問題地図
システムの問題地図
~「で、どこから変える?」使えないITに振り回される悲しき景色
- 沢渡あまね 著
- 定価
- 1,848円(本体1,680円+税10%)
- 発売日
- 2018.2.17
- 判型
- 四六
- 頁数
- 272ページ
- ISBN
- 978-4-7741-9463-9 978-4-7741-9638-1
概要
累計15万部『職場の問題地図』『仕事の問題地図』『働き方の問題地図』、『職場の問題かるた』に続く働き方改革のバイブル、シリーズ最新作! 「システムを新しくしたらかえって仕事が増えた、なんとかしてくれ」「こんなシステム使うなんてめんどくさい、元に戻せ」現場の生産性を向上させるためのシステムが、なぜ使えない・使われないものになってしまうのか? システムを「使う人」「作る人」「守る人」いずれの立場も経験した著者が、問題の原因を図解で示しつつ、解決策を教えます。【巻頭付録】システムの問題 全体マップ
こんな方にオススメ
- お金がかかるわりに使えないシステムに苛立つユーザーの方(情報システム部門、経営者、エンドユーザー)
- ユーザーの要求に振り回されて疲弊しているITベンダーの方(開発、運用、営業、プロジェクトマネージャー、経営者)
目次
はじめに ~ どうして生まれる!?「使えない」「使われない」残念な情報システム
1丁目 「だれのため?」「何のため?」のシステム
- なぜ生まれる?「だれのため?」「何のため?」なシステム
- 業務設計のための5つのチカラを身につけよう
- ほんとうに、システム化が最適解か?
- 定性的な判断も大事!
- 意思決定の足を引っ張る要注意3大ワード:「グローバル」「全体最適」「ガバナンス」
- 要注意3大部門はここだ!:「経営企画部」「社長室」「○○推進室」
- 「いよいよシステム化!」そのとき気をつけておきたい3つの「不明」
- 運用者を巻き込んで知見をフル活用しよう
- せっかく作ったシステム、リリース時・日常のPRも忘れずに!
- 作ることばかりにとらわれない、廃止基準も明確に
2丁目 無駄にハイスペック
- 無駄&無用の長物システムはこうして生まれる
- 何でもかんでもシステムで処理しようとしない
- スモールスタート/アジャイル発想も取り入れよう
- クラウドの利用も視野に入れる
- ユーザーもエンジニアも外に出よう
3丁目 「とりあえず作っとけ!」
- 「とりあえず作っとけ!」のこっち側と向こう側
- 共通リザーブ予算を確保しておく
- 「要件定義とそれ以降」「今年度と次年度」を分ける
- 本音を引き出し、裸のスケジュールを引いてみる
- 変更情報はフラットかつスピーディに共有
- 変更管理、リリース管理を徹底する
- 運用者を上流に参画させて!
- 購買部門は情報組織の中でのジョブローテーションも要検討
- PMOは現場を助ける役割
4丁目「抜け」「漏れ」だらけ
- これが「抜け」「漏れ」の負のスパイラルだ!
- 巻き込む! ための4つのポイント
- 時には強力なトップダウンも大事
- ヒアリングの技術を駆使しつつ、「いっそヒアリングはしない」という割り切りも
- 運用の現場は抜け漏れを防ぐヒントの宝庫
- 運用人材のモチベーションと主体性を引き出そう
- 目に見えないものを見えるよう意識する、管理する ~非機能要件
- 「しくじり先生」をやってみる
- リリース後に「振り返り会」を実施する
5丁目 「俺ら、ITシロウトだから!」
- あなたの会社は大丈夫? 二度とベンダーから信頼されなくなるNG行為トップ10
- 開き直りはなぜ蔓延したのか
- ITがわからない人にも組織にも未来はない
- シロウトでもこれくらい知っておこう! 5つのポイント
- 適切なジョブローテーション、時には専門家の活用を
- 何でもベンダーや情報システム部門が肩代わりしない、親切が仇になるケースも……
- コラム ユーザーもベンダーも要注意! 「プロジェクト管理義務」「協力義務」って何?
