渋滞を分類してみよう

一口に「渋滞」といっても、実は様々なものがあります。車の渋滞はもちろんのこと、私達も人込みの中では渋滞に巻き込まれている、という感じがしてイライラしますよね。

実はアリも一匹でうろうろしているときと、行列を作って皆で歩いているときは、その速さが違います。もしもアリと会話ができれば、彼らはきっと「今ちょっと混んでいるなぁ」などとつぶやいているかもしれません。さらに広く世の中のいろいろなことに目を向けてみましょう。工場で在庫がたまるのも渋滞、インターネットやケータイがつながりにくくなるのも渋滞、さらに我々の体内の血液の流れが悪くなるのも渋滞といえるでしょう。世界は渋滞だらけなのです。

それでは、これら様々な渋滞をちょっと分類して頭を整理してみましょう。

実は大きく以下の3つに分けて考えるとわかりやすいのです。

1)ボトルネック型渋滞

ボトルネックとは、ビンのくびれのように細くなった部分を指す言葉です。広い道が急に狭くなれば、もちろんそこで流れが悪くなります。これは車にとっては、道路の事故や工事、または違法駐車などである区間だけ狭くなっている状況です。

当然ですがここを先頭に渋滞が発生しやすくなります。トンネルは道幅が狭くなっているわけではないのですが、心理的に圧迫感があるためやはりボトルネックといえます。

さらに、流れを絞ってしまう場所という意味では、料金所や信号機などもボトルネックです。また、スピードが遅くて車高の高いトラックなどは、後ろの車にとっては「動くボトルネック」となります。人にとってのボトルネックとは、出入口など、幅が狭くなっている通路の部分になります。さらに工場の生産ラインでは、人が並んで様々な流れ作業をしていますが、作業の遅い人や複雑な工程の手前にはやはり製品がたまりやすくなります。

また、体内で血栓というボトルネックができれば、そこで血液の流れが悪くなり脳梗塞などの危険が高くなります。この型の渋滞は、原因がはっきりしているため、一般にその原因を取り除けば渋滞は解消します。

2)自然渋滞

特に原因がはっきりとわからなくても渋滞が発生することがあります。これをまとめて自然渋滞と呼んでいます。これが一番やっかいな渋滞で、実は日本の高速道路の渋滞原因の第1位なのです。

近年の研究により、自然渋滞はちょっとした上り坂で起こりうる、ということがわかってきました。運転手がこの上り坂に気がつかないと、アクセルはそのままなので少しスピードが落ちてしまいます。すると、後ろの車は軽くブレーキを踏み、さらにその後ろの車はより強くブレーキを踏み…というような連鎖反応が起こります。最初の車の何気ない減速が数十台後ろの車をストップさせてしまうので、事故もないのに何で止まるんだろう、となるわけです。

この実験をしたのが図1です。ただの円周上を車が走っているだけなのですが、車がある程度多い場合、ちょっとしたきっかけでこの自然渋滞が発生します。坂などなくても誰かが少し無意識に減速するだけで十分なのです。誰かのちょっとした減速が最終的に車を止めてしまう瞬間を捉えた貴重な写真をご覧下さい。

3)ダンゴ型渋滞

バス停でバスを待っていると、同じ方向のバスが2台続けて来た、という経験を持っている人も多いと思います。実はこれがダンゴ型の渋滞なのです。また混んでいる電車のあとに空いている電車が来ることもしばしばあります。混んでいる乗り物が、大名行列のようにその後ろに空いている乗り物を従えて動くのがダンゴ型渋滞です。

このような渋滞は、電車やエレベーターなど、乗り降りを伴う交通システムに共通に発生してしまうものです。

そしてアリの行列でもこのダンゴ型渋滞が起こることが最近の研究でわかってきました。図2がそのアリのダンゴ渋滞の様子です。この渋滞の秘密は本書に書きましたので是非そちらをご覧下さい。

以上、渋滞の分類を見てきましたが、流れがあるところには必ず渋滞があるのです。

そして渋滞が発生するしくみを知って、一人一人がちょっと工夫すれば渋滞を解消することだってできるのです。これからは渋滞とうまくつきあって、渋滞ストレスのない世の中にしていきたいですね。

(西成活裕)