SIerがこれからとるべき3つの戦略と9つのシナリオとは

システムインテグレーションは、いま大きな節目にさしかかっています。人月積算に頼った収益モデルは、明らかな構造的問題を抱えています。それに加え、クラウドや人工知能の普及が工数業務を代替する流れは、ここに来てさらに加速しています。

では、どうすればいいのか?

ITソリューションベンダーの事業戦略の策定やコンサルティングを手がける斎藤昌義さんは、従来型SIビジネスでの経験や人材を活かすことができ、事業規模にかかわらずチャレンジ可能な3つの戦略とそれを実現する9つのシナリオを、以下の図のようにまとめています。

ビジネス同期化戦略(アプリケーション+スピード)

加速するビジネスのスピードに即応し、ビジネスの競争優位を創る武器となるアプリケーションシステムを開発します。具体的には、以下の3つのシナリオが考えられます。

  • 内製化支援→ユーザー企業が、自らアプリケーション開発ができるように支援する
  • シチズンデベロッパー支援→今後増加が見込まれる「シチズンデベロッパー(一般人開発者⁠⁠」を対象に、開発ツールやそれを使いこなすためのノウハウを提供する
  • アジャイル型受託開発→納期と工数、金額をあらかじめ確定させ、その範囲でビジネスの目的達成における重要度から、開発の対象となるビジネスプロセスの優先度を決定し、順次開発してゆく

アプリケーションプロフェッショナル戦略(アプリケーション+専門特化)

従来型SIビジネスで培った業務ノウハウを活かし、専門特化することで、競合との差別化を図ります。具体的には、以下の3つのシナリオが考えられます。

  • 特化型SaaS/PaaS→従来型SIビジネスやパッケージ製品の開発で培った業務ノウハウをクラウドサービスとして提供する
  • ビジネスサービス→システムの機能を提供し、それを使ってもらうのではなく、作ったシステムを使うための人的な業務も含めて、一括してアウトソーシングを受ける
  • 業種・業務特化インテグレーション→業務における高度な専門的知識やノウハウがなければ実現できないシステム開発に専門特化する

クラウドプロフェッショナル戦略(インフラ+専門特化)

いまやクラウドの利用は常識となりつつありますが、活用するためにはこれまでのノウハウだけでは不十分です。クラウドに専門特化し、お客様がクラウドを高度に利用するのを支援することには需要があります。具体的には、以下の3つのシナリオが考えられます。

  • クラウドコンサルティング→クラウドサービスの利用に際し、最適なクラウドサービスの選択や組み合わせ、その他の対応すべき事項を解決し、最適なクラウド環境を構築するためのアドバイスをして、システム企画・設計を支援する
  • クラウドインフラ構築→お客様個別専用のITインフラを、クラウドサービスを活かして構築する
  • クラウド運用管理→クラウドシステムの運用管理に関わるスキルや人材の不足を肩代わりする

なお、図の右下にある「インフラ提供戦略」は、規模の経済が競争力を決定するため、既存のSI事業の延長で対応することは困難と考えられます。よほど明確な差別化の要件を持っていなければ、避けるのが賢明といえます。

新刊システムインテグレーション再生の戦略では、こういったビジネスモデルやトレンド、さらにはグローバル戦略、プライシング戦略、人材育成戦略、新規事業の進め方までを約60点もの図解とともにわかりやすく解説。図表はPowerPointデータとしてダウンロード可能で、ロイヤリティフリーで企画書や経営会議の資料としてご活用いただけます。SI事業者やITビジネスに関わる方はもちろん、ユーザー企業の情報システムに関わる皆さんが、IT業界の現実を正しく理解し、自分たちの未来を考えていくための参考にしていただければ幸いです。