問題地図
文章の問題地図
~「で、どこから変える?」伝わらない、時間ばかりかかる書き方
- 上阪徹 著
- 定価
- 1,628円(本体1,480円+税10%)
- 発売日
- 2020.12.7 2020.12.1
- 判型
- 四六
- 頁数
- 176ページ
- ISBN
- 978-4-297-11722-1 978-4-297-11723-8
概要
累計25万部突破の問題地図シリーズ最新作!
「スラスラ書けない、時間がかかってしょうがない」
「何を書いていいかわからない」
「支離滅裂だと叱られる」
「長い文章が恐怖でしかない」
「書き直しを何度も命じられて、いつまでも終わらない」
「読みづらいといわれる」
「うまく伝わらない、おもしろがってもらえない」
「Slackのやりとりで嫌われた」
つらい、苦手な書くことにまつわるアレコレ、どうやって変えていけばいいか?
3000人を超える人たちに取材をして記事を書き、40冊以上の著書を出し、80冊以上のブックライティングに携わり、10年間毎月1冊ずつ本を作ってきた著者が、「書くことが好きじゃなくてもうまくいく」文章との向き合い方を教えます。
こんな方にオススメ
- 文章がなかなか書けない、うまく書けないと感じているビジネスパーソン
目次
はじめに 文章は書けなくてあたりまえ
- 発見① 立派な文章を目指す必要はない
- 発見② 「素材」に目を向ければ、すぐに書けてしまう
- もっと肩の力を抜いて、文章とつきあおう
1丁目 とにかく時間がかかる
- 「書きながら考える」「最初から完璧をめざす」から時間がかかる
- まずは素材を整理する
- 後で推敲するつもりで、まずは「粗々で書く」
- 感謝の気持ちが出てくる4つの言葉を使う
- 敬語に関わる5つの文章に気をつける
- フォーマットを作っておく
2丁目 書くことがない
- その場でメモを取っていないから、書けない
- カリキュラム、ストーリー、出来事をメモしていく
- 「感想」となる4つのこと
- 日報の「素材」となる7つのこと
3丁目 構成がうまくできない
- 「こうあるべき」に合わせようとする、ぼんやり頭の中にあるだけ、ではうまくいかない
- 「素材」を箇条書きにして、矢印をつけて「こうでこうでこう」を考える
- 書き出しで意識したい4つの反応
- 書き出しを考えるときに意識したい「相場観」
- コラム 「素材」を自分の中から引き出す方法
4丁目 長さにひるむ
- 「素材」が足りないから、ひるんでしまう
- ヒアリングで「素材」を引き出す4つのコツ
- 五感をフル活用してしっかりメモしておく
- 500字単位に分割して考える
- 長文の構成の基本フォーム「共感」「異論」「異論の理由」「新たな発見」「結論」
5丁目 手戻りが多い
- 発注者のイメージとのズレ、凡ミスで手戻りが起きてしまう
- まずは「真の目的」「読み手」をしっかり確認する
- アウトプットのイメージを共有する
- 発注者に「これは合格」サンプルを見せてもらう
- 絶対に避けなければいけない凡ミス7
6丁目 読みづらい
- 漢字や専門用語が多い、1文が長い、表現する言葉が多いと読みづらい
- 日常会話レベルの言葉を意識する
- 60文字くらいを目安に文を分ける
- 小説家のような表現や、メディアで使われているような慣用句を使わない
- 「、」は、読み手になったつもりで60文字に1つか2つは入れることを目安に
- 行替えして「見た目」をすっきりと
- 最初に結論をしっかり言ってしまう
- 冗長な文章の原因「また」「さらに」を使わない
- いっそ、箇条書きにしてもかまわない
- コラム だれかの文章に学ぶ
7丁目 伝わらない、刺さらない
- 表現する言葉、面白さへのこだわり、平凡さが、伝わりにくさの原因
- 読み手が追体験できる「素材」を用意する
- 「面白い」を「目的と読み手」で設計する
- 「自分にふさわしい内容」を意識する
- そこでしか書けない具体的な1文を添える
- 商談の場で聞いた話を「素材」にする
- コラム 形容詞を使おうとするから悩む、書くのが嫌になる
8丁目 言葉づかいがひどいと言われる
