システムインテグレーション再生の戦略
~いまSIerは何を考え,どう行動すればいいのか?
- 斎藤昌義,後藤晃 著
- 定価
- 2,068円(本体1,880円+税10%)
- 発売日
- 2016.1.26[在庫なし] 2016.1.22
- 判型
- A5
- 頁数
- 240ページ
- ISBN
- 978-4-7741-7872-1 978-4-7741-7942-1
サポート情報
概要
「SIビジネスはなくなってしまうのでしょうか?」
これまでと同じやり方では、収益を維持・拡大することは難しくなるでしょう。しかし、工夫次第では、SIを魅力的なビジネスに再生させることができます。その戦略とシナリオを、豊富な図解と事例とともに集大成しました。これからのビジネスを読み解くうえで不可欠なトレンド、ビジネスモデル、グローバル戦略、プライシング戦略、人材育成戦略、そして新規事業の進め方までがこれ1冊でわかります。
全60枚の図表は、すべてPowerPointデータとしてダウンロード可能、ロイヤリティフリーなので企画書や経営会議の資料としてご活用いただけます。
こんな方にオススメ
- SIerの方、IT業界への就職を考えている方、情報システム部門担当者、経営企画部門担当者
目次
はじめに
第1章 システムインテグレーションの現実と課題
向き合うべき3つの真実
- もはやSIは成長産業ではない
- 人月積算には限界があるのに続けざるをえない
- コラム SIビジネスに内在する構造的不幸
- 付加価値率は高いが、コントロールできるコストの割合が非常に低い
- コラム 付加価値率
- アドバンテージマトリクスで業界の特性を分析すると
- コラム 競争環境の変化とSI産業の成功要因の変化
システムインテグレーションが直面する8つの現実
- 工数の喪失
- ユーザー企業の期待の変化
- 労働力の喪失
- コラム 労働法における多重派遣の今後
- 求められるスキルと現実の不整合
- シチズンインテグレーターとの競合
- グローバル競争との対峙
- 競争原理の変化
- 異業種との競合
- コラム いま起こりつつある本質的変化:「装置産業」から「サービス産業」への転換
第2章 これからのカギとなる3つのトレンドと10のテクノロジー
デジタルビジネスと3つのドライビングフォース
- ITビジネスからデジタルビジネスへ
- 「オープン化」「スマート化」「サービス化」がビジネスを牽引する
トレンドを支える10のテクノロジー
- SDI(Software-Defined Infrastructure)
- コンテナ型仮想化
- 新しいハードウェアテクノロジー
- IaaS(Infrastructure as a Service)
- IoTとビックデータ
- PaaS(Platform as a Service)
- SaaS(Software as a Service)
- ソーシャルとウェアラブル/モバイル
- スマートマシン(ロボット、スマートアシスタント)
- コンテキストテクノロジー
第3章 ポストSIビジネスの3つの戦略と9つのシナリオ
従来型ビジネスの可能性と限界
- 受託開発では「常駐型」を減らし「持ち帰り型」を増やす
- 事例 品質を武器にする日本一の下請け屋さん【マイクロネットワークテクノロジーズ】
- インフラビジネスは上流の仕事のニーズがますます重要に
- これからのビジネスを「アプリケーション/インフラ」「専門特化/スピード」の2つの軸で整理する
ビジネス同期化戦略
- 内製化支援
- 事例 ITマネジメントを追求し、ユーザーの立ち位置を決める【日本たばこ産業】
- シチズンデベロッパー支援
- 事例 お客様に楽しんでいただく定額型受託開発【ジョイゾー】
- アジャイル型請負開発
- 事例 ITビジネスの原点:業務の現場と最新テクノロジーをつなげる【JBCCホールディングス】
アプリケーションプロフェッショナル戦略
- 特化型SaaS/PaaS
- 事例 提供価値の再定義で新たな競争を仕掛ける【ウイングアーク1st】
- ビジネスサービス
- 事例 SI事業者だからこそできるサービスビジネス【新日鉄住金ソリューションズ】
- 業種・業務特化インテグレーション
- 事例 お客様の視点を持て、オープンコミュニティに貢献せよ【ウフル】
クラウドプロフェッショナル戦略
- クラウドコンサルティング
- 事例 人間の魅力こそがビジネスの価値【クリエーションライン】
- クラウドインフラ構築
- クラウド運用管理
- 事例 ワークスタイルを変えて、働く人たちの価値を高めてゆく【サーバーワークス】
- コラム インフラ提供戦略への新規参入は避けるべき
ポストSI戦略の5つの特徴
- サービス視点
- 高度な専門性
- クラウドネイティブ
- ビジネススケール
- マーケティング
- コラム 事業再構築の逆Cカーブ
第4章 ポストSIビジネスを支えるグローバル戦略、プライシング戦略、人材育成戦略
グローバル戦略を成功させる考え方
- SI事業者のグローバル化の現状
- グローバル戦略の3つのパターン
- グローバル化を進めるための基本戦略4つのステップ
- 「人材確保」という観点からグローバル戦略を考えると
- コラム オフショア開発が直面する現実と課題
プライシング戦略の6つの選択肢
- 月額課金(サブスクリプション)
- レベニューシェア
- プロフィットシェア
- 顧問
- 成果報酬
- 価値一括見積
人材育成戦略を見直してエンジニアと営業を育てる
- エンジニアは「ビジネスと技術をつなぐ専門家」として捉える
- これからのエンジニアを育てるうえで大事な3つのポイント
- 事例 「納品のない受託開発」でエンジニアを幸せにする【ソニックガーデン】
- ソリューション営業から「イノベーション営業」へ
- 営業に必要な4つの能力
- コラム 「生き残れない営業」の20の特徴
第5章 新規事業を成功に導くために知っておくべきこと
新規事業を成功させるための課題と鉄則
- なぜ、新規事業が失敗に終わるのか
- 問題を解決するために必要なこと
新規事業を成功させるための6つのステップ
- コラム 「新規事業」を作っているのか「新規事業計画」を作っているのか?
