問題地図
                    業務改善の問題地図 
                    ~「で、どこから変える?」~進まない、続かない、だれトク改善ごっこ
                  
                  
                  - 沢渡あまね,元山文菜 著
 - 定価
 - 1,738円(本体1,580円+税10%)
 - 発売日
 - 2020.11.6 2020.11.1
 - 判型
 - 四六
 - 頁数
 - 208ページ
 - ISBN
 - 978-4-297-11639-2 978-4-297-11640-8
 
概要
累計24万部突破の問題地図シリーズ最新作!
「働き方改革」「DX」などのキーワードをくしゃくしゃっと丸めて、人事部門や経営企画部門にマル投げする経営陣。
「どうせ提案しても無駄」と現場はだれも本音を言わない。
若手が提案しても「それはあなたの仕事じゃない」「儲からない」と中間管理職が一蹴。
「RPAというのが流行っているらしい」とソリューションを導入してみるものの、まったく使えず、むしろ仕事が増えてしまう。
改善しようとすると、「なんで今さら変えなきゃいけないの!?」と抵抗される。
やる気はあっても、何をしたらいいかわからず、いつの間にか、なんとなく終息してしまう。
古い仕事のやり方に固執し、いつまでたってもアップデートされない組織を、どう変えていけばいいか?
業務改善・オフィスコミュニケーション改善士として300を超える企業・官公庁・自治体の現場に携わってきた沢渡あまねと、業務改善、IT化支援、RPA導入を推進してきた元山文菜のタッグが教えます。
こんな方にオススメ
- 非効率な仕事のやり方を改善したいがなかなかうまくいかない組織の方
 
目次
はじめに 「先生、ウチの組織ではなぜ業務改善がうまくいかないんですか?」
- 「業務改善」かけ声だけで「しかしなにもおこらなかった」現場のタメ息
 - 「改革」と「改善」の違いとは
 - 業務改善が起こらない/定着しない組織のアンチパターントップ4
 - 気合と根性、「ボランティア精神」頼みの業務改善はもうオシマイ!
 
1丁目 問題意識がバラバラ
- 社長、部長、課長、現場の担当者……みんな考えてることがまるで違う!
 - 人事や経営企画単独で進める施策は、なかなかうまくいかない
 - 一部門にマル投げして解決できる問題ではない
 - そもそも「働き方改革」なる言葉がビッグワードすぎるんです
 - 意識合わせよりも、景色合わせを ~問題を書き出しやすくする7つのポイント
 - 自分たちの困りごとをテーマ設定する ~「部課長以下の世界のリアル」に正直に
 - 「浮いた時間で何をするか?」も考える
 - 外の風を入れて「おかしいって思っていいんだ」「問題だと思っていいんだ」と気づく
 
2丁目 無力感
- 現場が「改善提案しない」「本音を言わない」背景9つ
 - 意見や提案がおこなわれない=「この組織を信頼していません」のメッセージかも……
 - アンヘルシーな組織風土を放置すると……
 - チームミーティングに「KPT」を取り入れてみる
 - 提案者と実行者を分ける
 - 旗振り役をおく
 - 改善を仕事として認め、リソースや権限を与える
 - 改善した、その先の世界を明確に
 - トップは「伝え方の景色」を変化させて
 - 本気であることを行動で示す
 - 成果より変化を
 
3丁目 中間管理職ブロック
- 中間管理職も被害者なんです…‥
 - 中間管理職の意識と役割のアップデートを!
 - 評価制度の見直しも必要
 - 中間管理職の負荷軽減も大事
 - 中間管理職をはずした、特命改善プロジェクト組織を立ち上げるのも手
 - コラム 何のための働き方改革? だれのための業務改善?
 
