著者の一言

みなさんは「特許調査」と聞いてどのような印象を抱くでしょうか。

「知財部の仕事?」⁠理系の専門職?」といったように、自分とはあまり関係ないと思われる方が多いかもしれません。しかし実は、私たちの身の回りにあるほとんどの製品・サービスは、その裏側で行われる特許調査という専門的な仕事によって、静かに、そして確実に支えられているのです。

そもそも「特許」とは、発明を保護・公開し、次の技術を生み出すための仕組みです。新しい技術を特許出願すると、出願を受け付けた特許庁は、その発明が本当に“新しいのか”、“簡単に思いつくものでないか”を確認するために、過去の特許文献を大量に調べます。これが特許調査の一例です。この調査には、ときに数千件もの文献を対象にすることもあります。

「特許文献を調べる」と聞くと、⁠難しそう」⁠専門家だけの仕事」と思われるかもしれません。しかし実際には、技術が好きな方、コツコツ調べることが得意な方、論理的に考えることが好きな方にとって、とても魅力的な仕事です。特許調査は、特許庁での審査に限らず多岐にわたる場面で活用されています。例えば、企業知財部では研究開発や事業方針の検討、弁理士・弁護士は訴訟を見据えて相手方の特許を無効にする資料探し、ベンチャーキャピタル(VC⁠⁠・コンサルは投資判断や協業先の検討など、あらゆるビジネスシーンで欠かせない存在です。

特許調査は、まさに技術と事業を動かす「縁の下の力持ち」なのです。

本書では、特許制度の基礎、調査の概要を解説するとともに、職業として特許調査に携わっている実務家へのインタビューの様子を紹介します。実務家の方々には、自身のキャリアパスや特許調査の活用場面に加え、近年発展が著しいAIの活用について語っていただきました。

また、特許調査の実務能力を評価する国内で唯一の大会「特許検索競技大会」について、その沿革を振り返るとともに、実行委員をはじめとする運営サイドの想いをインタビュー形式で掲載しています。

さらに、開発ベンダ―やAI 活用を実践する調査会社には、AI活用の現在地と予測される未来について語ってもらいました。

私たち一般財団法人 工業所有権協力センター(IPCC)は、特許庁をはじめとする国内外の顧客から累計400万件以上の調査業務を請け負う、日本最大級の特許調査専門機関です。1,000人を超えるあらゆる技術分野に精通した豊富な人材と、1985年の創業以来、特許審査を支えてきた豊富な経験に裏付けられた「技術力」⁠検索力」⁠解説力」が強みです。

2025年に創立40周年を迎え、これまでに蓄積された豊富な経験を広く社会に還元し、特許調査の役割や魅力をより多くの方に知っていただきたいという思いから、本書の制作に至りました。

本書を読めば、特許調査の世界を初めて知る方でも、⁠こんな役割があるのか」⁠こんな働き方があるのか」と感じていただけると思います。本書が、みなさんにとって特許調査の世界を知る入口となり、そして新たな興味やキャリアの可能性につながることを願っています。

一般財団法人 工業所有権協力センター(IPCC)

IPCC(Industrial Property Cooperation Center)は,1985年の設立以来,「知的財産立国への貢献」を使命に,累計400万件以上の特許調査を通じて日本の特許制度を支えてきた日本最大級の特許調査専門機関である。特許庁の審査に必要な先行技術調査を担う「登録調査機関」として日本で最初に登録された機関であり,登録調査機関の中で唯一,先行技術調査に加え特許分類(FI・Fターム)付与も請け負っている。

また,特許庁事業で蓄積した知見とノウハウを活かし,企業・大学・特許事務所向けにも先行技術調査や無効資料調査などの「IPCC調査サービス」を提供。あらゆる技術分野に精通した1,000人超のパテントリサーチャーによる,技術力・検索力・解説力を兼ね備えた高い調査品質を強みとする。

さらに公益目的事業として,特許調査の実務能力を競う「特許検索競技大会」を主催し,業界全体のスキル向上とイノベーション創出を支えている。

2025年に迎えた創立40周年を機に新たにコーポレート・メッセージを策定。
「私たちが照らすのは,発明者たちの足跡,そして未来。」

参考情報

・一般財団法人 工業所有権協力センター(IPCC)公式サイト:
https://www.ipcc.or.jp/

・「3分でわかるIPCC」
https://www.ipcc.or.jp/strengths/3minutes/