著者の一言

筆者はよく、最新の攻撃動向や脅威と対策のセミナーや記事執筆などをしていますが、実際にランサムウェア攻撃の背景から最新動向と対策までをまとめた書籍が少ないことは常に気にかかっていました。今回、このような形で本書をまとめることができ、深い安堵と喜びを感じています。

ランサムウェア攻撃を含めたサイバー攻撃は日々進化し続けており、本書はあくまでも執筆時点での最新動向に過ぎません。特に最近のAIによる進化は、攻撃する側にとって圧倒的な省力化と高度化をもたらしており、対策する側で費やす労力との不均衡がさらに目立つ形になっています。事実、JADEPUFFERをはじめとする「Agentic AI(自律型AIエージェント⁠⁠」を悪用した、人間の手を一切介さずに偵察から侵入、暗号化にいたる一連のランサムウェア攻撃を自律的に完結させるサイバー攻撃キャンペーンもすでに発見されています。本書で解説している攻撃プロセスは「人間のハッカー」を想定していますが、今やその主体はAIへとシフトし始めているのです。

しかしどれほど攻撃が進化しようと、私たちが成すべき基本的な対策の本質は大きく変わることはありません。AIが突いてくる脆弱性や設定不備、また狙われる資産などは以前と変わらないためです。本書を手に取ってくださった方々には、ぜひ本書で得た知見をベースにしていただき、日々アップデートされる最新の情報を貪欲に取り入れ、進化し続ける脅威に立ち向かっていただきたいと願っています。本書がみなさまの組織を守る対策の一助となれば幸いです。

面和毅(おもかずき)

サイオスグループ上席執行役員

サイオステクノロジー上席執行役員。オープンソースソフトウェア(以下,OSS)のセキュリティ専門家として20年以上の経験があり,主にOS系のセキュリティに関する執筆や講演を行う。外資系を中心に,ユーザ企業やベンダー等,様々な立場を経て知見を深め,CISSP(国際的に最も権威あるセキュリティプロフェッショナル認証資格)を2012年に取得。2015年からサイオステクノロジーのOSS/セキュリティエバンジェリストとして活躍し,セキュリティに精通するエンジニアであれば一度は目を通すと評される「SIOSSECURITY BLOG」を連載中。

『サイバー攻撃から企業システムを守る!――OSINT実践ガイド』(日経BP/2023年)などの著作がある。