4丁目 ソリューションありき
- ソリューションを魔法の杖と勘違い
 - 業務を引っ張り出してきて、目の前に出してみる
 - ECRSで業務を整理整頓する
 - 導入のステップではトップが「未来の姿」を何度も語る
 - 「導入したあとに、どのような評価をするのか?」を最初に決めておく
 - 導入後はボトムアップでふりかえり、ソリューションが役に立っているか見極める
 
5丁目 抵抗勢力
- 業務改善の行く道を阻む「モンスター」5つのタイプ
 - 変化への抵抗、信頼の欠如がモンスターを生み出してしまう
 - 「なぜ変わらなければいけないのか?」情報と体験セットで理解してもらう
 - 個人にとっての“ありたい姿”について話してみる
 - 結果の前に「関係の質」を高める
 - グランドルールを作って意見を出しやすくする
 - 「自分のトリセツ」を作って自己開示をする
 - モンスターマッピングでステークホルダーを整理する
 - 1人1人を整理して、コミュニケーションの攻略法を考える
 - 忘れてはいけない、モンスターはすぐに倒せない、だれでもモンスターになりうる
 
6丁目 三日坊主で続かない
- とにかく、その場しのぎ! 次の一手を考えられない
 - 「なぜ、この仕事をするのか?」まずは日々の仕事から12分を確保する
 - 4つの役割をふまえて業務改善の体制図を作る
 - 情報格差を作らないよう、ミーティングの内容を残す
 - 「即実行・即実感」でアイデアを整理する
 - 実行することの“決め方”を決める
 - アイデアに期日を入れ、一覧にする
 