- 「文章の怖さ」がわかっていない、余裕がないと、言葉づかいが悪くなる
- 「ありがとう」から入る、必ず敬語にする
- 余計な感情を載せない
- 提出前に「寝かせて」読み返す
- コラム まずは「読む」トレーニングから
おわりに 大事なことは書く前にある
プロフィール
上阪徹
1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年にフリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに雑誌や書籍、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。携わった書籍の累計部数は200万部を超える。
著書に、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)、『書いて生きていく プロ文章論』(ミシマ社)、『これなら書ける 大人の文章講座』(筑摩書房)、『メモ活』(学研)、『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)、『職業、挑戦者 澤田貴司が初めて語る「ファミマ改革」』(東洋経済新報社)、『サイバーエージェント 突き抜けたリーダーが育つしくみ』(日本能率協会マネジメントセンター)、『マイクロソフト 再始動する最強企業』(ダイヤモンド社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNo.1大学になったのか?』(東洋経済新報社)、『社長の「まわり」の仕事術』(インプレス)など多数。
インタビュー集に、累計40万部を超えるベストセラーとなった『プロ論。』シリーズ、『外資系トップの仕事力』シリーズなどがある。
インタビューで書き上げるブックライター作品も80冊以上を数える。
公式サイト:http://uesakatoru.com
著者の一言
文章は書けなくてあたりまえ
文章を書く仕事でフリーランスになって、25年になります。そんな話をすると、「さぞや作文が得意だったんでしょうね」「書くことが好きなんですね」と言われることがあるのですが、じつはまったく違います。
大学を卒業するまで、書くことは大の苦手でした。小学校の頃に最も嫌いだったのは、読書感想文。書けなかったし、書きたくなかった。そもそも、本を読むのも好きではありませんでした。昔からの友人たちは、私が書く仕事に就いたことにみんな驚いています。
そんな私ですから、会社勤めをしているビジネスパーソンのみなさんから、こんな声が次々に挙がってくることは大いに理解できます。かつての私もそうだったのですから。
「スラスラ書けない、時間がかかってしょうがない」
「何を書いていいかわからない」
「支離滅裂だと叱られる」
「長い文章が恐怖でしかない」
「書き直しを何度も命じられて、いつまでも終わらない」
「読みづらいといわれる」
「うまく伝わらない、おもしろがってもらえない」
「Slackのやりとりで嫌われた」
こうした悩みは、ちょっとした発想の転換で解決します。文章を書く仕事を長く続けてきて、大きく2つのことを発見しました。
発見① 立派な文章を目指す必要はない
振り返ってみて、文章を教わった経験はどこにあるのかというと、遠く小学校時代、という人がほとんどではないでしょうか。
小学校時代に教わった文章とは、どのようなものだったでしょうか。国語の教科書に出ていたのは、文豪の難しい小説作品であり、評論家の小難しいエッセイであり、よく意味がわからない詩であり……。また、作文で求められるのは、高尚かつ文法的にも正しい優等生的な文章でした。
小学校時代の作文でなかったとしても、その後、「こういうものを書かなければいけないのではないか」と大きく影響されたものがあるはずです。それは、新聞や雑誌などメディアで使われている文章です。