6丁目 必ず火を吹く
- 火吹き常態を放置すると、由々しき事態に……
- 「俺ら、ITシロウトだから!」再び
- マネジメントがイケてない
- とにかく役割責任を明確に!
- 悪いことは言わない、「とりあえずRFP」はやめておきなさい
- 悪いことは言わない、購買部門が中途半端に口を挟むのはやめておきなさい
- コストだけで考えない、そろそろ利益・付加価値重視のITを!
- プロジェクトの一体感醸成に大事な2つ「人間くささ」と「共通言語」
- 上流工程で机上運用テストをやってしまう
- 人のアサインについての3つの留意点
- 現行の運用を整理しておこう
- 大トラブル発生時こそ、「見える化」「言える化」による情報共有が大事!
- グッと我慢、現場に細かなトラブル報告を求めない!
7丁目 「仕様ですから」「言われていませんから」
- こうして育まれる!? IT屋の受け身マインド
- とにかく相見積もり、とにかく入札、とにかくとっかえひっかえから脱却する
- 価格で選んだ、だからこそコミュニケーションを大切に!
- 「交換留学」で相手の景色を見てみるのも手
- 「このプロジェクトでは何を大切にするか?どう成長するか?」プロマネはポリシーを示そう
- 過度な客先常駐を解消、たまには帰社日を設けて社内コミュニケーションを
- 外の風に触れてもらって成長を促そう
8丁目 システムの仕事にいい人材が集まらない
- なぜ、大変な仕事なのにリスペクトがない、プレゼンスが低い?
- 自分の仕事と価値を説明できるようになる
- 企業を超えた職種のブランディングを
- 情報システム部通信を発行する
- システムの活用の仕方を説明してあげる
- シャドーITをあえて引き取る
- 経営者は率先して労働環境の改善を!
- システムの仕事にこそ働き方改革を!
- ちょっとした気遣いで、エンジニアのモチベーションも生産性も変わる
- 立場を越えて、現場の空気を変えよう
おわりに
プロフィール
沢渡あまね
1975年生まれ。あまねキャリア工房 代表。業務改善・オフィスコミュニケーション改善士。
日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社などを経て、2014年秋より現業。企業の業務プロセスやインターナルコミュニケーション改善の講演・コンサルティング・執筆活動などを行っている。
ユーザー企業でのシステム担当、IT購買担当、ベンダー企業でのITサービスマネージャー、プロジェクトマネージャー、および認証基盤の運用エンジニアなど、ITシステムを選定する立場/使う立場/作る立場/運用する立場いずれの経験も豊富。著書に『職場の問題地図』『仕事の問題地図』『働き方の問題地図』『職場の問題かるた』(技術評論社)、『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『新人ガールITIL 使って業務プロセス改善します!』(C&R研究所)などがある。
CodeIQ MAGAZINE(リクルートキャリア)でマンガ『運用☆ちゃん』を連載中。趣味はダムめぐり。
ホームページ:http://amane-career.com/
Twitter:@amane_sawatari
Facebook:https://www.facebook.com/amane.sawatari
メール:Mail:info@amane-career.com
運用☆ちゃん:https://codeiq.jp/magazine/category/investment
著者の一言
どうして生まれる!?「使えない」「使われない」残念な情報システム
人手でやっていたらとても終わらない、キリがない仕事を一手に引き受けてくれるスグレもの。それが情報システム(以下、システム)。メールはもちろん、営業、広報、人事、経理、CRM、購買……企業のあらゆる活動は、もはやシステムなしには成り立ちません。
しかし、すべてのシステムが重宝がられているかというと、そうではない。「残念なシステム」も存在します。
「こんなシステム、使えない!」
「かえって仕事が増えた、なんとかしてくれ」
「めんどくさい。元に戻せ」