プロフィール
沢渡あまね
あまねキャリア工房 代表。株式会社NOKIOO顧問、株式会社なないろのはな取締役、ワークフロー総研(株式会社エイトレッド)フェロー。作家、業務プロセス/オフィスコミュニケーション改善士。
日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社などを経て、2014年秋より現業。経験職種は、ITと広報(情報システム部門/ネットワークソリューション事業部門/インターナルコミュニケーション)。
300以上の企業/自治体/官公庁などで、働き方改革、マネジメント改革、業務プロセス改善の支援・講演・執筆・メディア出演をおこなう。
著書は『仕事ごっこ』『職場の問題地図』『業務デザインの発想法』(技術評論社)、『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』(翔泳社)、『はじめてのKintone』『新人ガールITIL使って業務プロセス改善します!』ほか多数。
趣味はダムめぐり。
ホームページ:http://amane-career.com/
Twitter:@amane_sawatari
facebook:https://www.facebook.com/amane.sawatari
Mail:info@amane-career.com
元山文菜
株式会社リビカル代表取締役。業務コンサルタント。
大学卒業後、株式会社サクラクレパスに入社。その後、富士通株式会社に転職。2017年に独立し、現在の株式会社リビカルを設立。障がいや難病女性向けのNPO運営の顔ももつ。
「多様性×業務改善で、はたらくを楽しむ人を増やしたい」をテーマに、業務や組織構造の再設計を手がける。個人や企業にとっての「価値ある時間の創出」「経営資源の拡大」を支援。
これまで、BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)やRPA(ロボティクスプロセスオートメーション)導入支援と、個々人に対する時間管理術の改善をあわせて実施することで、組織への生産性を最適な手段で向上させる。
そのほか、業務プロセス改善、タイムマネジメント、ダイバーシティマネジメントをテーマにした講演活動も精力的におこなっている。
ホームページ:https://www.rebucul.com/
Twitter:@ayana_motoyama
ブログ:https://note.com/nyannko613
著者の一言
「先生、ウチの組織ではなぜ業務改善がうまくいかないんですか?」
「業務改善」かけ声だけで「しかしなにもおこらなかった」現場のタメ息
「働き方改革」「生産性向上」のスローガンのもと、日本の多くの組織が業務改善を意識し、取り組むようになりました。大型書店の棚には、「改善」「カイゼン」を冠する書籍が増えており、世間の改善に対する関心の高まりを伺い知ることができます。
一方で、本当に実のある業務改善が進んでいるかどうかは別問題。
「いつもトップのかけ声だけで終わる」
「改善プロジェクトを立ち上げたが、なかなか成果が出ない」
「それどころか、改善を嫌がる人、抵抗する人だらけ……」
「工場の人たちは改善マインドがあるが、本社はグダグダ……なんとかしたい」
私、沢渡あまねは、業務改善・オフィスコミュニケーション改善士として、すでに300を超える企業・官公庁・自治体を歩いてきましたが、日々こんな「嘆きの声」を見聞きしています。改善がカルチャーとして根づいている組織はさておき、そうでない組織において改善を定着させるのは、なかなかひと筋縄にはいきません。
そうこうしているうちに、競合他社や海外の企業に生産性で差をつけられ、利益の確保が厳しくなり、待遇も改善されない。優秀な人材は見切りをつけて去っていってしまう。今はまだ問題がなくても、グローバル競争、少子高齢化による労働力不足は加速する一方。近い将来、あなたの組織の問題として顕在化するでしょう。
業務改善をする。古いルールや慣習を見直す。いわば「仕事のやり方のアップデート」は、どんな組織においても避けて通れないマネジメント課題であると断言できます。
「改革」と「改善」の違いとは
問題地図をひもとく前に、改革と改善の違いとは何かを考えてみましょう。
改革
価値創造。現状否定。あるいは自組織が有する強み(リソース、強み、ブランド価値など)をベースに、かけ合わせによって、まったく新たなビジネスモデルやプロセスを生み出す。
改善
現状肯定。基本的に、現状のビジネスの前提を変えずに、その範疇で仕組みや仕掛けを創意工夫により変える。いまあるもの(プロセス)をよりよくする。
改革と改善の違いを理解するのに、「産業革命」という言葉を思い起こすといいでしょう。18世紀後半にイギリスで始まった産業革命では、それまで人手でおこなっていたものづくりの作業を機械化し、工場による生産へ移行することにより、作業効率と生産性を大きく向上させることができました。そこには、蒸気機関や石炭を使った新たな動力源の確保、すなわち技術革新とエネルギー革新が大きく寄与しています。
「現状を否定し、技術や仕組みの革新により、まったく新しい構造に変える取り組み」
これこそが改革です。この歴史的なムーブメントが「産業改善」でないことは、だれの目にも明らかでしょう。
このように、改革と改善では方向性やアプローチはもちろん、トップ、経営陣、中間管理職、現場の社員や協力会社、それぞれにおける期待も役割も異なります。
改革はトップの仕事。改善は現場の仕事。
