては論を俟たないでしょう。追加費用を払ってでもSSDを購入すべきです。eMMCの書き込み速度は最近のHDDと同等の速度しか出ていません[1]

次回予告

さて、SSDの有無とパーティション構成は決まりましたでしょうか。

長くなったので次回に続きます。来週17日はお盆休みで、後編は24日に掲載予定です。それまでに実機を準備してお待ちください[2]

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