「デザイナー」と呼ばれる職業の中でも、雑誌や書籍、広告、ポスターなど、主に紙媒体のデザインをする人たちが「グラフィックデザイナー」です。
PhotoshopやIllustrator、InDesignといったアプリケーションを使ってのデザインテクニックを紹介する本は各種発売されていますが、プロフェッショナルとして、グラフィックデザイナーは具体的にどんな仕事をしているのか? 仕事のサイクルは? 考え方は? など、仕事の実際について解説している本はあまりありません。
グラフィックデザイナーは、雑誌や書籍なら編集者、広告なら広告代理店やスポンサーから依頼を受けて仕事をすることになります。つまり、グラフィックデザイナーに限らず、デザイナーという職業は「受注産業」であるということを理解することがまず必要です。これが理解できないと、しばしばあるクライアントからの理不尽な要求にうまく対応できません。また、作品はデザイナーひとりで作るわけではなく、デザイナーはチームの一員、という認識も大事です。
仕事の内容や要求が自分の美意識やプライドに合わない場合、仕事を断る人もいますが、これはそのグラフィックデザイナーさんのスタンスによります。もちろん、プロですから仕事を受けるデザイナーのほうが多いのですが、これはどちらが間違っているという問題ではなく、グラフィックデザイナーとしての生き方の違いでしかありません。
現実の厳しさに直面するとめげてしまいがちですが、それでもグラフィックデザイナーが仕事を続けられるのは、やはり自分の作品を世に出したいというクリエイターとしての欲求が高いからでしょう。それに、自分がデザインした作品が市場に出たときのうれしさは、クリエイターならでは。そしてなにより、仕事を楽しいと感じるから続けられるのです。
このような、デザインテクニックではなくプロフェッショナルとしての仕事の進め方や考え方、将来の目標などについて、わかりやすく解説しているのが「グラフィックデザイナーの歩き方」です。つまり、グラフィックデザイナーになるにはどうしたらよいか?ではなく、グラフィックデザイナーになってからどう生きていけばいいのか?を解説した本なのです。
「グラフィックデザイナーの歩き方」では、架空の新人を主人公として設定し、アシスタントから独立するまでを疑似体験できるように構成しています。実在の雑誌や書籍、広告などの例が具体的に出てきますし、一線で活躍されているグラフィックデザイナーにも出演していただいておりますので、とても説得力があります。これからグラフィックデザイナーを目指す人だけではなく、プロになりたての人にとっても、自分の仕事を確認するのにピッタリな一冊です。