しかし、改善を進めるには、トップによるメッセージングや、改善が起こりやすい環境や制度整備も大事。すなわち、トップによる後押しが不可欠。
このようにまとめることができます。
「業務改善が大事!」「働き方改革だ!」と組織長がただ騒いでいるだけ。
改善や改革を進める体制も組織されなければ、予算も時間も与えられない。
当然、評価もされない。
そんな状態では、どんなに高尚なスローガンを掲げたところで、現場はビクとも動きません。あるいは、改善したフリにカロリーを使うだけ。
本書では「改善」にフォーカスしますが、適宜「改革」の観点も織り交ぜながら、改善をドライブするための各論を展開します。
業務改善が起こらない/定着しない組織のアンチパターントップ4
改善が起こらない、あるいは一時のお祭り騒ぎで終わってしまって定着しない要因はほかにもあります。業務改善が進まない組織の、アンチパターンのトップ4を紹介しましょう。
①中間管理職が邪魔をする
②言ったもの負け
③どうしたらいいかわからない
④勇者頼み
①中間管理職が邪魔をする
社長は改善をしたいと思っている。現場の若手も古い仕事のやり方を変えたいと思っている。しかし、中間管理職の反応は……
「それはキミの仕事じゃない」
「余計なことをするな」
いや、中間管理職の言い分もわかるのです。改善したって評価されないですから……
②言ったもの負け
「これが問題です!」「改善しよう!」
そう思ってはいるものの、下手に声を上げると「じゃあ、あなたがやって」と返ってくる。ただでさえ忙しいのに、たまったものではない。こうして、みんな「現状に問題なんてない」「無駄なんてない」フリをし続けます。
③どうしたらいいかわからない
「業務改善が必要だ」みんな、そう思っている。予算も時間もとる気満々。しかし、何から手をつけていいのかわからない。それもそのはず、いままで改善なんてやったことがないのだから。
④勇者頼み
そんなどんより組織であっても、たまにいるのです。自ら進言し、手を挙げて改善を進めていこうと、果敢に取り組む勇者が。体制がなくたって、評価されなくたってかまわない。ブルドーザーのように、道なき道をバリバリと開拓していく。しかし、その勢いも長くは続きません。ある時、突然チャレンジの糸が切れ、改善の足を止めてしまう。あるいは、辞めてしまう。そして、その勇者がいなくなったとたん、また元の改善マインドのない組織に戻ってしまう。
気合と根性、「ボランティア精神」頼みの業務改善はもうオシマイ!
率直に言います。
改善が進まない/定着しない組織の多くは、改善を個人の気合と根性に依存しすぎ。
「業務改善が大事!」とトップが叫んでいれば、そのうち手を挙げてくれる奇特なボランティア勇者が現れると思っている。
しかし、どうでしょう? ろくにお金も時間も与えられず、評価もされない。さらには、モンスター(抵抗勢力)がわらわらと出てきて、改善の行く手を阻む。まるで、棍棒一本とお小遣い程度のお金しか与えられずに、「世界平和を取り戻せ」と王様から無茶振りされたロールプレイングゲームのごとき状況です。それでは、勇者の心も折れてしまいます。そうして、2人目の勇者は現れません。
組織に改善を定着させるためには、4つの観点でのマネジメント強化が欠かせません。「制度」「個人スキル」「プロセス」「場」です。
個人の能力や、気合と根性などのメンタリティを含む「個人スキル」。それだけでナントカしようとしてもうまくいかないのは、この図からも一目瞭然でしょう。改善を偶発的な取り組みではなく、組織の必然として発生し続けるようにするためには、「制度」「プロセス」そして今までの自分たちのやり方をアップデートしたり、足りない知識やスキルをインプットしたり、ふりかえりをする「場」も大事なのです。組織のカルチャーは、個人の気合と根性とボランティア精神だけでは変わらないのです。
本書では、この4つの観点をふまえ、あなたの組織で改善をフライトさせるには、さらには組織文化として定着させるにはどうしたらいいかを、いっしょに考えます。
今回、私、沢渡に加えてもう1人、元山文菜(もとやま あやな)さんにもお力添えいただきました。元山さんは、企業の業務改善やIT化支援を力強く推進されている、株式会社リビカルの代表取締役です。彼女のキャリアのスタートは美容師、そこから難病を経てキャリアチェンジ。企業のプロダクトマネージャー、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)マネージャーなど、多彩な経験をお持ちです。最近では、中小企業へのRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入も支援。現場のリアルを知り尽くした、業務改善の専門家です。沢渡が第1章から第3章まで、そして元山さんが第4章から第6章までを担当しました。2人のタッグで、大企業、中小企業、官公庁・自治体、それぞれのサイズの業務改善のモヤモヤに風穴をあけていきます。
いつまでたってもアップデートされない、古い仕事のやり方に固執している組織に成長はありません。そこで働いている個人も、生産性の足を引っ張る残念な人材になってしまいます。やがて、優秀な人材、取引先などの社外パートナー、さらに市場(マーケット)や株主からも見放されてしまいます。個人のボランティア精神のみに依存せず、そろそろ改善が正しく起こり、仕事のやり方をアップデートし続けられる組織に変わっていきましょう。
すべては、組織と個人が正しく成長するために!