もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら ~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語
- 一田和樹 著
 - 定価
 - 1,738円(本体1,580円+税10%) 880円(本体800円+税10%)
 - 発売日
 - 2013.10.5[在庫なし]
 - 判型
 - 四六
 - 頁数
 - 288ページ
 - ISBN
 - 978-4-7741-6004-7 978-4-7741-6042-9
 
概要
パソコンが外部から操られ、痕跡は残らない。
何が証拠なのかは教えてもらえない。
罪を認めないと、勾留延長、家族対策で自白を促す。
裁判になれば、99パーセント以上が有罪に。
家族の情報はネットでさらされ、瞬く間に拡散していく。
罪を認めず争えば、家族も本人もつらいだけ ――
パソコン遠隔操作事件を題材にした、あなたにも降りかかりうる災厄の物語。
【あらすじ】
父親が、ネットショップのサイトをハッキングして逮捕された ――
システム会社に勤務する石野拓巳が目の当りにした衝撃のニュース。警察に聞いても根拠は教えてもらえず、ソーシャルネットのアカウントが特定され「犯罪者の息子」として囃し立てられ、会社を休職せざるをえなくなった石野は、弁護士やサイバーセキュリティの専門家たちの力を借りながら、無実の人間が犯罪者に仕立てられる仕組みを解明しようとする。
潔白を主張する父親と家族を追い詰める、警察の驚くべきやり方とは?
インターネットの驚くべき実態とは?
真犯人の狙いどこにあるのか?
石野は父親の無実を証明することができるのか?
こんな方にオススメ
- ネットや社会の知られざる危険性に興味がある方
 - パソコン遠隔操作ウィルス事件、Librahack事件に興味がある方
 
目次
プロローグ 全国中に「犯罪者の息子」として知られた六月二十五日
第1章 だれも教えてくれなかった冤罪の仕組み
- 逮捕の根拠は教えてもらえない
 - 日本で裁判になると百パーセント近くが有罪
 - 警察は何を根拠に「犯人」と断定したのか
 - ツイッターは罵詈雑言の増幅装置、まとめサイトは陰口の痰壺
 - アンチウイルスソフトでは防げないマルウェア
 - 日本の取り調べは中世なみ
 
第2章 「人様に迷惑をかけてはいけない」か、「迷惑をかけ合うのが人間」か
- 休職しなければかえってマイナス
 - 「自白しないとずっと拘留される」という可能性
 - 表沙汰にならない冤罪事件
 
第3章 遠隔操作マルウェアが見つかっても、無実の決め手にはならない
- 犯行から時間が経てば経つほど不利に
 - 証拠品をチェックするパソコンが操られていたら
 - 政府系のサイバーセキュリティ組織の機能がよくわからない理由
 
第4章 情報は知らないうちに“取引”されている
- マルウェアで儲けるカラクリ
 - アメリカ政府機関は令状なしで個人情報を閲覧できる
 - 自分たちで都合のいいニュースを作り出すサイバーセキュリティ関係者
 - 民主主義と全体主義は紙一重
 - 岡崎市中央図書館(Librahack)事件の先例
 
第5章 なぜ、犯人を捕まえられないのか
- 思想家や活動家をうさんくさいと思う“洗脳”
 - 警察はなぜ起訴しないのか
 - サイバー犯罪においては常に犯罪者の方が有利
 - 日本における捜査の限界
 - 「絶縁状」を持ってくる警察
 - だれがリスクをとるか
 
第6章 デマに踊らされる人々
- 逮捕される時にマスコミが押し寄せる裏側
 - 警察の監視から少しでも逃れるために
 - 隣人からの苦情
 - 証拠のないことをマスコミにリークする警察
 - 苦情も捏造される
 - プロバイダから得られる手がかり
 - マルウェア、起動
 
第7章 逆襲の方法
- 犯人をプロファイリングする
 - 拘禁症状
 - 協同型マルウェアの脅威
 
第8章 「正義」はどのようにあるべきか
- 日本の個人情報の多くは、アメリカのサーバにある
 - 司法はすでに崩壊している
 - なぜ、司法崩壊を止めなければならないのか
 
第9章 ゲームオーバー
エピローグ それぞれの正義
あとがき
- 謝辞
 
おまけ
- 個人情報漏洩の原因と防ぎ方
 - 逮捕入門
 - 逮捕対策
 - 参考サイト
 
本書に出てくる警察、検察関係のこと
- 補足説明
 - 架空の事項
 
プロフィール
一田和樹
東京生まれ。バンクーバー在住。
コンサルタント会社社長、プロバイダ常務取締役などを歴任後、日本初のサイバーセキュリティ情報サービスを開始。
2010年 島田荘司選 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞。翌年同作でデビュー。
サイバーセキュリティミステリを中心に執筆、その他、ファンタジーやマンガ原作などもこなす。筆が速いことと、多彩な芸域が特徴。ネット小説『告白死』はカルト的人気を誇る。
好きなものは、スイーツと、昏い森で迷った天使の後ろ姿。
将来の夢は、捨てた女に殺されること。
【ホームページ】https://www.ichida-kazuki.com/
【Twitter】https://twitter.com/K_Ichida
既刊
- 『サイバーセキュリティ読本』原書房刊
 - サイバーセキュリティコンサルタント 君島悟シリーズ 原書房刊
- 『檻の中の少女』
 - 『サイバーテロ 漂流少女』
 - 『サイバークライム 悪意のファネル』
 
 
連載
- 『"電網恢々疎にして漏らさず網界辞典"準備室!』(gihyo.jp)
 - 『アンダーグラウンドセキュリティ』アスキークラウド誌
 - 『ネバーエンディング絶望ランドの夏』ハッカージャパン誌(マンガ原作を担当)
 - 『オーブンレンジは振り向かない』(http://www.byakuya-shobo.co.jp/hj/ハッカージャパン誌(連載終了、マンガ原作を担当)
 
著者の一言
ネットの普及とともに急速に変化する世界。私たちは自覚なしに時代の曲がり角に向かっています。曲がった先になにがあるのかは、だれにもわかりません。
ひとつだけわかっているのは、そこにあるのは平和や繁栄ではないということです。混沌と破壊が次の時代を支配するテーマとなります。司法は混沌と破壊を食い止めようとしますが、もはやそれは不可能で、傷口を広げるだけです。
本書はフィクションですが、可能な限り現実に起こりうるものとして書いたつもりです。ここに書いてある技術、社会状況、制度は、私たちのリアルとほぼ同じです。だれでも主人公や登場人物と同じ境遇に陥る可能性があります。その現実を感じていただければ幸いです。