象徴的なのは、新聞の1面の中ほどにあるエッセイ。ときどき大学や高校の受験でも入試に使われたりして、「名文」と言われたりしますが、これもまた大きな落とし穴だと私は思っています。あれは20年、30年と新聞記者生活を送り、本当にいろいろなことを見聞きし経験し、幅広く教養を学び、かつまた文才のある人たちが書いているからです。素人にあのような文章が書けるはずがないのです。お手本になど、しようがない。あれは、プロの仕事なのです。DIYがちょこっとできる人に、プロの大工さんの仕事を求めるようなものです。
断言してしまいますが、新聞に書かれているような名文は、ビジネスをするうえでまったく必要ありません。見事な言い回しを使ったメールや、慣用句に彩られたレポートをだれも求めたりしないからです。
そう、ビジネス文章では、文才はまったく必要ないのです。かつてまったく書けなかった私が、書けるようになったように。
発見② 「素材」に目を向ければ、すぐに書けてしまう
うまく書かないといけない。恥ずかしくない表現をしないといけない。気の利いたフレーズのひとつも置かないといけない……多くの人が「どう書くか」に頭を悩ませ、時間を使ってしまいます。しかし、むしろ時間を使うべきは、「何を書くか」です。
私は、これを文章の「素材」と呼んでいます。以前は300字を書くのに1日かかっていた私が、今では1日1万字、2万字と書くこともありますが、これはたくさんの「素材」があるから。「素材」さえあれば、書くことはまったく苦ではなくなるのです。
ひとつ、わかりやすい例を挙げておきましょう。私は人材採用広告のコピーライターから書くキャリアを始めましたが、新人が必ずやってしまう広告コピーがあります。
「当社はとてもいい会社です」
たしかに、いい会社なのです。だから、思わずこう書いてしまう。そして、この「いい会社」という言葉に置き換わるものはないかと頭を絞ってしまうことになります。ここで苦しむのです。
しかし、「いい」「素敵」「すばらしい」「見事」など、表現だけで文章を作るのがいかに大変なのかは、多くの人が気づいています。そして、まさにこれこそが、私が300字を書くのに1日かかっていた理由でもありました。
では、「素材」に目を向けるとどうなるか。要するに、中身です。
どうでしょうか。「いい会社」「すばらしい会社」と言われるのと、この3つの「素材」と、どちらが読み手に伝わるでしょうか。また、文章にできるでしょうか。
もっと肩の力を抜いて、文章とつきあおう
なんとか文章が書けるようになりたい、苦手意識を払拭したいと、文章の書き方について書かれた本を手にされる方も少なくないようです。文法について書かれているものだったり、書き方が解説されたものだったり、言葉にフォーカスするものだったり。でも、「読んだけど書けるようになれなかった」という声もよく聞こえてきます。
そのすべてに目を通しているわけではありませんが、私自身、パラパラとめくって、「ああ、これは私には無理だな」と思える本が少なくなかった印象があります。たとえば「この文章は正しいが、これはダメ」といった例題がたくさんある本がありましたが、書こうとするたびに、いちいち本を開いて照らし合わせたりすることなど、私にはとてもできないと思いました。また、表現する言葉がたくさん掲載されていたりして、「どう書くか」にばかり目が向いていて、「これでは自分が書くときに応用できないのではないか」と感じるものもありました。
もとより私自身は、文章に正解はないと思っています。もちろん失礼にならないよう最低限のところはカバーしつつ、あとは「素材」にこそしっかり目を向けていけばいいのです。
特にビジネスの世界では、文章は単なるコミュニケーションツールのひとつにすぎません。それこそ、対面だったり、電話だったり、オンラインだったりで、しゃべって伝えるのと同じことです。それをたまたま文章にして伝えているだけにすぎません。単なる情報伝達ツールなのです。
実際に私自身、文章を書くことを仕事にして、だんだん強く実感していったのは、こういう思いでした。
「なんだ、これでよかったのか」
多くの人が、文章に対して肩に力が入りすぎている印象があります。もっとリラックスして、向き合ったほうがいい。
本書で紹介する文章を書くコツに気づくことができれば、私と同じ感想を持つと思います。そしてそのとき、あなたはきっとスラスラと文章を書いているはずです。