NGNがネットワークの世界を変える

NGNってなに?

NGNはNext Generation Network、次世代ネットワークの略です。IP技術を使った電話網で、現在の電話交換網(PSTN)に代わるものと位置づけられています。

現在の電話交換網は老朽化する一方、新たな投資は行われていません。高価なうえ、機器を扱える技術者は限られています。費用の面と専門技術者確保の面で不利な状況にあるからです。しかし、機器の耐用年数が近づいてきて、更新の必要性に迫られています。

NGNが誕生した背景には、こういった通信環境の変化があげられます。NTTグループは2002年に発表した3 ヶ年計画で、既存電話網への新規投資を停止し、IPネットワークへの移行拡大を宣言しています。また、こういった事情は、海外でも同様で、ETSIやITU-Tでの標準化が行われています。

NGNは固定電話の置き換えだけでなく、携帯電話、データ通信、放送のシームレスなサービス連携を実現する、という特徴をもっています。

例えばテレビ電話や高品位の映像配信など、通信網に新しい機能・サービスを付加し、その利用料を収益源とするなど、通信サービスの機能を解放して第三者の新サービスと収益を生みだすプラットフォームとしても期待されるのです。

NGNとインターネットの違い

NGNはインターネットとは大きな違いがあります。その一つがセキュリティです。電話網は「ユニバーサルサービス⁠⁠、いわゆる社会基盤となっており、信頼性と安定性が求められます。

もう一つが「品質」です。既存の電話網は通話が集中していても、110番や119番などの緊急通信を優先的に接続します。こういったサービスを保証することは、社会基盤として不可欠と言えます。

一方、さまざまな機器がつながった現状のインターネットで、緊急を要する通信を所定の時間内に必ず到着させることや、通信に必要なリアルタイム性を保証することは困難です。

NGNを構成する技術

NGNは社会基盤としての面があるため、通信システムに新技術を全面的に採用するのは大変危ういことです。しかし、枯れた技術ばかりでは、将来対応できなくなる恐れがあります。将来の拡張性があり、かつある程度は成熟している必要があります。そこで採用されたのがSIP、IMS⁠、IPv6といった技術になります(下参照⁠⁠。

つまりNGNは、既存のネットワーク技術を使いつつも、安心と安全を実現している、次世代のネットワークといえるのです。

SIP(Session Initiation Protocol)

SIPは通信可能な関係を確立するためのプロトコルです。機能が明確で理解しやすく、高い柔軟性と拡張性を備えています。IP電話のような1対1の通信だけでなく、複数参加型のマルチメディア会議などにも利用できます。ただし、音声や動画などの転送は、RTP(Real-timeTransport Protocol)などと連携して実行します。

IMS(IP Multimedia Subsystem)

IMSは、FTTHや無線LANなどのアクセス網に依存せず、IPベースのマルチメディアサービスを提供します。もとは欧州で標準化され、導入されたシステムです。第3世代移動通信システムの技術仕様策定プロジェクトGPPから最初のリリースがでました。なお、MMDはIMSとほぼ同様の規格で、第3世代携帯電話の標準化団体3GPP2からリリースされています。