パソコンの自作はマニアだけの楽しみではない

カスタマイズすらできないメーカー製デスクトップ

かつての自作パソコンは自動車のカスタマイズに通じるものがありました。マニアのごく一部が既製の車にあきたらず、⁠裏技を導入しながら最高の性能を目指す」というイメージだったのです。しかし、現在の自作パソコンはむしろ「部屋に合わせたオリジナルの家具を作る」ような感覚に近づいています。部屋のサイズやインテリアの雰囲気にぴったりの家具を作るのと同じく、自分の用途や目的にぴったりのパソコンを自作するのです。

大手メーカーの既製品は、誰でも簡単に扱えるように工夫はされていますが、自分にとっては不要なソフトがいっぱい入っていたり、逆に欲しい機能は追加できなかったりします。ショップで最新機種を見ると、ディスプレイが選べなかったり、デスクトップタイプなのに拡張スロットが一つもなかったりするものまであるのです。

自作なら用途や目的に合わせて、CPUやメモリー、ハードディスクの容量を思い通りに決めることができます。予算を合理的に配分できて、将来的に性能面での不足を感じたときは、弱い部分だけを強化することも簡単です。メーカー製パソコンではせいぜいメモリーの増設ができるくらいで、内蔵ハードディスクを交換するのも大変です。

パソコンが日常生活品となって、自分のライフスタイルに合ったものを選びたいという合理的な思考の人が増えたことが、自作が一般化している理由の一つでしょう。

パーツの強化ポイントは時代とともに変わってきた

自作マシンのパワーアップのポイントは時代とともに変わってきました。今、私が仕事に使っているマシンは10年くらい前に組み立てたもので、最初のCPUは確かPentiumIII 450MHzでした。そのころはハードウェアの性能でソフトウェアのレスポンスが大きく違ってきたので、しばしばCPUやマザーボードを交換していました。インテルとAMDの開発競争も激しく、CPUの動作周波数が右肩上がりで伸び続けた時代の話です。

しかし、今ではビデオ編集やゲームでもしない限りはパワーが不足することはありません。この3年くらいはメモリーやハードディスクを増設したくらいで、現在でもAthlon64 3000+という古い世代のCPUを使っています。おそらくWindows Vistaを導入するとき、CPUやマザーボードもアップグレードすることになるでしょう。

反対に最近手を加えたのがディスプレイです。24型を超える大画面液晶が安くなってきたので、思い切って30型ディスプレイに買い替えました。解像度は2560×1600ドットという広大なもので、15型(1024×768ドット)の4倍以上の情報量を表示できます。たくさんのウィンドウを開いても重なることがなく、作業の効率が飛躍的に向上しました。もし今「20万円で好きなパーツを買っていい」と言われれば、もう一台30型液晶を買い足して2台でマルチディスプレイ環境を作りたいと思うほどです。

ディスプレイならつなぎかえるだけと思うかもしれませんが、メモリーの増設やディスプレイの交換といった基本的な作業にもハードウェアの知識は必須です。たとえば、30型液晶は「デュアルリンクDVI」という規格で接続するため、未対応のビデオカードにつないでも表示できません。以前に比べると確かに自作パソコンについての情報も豊富になり、気軽に挑戦できるようになりました。しかし、トラブルが起きたときは自力で原因を突き止め、解決する必要があることを忘れることはできません。

ビデオカードを自分で選べる自作パソコンならマルチディスプレイも簡単に実現できる。VistaのAeroを快適に使うにはメモリーやビデオカードの能力に余裕を持っておきたい