「そんなシステムあったんですか?だれも使ってないっすよ……」
現場から非難ごうごう。
本来、働く人をラクにするはずのシステム。現場の生産性を向上させるためのシステム。なぜ、こんな本末転倒なことになってしまうのでしょうか?そこにはこんな問題が潜んでいます。
とほほ。こんな状態で、いいシステムが生まれるハズがありません。
では、いったいだれが悪いのか?システムを取り巻く人たちは、それぞれ不満をもっています。
まずはユーザーから……。
業務部門(システム担当)
「俺たちはシロウトなんだ。ITのことなんてわからなくて当然!」
「これくらい、ちゃちゃっとスグ作れるよね?」
「徹夜してでもやれ!」
「保守費用?そんなの、壊れないシステムを作ってくれればいらないでしょ」
情報システム部門
「費用対効果を出してくれないと動けません」
「業務のことはわかりません」
「……というわけで、業務がそう言っているから、ベンダーさんしっかりやってね。後はよろしく(マル投げ)」
「とりあえず、納期厳守で」
「(じつはITのことよく知りません)」
一方、ベンダーからはこんな不満が……。
営業
「はい、おっしゃられたことはなんでもやります!」
「費用については、とりあえず後で検討しましょう」
開発
「僕たちは、言われたことだけをやればいい」
「要件にありません。できません」
「ぬおっ、仕様変更。なんとしてでも阻止しろ!」
「とりあえず作ればいいんでしょ。使われるかどうかなんて知ったこっちゃない」
「運用でなんとかすればいい!」
運用
「またボロボロのシステム作りやがって……」
「マニュアル作ってくれないとできません。受けられません」
「営業が安値で受けてきやがった。こんな少人数で回せるわけがない!」
「え、そんな運用が発生するなんて聞いてない!」
いい加減にしなさい!
それぞれが、それぞれの立場で、勝手なことばかり主張している。
同じシステムを作って使う仲間同士、本来協力しあわなければいけないのに、仲違いだらけ、すれ違いだらけ。少なくともここ20年、ずっと変わっていません。
こんなことを繰り返していたら、だれも幸せにならない。なにより、スピードと生産性重視のこれからの時代、私たちは生き残っていけません。
この悲しい景色、そろそろナントカしたい!そこで本書が生まれました。
私はこれまで、ユーザーとベンダー両方の立場を経験しました。ユーザー企業に勤務していたときは、広報部門と購買部門でユーザー代表として、情報共有基盤やWebポータル、購買システムの企画・導入・運営を。NTTデータ(いわゆるベンダー企業)では、プロジェクトリーダーの立場で、グループ会社共通の認証基盤の立ち上げと運用、そして社内とお客様向けのシステムの運用責任者(ITサービスマネージャー)を務めました。
システムを「使う人」「作る人」「守る人」、いずれの立場も知っている。だからこそ、もっとお互いのことをわかり合ってほしい、寄り添ってほしい――そう思っています。
「俺たちはシロウトでいい」
「言われたことしかやらない」
「とりあえず作ればいい」
この無益な意地の張り合い、おしまいにしましょう。そんなことを続けていても、いいシステムは生まれません。何より、ユーザーもベンダーも、自分たちの価値を下げ、個人としても組織としても成長しません。「使えないシステム」を生み続けていると、いつの間にか「使えない自分たち」になってしまいます!
本書では、企業のシステムをとりまく残念な「あるある」を地図にしました。いずれも、私がユーザー部門、調達部門、情シス部門、ベンダー、運用管理者、それぞれの立場で体験し、かつ今ではクライアント先やIT勉強会仲間と話していて見聞きしていることばかり。そして、「それぞれの立場でどうしたらいいか?」を提言します。
それぞれの立場で、それぞれのリアルと向き合ってください。なおかつ、自分と違う立場の人の悩みを疑似体験していただけたらうれしいです。
「だから、ウチのシステムは使えないんだ!」
「そうか、ユーザーはここに困っているのか」
「へえ、情シスの人って大変なんだね」
「ベンダーの考え方って、こうなんだ」
「そうか、こうすれば運用の人に心地よく動いてもらえるんだ」
自分たちの立場でできるところから改善していきましょう。
沢渡あまね