- 1. ニーズを見極め、最適な手段は何かを決める
- 2.「強み」を明らかにする
- 3.「中核的価値」を明らかにする
- 4. 仮説を検証する
- 5. 橋頭堡を築く
- 6. 売るための仕組みを作る
新規事業開発を進めるうえで注意すべき5つのこと
- ウォーターフォールで考えない
- 最初はKPIの達成を求めない
- ボランティアで取り組まない
- 「みんな」でやらない
- 「いま」から未来を考えない
おわりに
プロフィール
斎藤昌義
ネットコマース株式会社 代表取締役。
1982年、日本IBMに入社、営業として一部上場の電気電子関連企業を担当。その後営業企画部門に在籍した後、同社を退職。
1995年、ネットコマース株式会社を設立、代表取締役に就任。産学連携事業やベンチャー企業の立ち上げのプロデュース、大手ITソリューション・ベンダーの事業戦略の策定、営業組織の改革支援、人材育成やビジネス・コーチング、ユーザー企業の情報システムの企画・戦略の策定などに従事。IT関係者による災害ボランティア団体「一般社団法人・情報支援レスキュー隊」代表理事。その他、『【図解】コレ1枚でわかる最新ITトレンド』『システムインテグレーション崩壊』(ともに技術評論社 刊)ほかの著書、雑誌寄稿や取材記事、講義・講演など多数。
ホームページ:http://netcommerce.co.jp/
ブログ:http://www.netcommerce.co.jp/blog/
Twitter:@Takamaro
Facebookページ:https://www.facebook.com/solution.sales
ITビジネス・プレセーンテーション・ライブラリー/LiBRA:http://libra.netcommerce.co.jp/
後藤晃
株式会社フレクト 経営学修士(MBA)。SwankyConsulting 代表。
中堅SIerにてIT・業務コンサルティングを経て、2008年に新日鉄住金ソリューションズに入社。大手金融機関の大規模プロジェクトを担当後、クラウド企画、マーケティングを担当。
2015年3月に株式会社フレクトに入社。SFA、CRM、MAのコンサルティング、事業戦略やIoTサービスの戦略立案およびマーケティングを担当、その他採用戦略などに従事。
その傍ら、個人事業として、コンサルティング、出版、教育事業を展開。戦略・マーケティング研修や、ブザン公認マインドマップインストラクターとしてマインドマップ研修を行う。『ビジネスモデルYOU』(翔泳社 刊)の翻訳に参画、ITmediaオルタナティブ・ブログなどへの寄稿、講演多数。
ホームページ:https://swankyconsulting.amebaownd.com/
ブログ:https://swankyconsulting.amebaownd.com/pages/146174/page_201510122019
Twitter:@kou_goto
Facebookページ:https://www.facebook.com/swankyconsulting/
著者の一言
はじめに
「システムインテグレーションは、本当になくなってしまうのでしょうか?」
SIビジネスは、いま大きな節目にさしかかっています。人月積算に頼った収益モデルは、明らかな構造的問題を抱えています。それに加え、クラウドや人工知能の普及が工数業務を代替する流れは、ここに来てさらに加速しています。
「では、どうすればいいのでしょうか?」
その答えをお伝えするのが、本書の目的です。筆者は2014年に『システムインテグレーション崩壊』という本を刊行しましたが、同著では将来の展望を示し、いくつかの事例を紹介したに過ぎません。「そこをちゃんと説明してくれ」というご意見も多く、本書を執筆することにしました。
本書の執筆にあたっては、次の3点に留意しました。
本書では、机上の理論や精神論ではなく、実践に役立つ戦略や方法論の紹介を心がけています。そのため、クラウドシステムインテグレーションやIoTビジネスの実践に取り組む株式会社フレクトでポストSIビジネスに取り組む後藤晃と議論を重ねながら仕上げました。さらに、新たな取り組みにチャレンジする人たちにも多数インタビューさせていだき、その実践ノウハウを紹介しています。
本書をお読みいただく前に、本書で扱う「システムインテグレーション(SI)」とは何かを、明確にしておきたいと思います。
SIを含む情報処理サービス産業とは、ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、インターネット付随サービス業を中心とした「工数積算を前提としたビジネス全般」のことを示しています。準委任や請負などの受託開発、SES(システムエンジニアリングサービス)や派遣などもこれに含まれます。これらを「SI」という言葉にまとめてしまうことには少々抵抗もありますが、世間でシステムインテグレーター(SIer)と呼ばれる企業の多くは、これらをあわせ持って生業としているところが少なくありません。中には、SIerと自称しつつも、実態はSESと派遣が大半を占めているところもめずらしくありません。そんな現実から、本書ではSIという言葉を広義に「工数積算を前提としたビジネス全般」という意味とし、そこに関わる事業者をSI事業者として使用することとします。
また、本書は、「規模の経済」を武器にすることができない中小、中堅規模のSI事業者を主要な読者と想定して執筆しました。もちろん、大手事業者の中でも変革に取り組んでいる事例は紹介していますし、大手事業者の方にもお役に立つはずですが、そこに重心を置いていないことは、あらかじめご了承ください。
今の特需は、これから消滅します。そのときの備えは、できているでしょうか?
本書は、その答えを考える材料を提供できると確信しています。