OSの表面的な操作に精通し、文法を学んでプログラミングを学習しても、根本的にはどのような原理でコンピュータが動くのかという点への理解が欠けていると、実際のところ複雑巨大なシステムでの問題対処がままならない。…そんな事情を受けて、“コンピュータとはつまるところなんぞや?”という書籍群の人気が根強いのもうなずけます。とっつきやすさを狙うため、誌面に工夫をこらした書籍も多々あります。しかしここで難しいのは、「実用」に耐える理解が得られるかどうかということ。易しさを装った解説に、かえってケムに巻かれた経験はありませんか?
本書は情報処理学を専攻する学生、業務でIT業界に携わる方、意欲的な一般読者に向けて、まさに正攻法で書き下ろされた、コンピュータの動作原理の解説書です。ステップ・バイ・ステップで、すべての章が前章までの知識があれば必ず読み進められるよう、注意を払ってあります。
この一冊で、0/1の表現法から出発して一気に処理の手順(アルゴリズム)までをカバー。ハードウェア/ソフトウェアの両分野を、コンパクトに俯瞰します。第1部ではディジタル回路、機械命令の実行…と、まず物理・ハードウェア面からの理解に努めます。続く第2部で、第1部での知識を前提に、アセンブリ言語→高水準言語→アルゴリズムの代表例まで見ていきます。
また、情報処理技術者試験の対策学習時などに、避けて通れない事項についても言葉を尽くしてあります。たとえば、論理関数の論理回路での実現(NOT、AND、ORは、NANDかNORだけで実現できる)、浮動小数点の正規化、また固定小数点や浮動小数点演算の詳細など、わかっているようでやはり苦手!と思う受験者には、確実に理解したい際のリファレンスとしてお勧めです。
もちろん、プログラミングの実践等については、引き続き他書籍を参照いただくことになります。が、すでにここで扱うトピックをいくらか学習された方も、本書を通読することで、その理解が一本筋が通ったものになることを願ってやみません。