「最新の技術よりも、大切なことがある」という言葉は、技評SE新書を創刊した際に、このシリーズ創刊の意義を表すフレーズとして使用したものです。創刊から2年が経過し、全体で16万部を突破する大人気シリーズとなった現在でも、技評SE新書はこのフレーズの趣旨に基づいて発行され続けています。
その意味するところは、「ITに携わるSEの仕事では、最新の技術が重要なのは当然であるが、それだけでは業務システム開発は成功しない。業務システム開発を成功させるには、顧客やプロジェクトメンバーとのコミュニケーションやマネジメント、顧客ビジネスの理解、さらには技術の背景に関する深い理解や、日々仕事に向かうにあたっての心構えや基本姿勢なども欠かせない要素である」という点にあります。 『ビジネスの基本を知っているSEは必ず成功する』は、この中でも特に「顧客ビジネスを理解することの重要性」に焦点を当てた一冊です。
何のための開発なのか
業務システム開発を発注する側の企業としては、「ビジネス成果を向上させたい」「そのためにITを活用したい」「しかしITのことはよくわからない」という状況にあるのが一般です。
この状況において、担当SEがITについて詳しくなかったら顧客の期待に応えられないのは当然ですが、たとえITに詳しくても、顧客業務について詳しくなかったら、やはり顧客の期待に応えられないことになります。
重要なのは、顧客企業にとって業務システム開発の目的は、単なるITの導入ではなく、それによるビジネス成果の向上にあるのであって、ITの導入はその目的達成のための手段にすぎないということです。
そして、仕様変更のかなりの部分が、こうしたビジネス成果との関わりの中で発生します。そのため、SEが顧客業務をよく理解して、顧客の欲求を理解できるようになれば、顧客に先んじて要求を提案できるようになります。
つまり、実装の段階で一つ一つの仕様変更に場当たり的に対応するのではなく、もっと上流の要求定義などの段階で予測して提案することにより、後で変更しなくてすむようにするのです。
これが実現できていないことが、現在の開発現場における混乱の大きな原因となっています。上流工程での失敗のツケが、現場の作業者にまわってくるという構図です。
SE必読の書
本書は、「業務システム開発の目的は、最新技術の適用ではなく、顧客業務の改善である」という哲学に基づき、SEの仕事をあらゆる角度から分析しながら成功への道すじを示す、SE必読の書です。