著者の一言

本書は、これから統計学をはじめて学ぼうとする初学者向けに執筆した入門書になります。著者自身、大学で統計学の授業を受けたときに、知らない言葉がたくさん出てきたり、また難しい数式だらけの授業だったりで、非常に苦労したことが今でも記憶に残っています。そのときに困っていた自分は、ゼロから丁寧に教えてくれて、数式や証明は見たくないけど、うわべだけなく内容としてもしっかりした参考書を探しましたが、当時は今のような統計ブームでもなく、そのような都合の良い本はなく専門書のような書籍ばかりでした。この著者自身の実体験を糧に、本書ではゼロから一つ一つの用語を丁寧に説明することと、中学生くらいでも十分に理解できるような計算式を中心に解説を組み立てることを意識しました。

統計学やデータ処理は、概念や考え方を理解することがとても重要であると同時に、その知識をベースに実際の分析はコンピュータで行う時代となっています。そこで本書では、全11章の本文については、教科書として授業中に利用したり、電車の中で本書のみで読み進めていくこともできたり、様々な学習スタイルに適用できるような内容を心掛けて書きました。練習問題についても、手を動かして解くことで学習が捗ると思いますが、自分で解かずに解答と解説を読むだけでも理解が深まるような作りとしました。

またコンピュータによる統計処理は、多くの人が扱いに慣れているであろうMicrosoft OfficeのExcelを利用して、本書の本文で書いてあることを実際にパソコンで実践できるように操作手順を紹介しています。こちらにつきましては、必要な方のみが参照できるよう、あえて本文とは分けて、後半に付録してまとめました。

本書の内容やレベルの設定としては、初学者が統計検定3級程度の内容を理解できるようなものを想定すると同時に、現代はコンピュータでデータ処理を行う時代ですので、そこで必要となるICT分野での最低限の関連用語も、数は多くないですが必要に応じて取り上げています。

本書が読者の方にとって、統計学の勉強に関する最初の一歩を踏み出すための助けとなることができるよう心より願っております。

大川内隆朗(おおかわうちたかあき)

1982年東京都生まれ。博士(早稲田大学:国際情報通信学)。

2019年4月より日本大学文理学部勤務。

同大学で講義を担当しながら,主に教育システムの開発や学習データの分析に関する研究に従事する。