直感でわかるロジカルシンキング
- 伊藤達夫 著
- 定価
- 1,738円(本体1,580円+税10%)
- 発売日
- 2015.2.19[在庫なし]
- 判型
- B5変形
- 頁数
- 112ページ
- ISBN
- 978-4-7741-7130-2 978-4-7741-7237-8
サポート情報
概要
「『自分のアタマで考えろ!』って言われても……、どうすればいいの?」
そんな悩みに、フルカラーのビジュアルとだれでも感覚的にわかる言葉で答える、まったく新しいロジカルシンキングの入門書。
「なぜ、世界中でなんでも売りまくってきたのに、日本の大企業でうまく営業できないのか?」
「なぜ、可愛い子なのに彼氏ができないのか?」
「なぜ、TOEIC900点のイケメン学生は就活がうまくいかないのか?」
といった身近な例で、論理的にわかる・考える・伝える力がだれでも身につく!
こんな方にオススメ
- 自分の頭で考える力を身につけたい方
目次
1時間目:わかる ~なぜ、世界中でなんでも売りまくってきた猛者が、日本の大企業でうまく営業できないのか?
- 知らないことでも「2つの世界」を比較すればわかる
- 「なんのため」がわかるのが始まり
- 「似ている」がわかるとわかる
- 「同じ」と「違う」がわかるとわかる
- 因果関係をおさえればわかる
- 「目に見えないこと」とのつながりが見えるとわかる
- 「何がわからないか」がわかるとわかる
2時間目:考える ~なぜ、可愛い子なのに彼氏ができないのか?
- 「ひょっとしてこうなのかな」があれば大丈夫
- 「たられば」がわかればもっと考えられる
- なりきれば仮説が考えられる
- 期待と現実のギャップを埋める
- 期待を「裏返して」質問にしてみる
- 期待と質問を「行ったり来たり」する
3時間目:伝える ~なぜ、TOEIC900点のイケメン学生は就活がうまくいかないのか?
- 「相手がわかる」ように伝える
- 相手の期待に沿って伝える
- 「何を言うか」と「どう言うか」は別で考える
- 「これまで」と「これから」を伝える
- 最後の最後は腹を割る
プロフィール
伊藤達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。首都大学東京特任准教授。東京大学文学部卒。
コンサルティング会社、専門商社を経て現職。成長戦略、事業戦略、市場調査、営業改善など幅広く企業の支援を実施している。
著書に『これだけ!SWOT分析』(すばる舎リンケ-ジ)がある。
HP:http://www.taii.jp/
Twitter:@TatsuoIto
著者の一言
私は「今時の若い人は……」という言い方が嫌いです。年齢を重ねた人が、自分が若い頃の愚かさを忘れて言うセリフです。ローマ時代の壁の落書きにも見られると言います。だれでも、年を取れば若い人にイラっと来ることがあります。ただ、「最近の」ではなく、「若い」ことに共通する「よろしくないこと」を、自分たちを切り離して批判するのは卑劣だと思います。
この4年の間、私は週に1回か2回、八王子にある首都大学東京の南大沢キャンパスで「今時の若い人」である学生と接しています。そのなかで「何かがおかしい」と感じることもありました。そんな時は「自分も年をとったのかな」と思うようにしていましたが、ある時、面白いやりとりがありました。
「自分で考えてごらん」
「うーん。思い出せません」
「いや、思い出さなくていいからさ、自分が考えてみてよ」
「思い出せないとわからないじゃないですか」
私はこれを聞いた時、非常に奇異な印象を受けました。「この子は何を言っているのだろう?」と。
私は聞いてみました。
「思い出さなくても、わかることってあるでしょ?」
「あるんですかねー。確かにある気もしますが……」
その学生は黙り込んでしまいました。
ためしに、いろいろな学生に、これに近いことをいろいろと聞いてみました。すると、彼らの反応は……
「知らないことって、わかるんですか?」
「数学も暗記科目ですよね?」
「ネットに書いてあることをそのまま書くのってダメなんですか?」
「先輩がウィキペディアのリンクが青いままコピペして卒論を出しましたよ」
……。私にしてみれば驚異的な彼らの「考え」を知ることができました。
そして、「これはまずい」と思うようになりました。首都大学東京というのは、早慶に受かってきている人もいれば、MARCHに落ちてきている人もいるレベル差が大きな大学ではあるのですが、こういった考えを持っているのは必ずしも成績が下位の学生ばかりではありませんでした。これはさすがにまずい、「今時の若者は……」の範疇を越えていると思いました。
学生たちにとって、考えることはおおむね「思い出すこと」であり、勉強は「パターンを覚えること」でした。そして、「コピペをすれば、考えることの代用になる」と思っています。これらは今時の若者に共通する「考える行為」のイメージであるようでした。
調べてみると、最近の受験勉強が原因の1つになっていることがわかりました。点数を取ることに特化して、数学などのいわゆる「考える科目」も、パターンにして覚えることしかやらないし、それが正しいと思い込んでいる先生もいるようです。
一問一答形式で言葉をとにかく覚え続ける。そうすれば点数が上がる。 ひたすら一対一の対応を覚える。それが勉強である。
彼らは頑なにそう信じています。
私が高校の頃には、けっこう多くの人が「受験勉強に飽きたら、大学の教科書をさらさらと見てみる」ということをやっていました。受験にすぐに役立つわけではありませんが、好奇心を持って大学の教科書を読んでいたと思います。今はそういう人が少なくなっているようです。
「ペーパーテスト型の受験が悪だ」というつもりはありません。非常に公平なシステムだと思います。当然、考えるアプローチを使ってペーパーテストの点数を上げることも可能です。しかし、「考えないで最小単位で覚えるだけの勉強のやり方」で点数を上げることもまた可能であり、そればかりをやってしまうこと、その方法しかないと思ってしまうことが悪なのだと思います。
これでは大学の勉強がまったくできるようになりません。それどころか、社会に出てから企画系の業務がまったくできないでしょう。いくら「ロジカルシンキングスキル」が普及しても、文字を覚えるだけではできるようにはなりません。このままでは日本の将来が危ういと思うようになりました。
でも、心配しないでください。この現実を越えるために、本書では「直感的にわかる」ことを重視しています。だれでも感覚的にわかる言葉やビジュアルから「ロジカルシンキング」に迫っていくことで、その理解を深めていくことを意図しています。
内容は、首都大学東京で私が「企業課題解決コンテスト」と題して実施した授業と、2012年から2013年にかけてビジネスマン向けに実施した「思考についての勉強会」の内容をベースにしています。授業では、SMBC日興証券、SAPジャパン、新日鉄住金、日本ヒューレットパッカード、三菱商事、(五十音順、敬称略)などの企業で現役で活躍していらっしゃる方から現実の課題をいただき、解決策を提案する、ということを行いました。学部生には難度が高い課題やってもらい、少しでも社会人のすごさを感じてもらうことが授業のコンセプトでした。
SAPジャパンの戦略オプション、三菱商事のインドでの新規事業戦略など、歯ごたえがありすぎる課題をいただいた結果、授業をやっていく過程で学生に短期間でロジカルシンキングを教える必要性が生じ、試行錯誤せざるを得ませんでした。この本では、実際に授業をやった時の学生やビジネスマンの方々の典型的な反応をふまえて、できるだけ授業で出てきた学生やビジネスマンの疑問に答えるように努めました。1つ1つのことを一緒に、直感的に感じながら、「考えること」を学んでいただければと思います。
前置きが少し長くなりましたが、この本があなたのビジネスライフに資することを心から祈ります。少し風変りな本ですが、最後までお付き合いいただけると幸いです。