企業を取り巻く法規制や社会の期待は日々変化し、取引先や顧客の価値観も多様化しています。コンプライアンスは、「法令遵守」との訳が定着し、かつては法律を守っていればよいと、狭く捉えられることもありましたが、今日では法令を守るだけでは足りず、社会規範や倫理、多様なステークホルダーの要請に応えることが求められています。
本書は、このような広範な概念として理解されるようになったコンプライアンスを、企業のリスクマネジメントの一側面として位置付け、その最初の一歩を学ぶことを目的としています。
個人情報流出や不適切会計、食品偽装といった過去の「コンプライアンス違反」による不祥事の事例は、単に法的責任で対処するだけでは、ブランド価値の毀損や社会的信用の失墜、売上の低下や人材流出といった、事業継続に対する深刻なリスクの顕在化を防止できないことを明らかにしています。一方で、過度なリスク回避は企業のビジネスチャンスを奪うことにつながります。コンプライアンスをリスクマネジメントのツールとして正しく活用することが、企業イメージの向上、優秀な人材の確保、不祥事防止によるコスト削減といった多くのメリットを企業にもたらすとともに、適切なリスク判断に基づく果断なリスクテイクも可能にし、企業の競争力強化にも力を発揮することになります。
本書の執筆陣は、全員がプロアクト法律事務所に所属し、多数の企業の不正調査を通じて、その原因となったリスクマネジメント体制の不備を発見し、再発防止策の提言を行った経験の豊富な、公認不正検査士の資格をもつ弁護士です。本書は、コンプライアンスの基礎をPart 1 ~ 4 でひと通り学び、Part 5 ~ 6 で、具体的な違反事例や個別領域の解説を通じて、コンプライアンスの活用イメージをつかめる構成となっています。
本書を通じて、リスクマネジメントの一側面としてのコンプライアンスに触れ、読者の皆様の企業におけるより発展的な取組みにつなげていただければ幸いです。
福田恵太(Keita Fukuda)
プロアクト法律事務所 パートナー 弁護士・公認不正検査士
2008年弁護士登録,2012年クレド法律事務所開設,2025年プロアクト法律事務所入所。
企業のリスクマネジメント,不正調査に関する案件を多く取り扱う。競争法に関する案件の取扱いも多数あり,当局への対応に加えて,民間事業者間の損害賠償や差止請求の等の対応の経験も豊富。