「満足いく装丁」にするにはどうすればいい?
編集者が本を作るうえで最も悩むのが「装丁」です。確固としたイメージがあって、デザイナーの方にうまくコンセプトを伝えたつもりでも、できあがったデザインに「うーん……」と頭を抱えたり、著者の方から「イメージと全然違うじゃないですか!」とダメ出しをいただいたり。作り手全員が「これならいける!」と思ったものが、読者の方には不評だったり……。
7/9に発売された『問題は「数字センス」で8割解決する』では、この問題を少しでもうまく解決するために、できる限りの工夫をしてみました。
まず、著者の望月実さんと書店で打ち合わせ。「企画のイメージに近い装丁はどれだろう?」と実地テストをして、お互いの感覚のズレを確認(必ずしも「埋める」わけではありません)しようという意図です。
ブラインドでいくつか選んだところ、選ぶ本はお互い違っても、デザイナーの方は意外と同じことが多いと気づきました。そして、最も多かったのが竹内雄二さん。今まで数々のすばらしいデザインを生み出してきた方ですし、公平なやり方で話を進めたので、お互い文句なく合意できました。
人選が決まったら、次は依頼です。通常は、編集者とデザイナーの方だけで詳細を詰めていくことがほとんど。しかし今回は、望月さんにも同席していただき、3人で打ち合わせをしました。著者である望月さんから「どうしてこの本を書いたのか?」とアツーく語っていただくことで、本に込められた意図やエネルギーを100%、ロスなくお伝えするためです。さらに万全を期すために、竹内さんに原稿に目を通していただきました。
依頼が終わったら、いよいよ完成を待つばかり。竹内さんから届いたデザインを見た瞬間「ええっ、こうきましたか!?」と驚いた一方、「余白の使い方が竹内さんらしくて、遠目でも目立つし、時間がたつと不思議と親しみが出てくるなぁ」ととても好印象でした。望月さんにも「数字のニュートラルなイメージと緑色は合っているし、“?”と“!”という数字のようにだれでもわかる記号で「問題解決」を表しているのもこの本らしくていいですね」と気に入ってくださることができました。
そうはいっても、「読者の方にも受け入れていただけるのかなぁ?」と、やはりまだ少し不安がありました。そこで、望月さんのネットワークで読者になり得る方にフィードバックをいただいたところ、男女問わず好印象。その事実で迷いを振り切って、Goサインを出しました。
大事なのは「目標の共有」と「コミュニケーション」
今回気をつけたのは、依頼の前に「どんなことを伝えたいか?」「だれに伝えたいか?」「なぜ伝えたいか?」をはっきりとさせたことです。そして、関係してくださる方全員で、できる限りの範囲でコミュニケーションをとろうと努めました。もちろん、読者の方全員とお話しできたわけではありませんし、不確実なところは残ります。ただ、全員にとって満足のいく結果に、少しでも近づけたと思います。
この話、一見数字とは関係ありませんが、『問題は「数字センス」で8割解決する』でお伝えしていることそのものだったりします。
デザインは目に見えるので、まだゴールを共有しやすいのですが、普通の仕事では「もっと売れる方法を考えろ!」といった漠然とした問題を解決しなければなりません。しかし、漠然としているため、「こうすればいいはずだ!」「いや、自分はこう思う」と意見がまとまらないこともしばしばです。よかれと思ったことがじつはまちがっていたりすることもあります。最後に判断するのは人間の感性ですが、一見はっきりしている意見でもじつはあいまいなところが多かったり、なかなか自分の“思い込み”から自由になれなかったりします。
そんなとき、うまく数字を使えば、目標を明確にし、みんなですばやく共有することができます。たとえば、「売れる」というあいまいな目標を「利益を2倍」などときちんと定義します。さらに「~と~を~%アップすれば利益が2倍になる」と「2倍」になる条件をはっきりさせれば、できることが見えてきます。そこまでいけば、仲間と力を合わせてアイデアを出せるようになります。そして、アイデアを実行しながらお客さんときちんとコミュニケーションをとって確認すれば、より良い成果が手に入り、ハズレが少なくなります。多国籍・外資系企業で「数字」が重視されることが多いのは、まさに「世界共通言語」としてコミュニケーションに威力を発揮するからでしょう。
『問題は「数字センス」で8割解決する』には、上記の話をはじめ、「読む」「考える」「伝える」3つの力を高めて数字と仲良くなれるヒントが満載。身近なニュースや仕事の問題を例にお話ししているので、すぐに役立つものの見方・考え方が身につきます。