日本全国で、日々子どもたちのために奮闘されている先生方に、心からの敬意と感謝をお伝えします。
私は、Google 認定トレーナーとして最新のテクノロジーに触れ、企業の経営者として社会の変化の速さを肌で感じ、そして二人の孫を持つ一人の大人として、彼らが生きる未来に思いを馳せています。
先生方もご存じのように、世界は今、大きな転換期にあります。私が拝見したランセット誌の地球規模の調査や、電通総研による日本の若者たちの調査では、多くの子どもたちが気候変動などの社会課題に不安を感じ、未来に対して希望を持ちにくいと感じている、という胸の痛む結果が報告されていました。特に日本の若者の未来への悲観的な見方は、世界的に見ても際立っているようです。
「将来の夢を持て」。そう私たちが願っても、子どもたちにはその言葉が響きにくいのかもしれません。
2024年に私が参加した Google for Education チームによる研修で、この大きな課題に対する一つの光を見つけました。それは、教育のあり方を少しだけ変えることで、子どもたちの目に未来への希望の光を灯すことができるのではないか、という気づきです。その想いを、先生方への応援メッセージとしてお伝えさせてください。
その核心は、生徒一人ひとりの興味関心を起点に、テクノロジーを「思考を深めるパートナー」として活用することです。
GIGA スクール構想で配備された端末や、急速に進化する生成AI。これらを、私たちはつい「知識を効率よく教えるための道具」と考えてしまいがちです。しかし、研修で示されたのは全く違う景色でした。
ある生徒は、生成AIにこう問いかけます。「進化論について、よくある誤った概念は何ですか?」またある生徒は、「この社会課題を解決するために、独創的なアイデアを提案してください」とAIと対話します。
これは、単に答えを写す「不正」ではありません。AIを壁打ちの相手にしながら、自分の考えを深め、多角的な視点を手に入れ、思考を加速させているのです。テクノロジーは、知識の暗記やテストの点数のためだけにあるのではありません。生徒が自ら問いを立て、挑戦を乗り越えていく「自分だけのストーリー」を紡ぐための、最強の武器になり得るのです。
私たちが本当に育むべき「学力」とは、テストの点数で測れるものだけでしょうか。むしろ、予測困難な社会で必要とされるのは、粘り強く課題に取り組み、失敗を恐れずに挑戦し、自信を持って自分の道を切り拓いていく力ではないでしょうか。
生徒たちが主体的に始めたプロジェクトは、たとえ小さなものでも、彼らにとってかけがえのない成功体験となり、揺るぎない自信の土台となります。そして、その生徒たちの挑戦のストーリーこそが、学校全体の希望のストーリーになっていくと、私は信じています。
もちろん、先生方がお忙しい中で、すぐに全てを変えるのは難しいことも承知しています。まずは、ほんの数人の有志の先生方と、あるいは一つのクラス、一つのクラブ活動からでも構いません。生徒たちに「何をしたい?」と問いかけ、その小さな声を拾い上げ、テクノロジーという翼を授けてみてください。
先生方は、未来の答えを教える「賢者」である必要はありません。子どもたちが自らの力で未来へ飛び立つための「最高の伴走者」です。
二人の孫の顔を思い浮かべながら、私は切実に願っています。彼らが、そして日本中の子どもたちが、「未来は暗いものじゃない、自分たちの手で創っていけるんだ」と信じられる社会を。その鍵は、日々子どもたちと向き合う先生方の、その情熱と挑戦の中にこそあると確信しています。
こうした想いを胸に、この度、本書を執筆いたしました。
本書は、ご好評いただいた『今すぐ使える Google for Education 』の続編として制作されました。2025年、GIGAスクール構想は「第2期」へと本格的に歩みを進めています。MM 総研の調査によれば、教育現場における ChromeOS? のシェアは6割を超える勢いとのことで、まさに今、教室の風景は劇的に変わりつつあります。
こうした大きな変化のなかで、これまで慣れ親しんだWindows環境から新しい世界へ一歩踏み出すことに戸惑われている先生方、そして、生成AIの登場に期待と不安の両方を感じていらっしゃる先生方も少なくないのではないでしょうか。本書は、まさにそのような先生方に向けて書きました。
私は、クラウドツールを効果的に使いこなすことは、未来を生きる子どもたちのためであると同時に、多忙を極める先生方ご自身の働き方をより良くするためにも不可欠だと確信しています。そのためには、私たちの中に染み付いた考え方を新しい時代のものへとアップデートし、新しいツールの使い方を学び直す必要があります。
なぜなら、私たち大人は、そのやり方を学校で習ってこなかったのですから。
本書が、先生方にとってその学びの旅路を照らす、信頼できる一冊となることを心から祈っております。