去る10月に、ノーベル物理学賞が発表されました。“素粒子物理学と核物理学における自発的対称性の破れの発見”に対して南部陽一郎氏に、“クォークが自然界に少なくとも三世代以上あることを予言する、対称性の破れの起源の発見”に対して小林誠氏と益川敏英氏に贈られました。とはいってもなんだかピンとこない、という方も多いのではないでしょうか?
「素粒子」とは“物質を構成する最小の粒子”のことです。そういうと「原子」という言葉が思い浮かぶでしょうか。しかし原子は「原子核」と「電子」で構成され、さらに原子核は「陽子」と「中性子」に分解されます。そして陽子や中性子を分解すると「クォーク」が出てきます。これが現在わかっている最小の粒子です(※)。
このように物質の根源を明らかにするために、これら素粒子のあいだに働く力を数式で表すのが素粒子物理学の目的のひとつです。目に見えないミクロの世界を探求する学問ですが、これが宇宙の創成にかかわる研究に結び付くのですから驚きです。自然界には「重力」と「電磁気力」が存在することが知られていましたが、素粒子の研究により、素粒子のあいだに働く力として「強い相互作用」と「弱い相互作用」の2つが存在することがわかりました。いまのところ自然界に存在する力はこれら4つしかないと考えられています。そして、いまから137億年前の宇宙創成時には4つの力は統合されており、時間がたつにつれて分裂したというのです。ミクロの世界の話かと思いきや、なんと壮大な物語へとつながっていることでしょう。
本書は素粒子物理学に興味を持っていただくための「最初の本」となるべく発刊したものです。難しい数式も登場しますが、それらを読み飛ばしていただいても素粒子の基本はおさえられるようになっています。逆に物理や数学を専攻している方にとっては、数式があることでより深い理解が得られるでしょう。もちろん、対称性の破れやクォークが三世代あることを主張した小林・益川理論についても解説しています。話題の素粒子について、本書でその一端にふれてみてはいかがでしょうか。
- ※)
- 陽子や中性子を素粒子に含む場合もあります。