どう変わる? 情報処理技術者試験

日本で最大規模の国家試験である情報処理技術者試験は、平成21年4月試験より、試験の統廃合も含めた大きな改定が行われます。7年ぶりの改定となる今回、果たして試験がどう変わるのか、試験センタからの発表を元に、解説していきます。

制度改定の方向性

全試験に共通する制度改定の考え方としては、大きく2つの柱があります。

まず、これまでの試験ではユーザ側人材とベンダ側人材向けの試験に分かれていましたが、今後はこれらを分けるのではなく一体化した試験体系となります。これは、ユーザ側人材も技術的な知識を、ベンダ側もユーザの業務についての知識を相互に持つべき、という考えに基づくものです。

また、共通キャリア・スキルフレームワーク(客観的な人材評価のための職種(キャリア)とスキルを示した枠組み)に準拠した試験制度となりました。共通キャリア・スキルフレームワークは、IT系人材に求められる知識・技能レベルを7段階に分けていますが、このうちレベル1からレベル3までのレベル認定が、情報処理技術者試験(レベル4については情報処理技術者試験+業務経験)によってなされることとなりました。

具体的な新試験の体系

新試験の全体像を見てみることにしましょう。新試験の体系は下図のように全12区分となっています。

 試験の体系図
図 試験の体系図

それぞれいったいどんな試験なのか、また旧試験とどう変わったのか、もう少し詳しく見てみることにしましょう。

ITパスポート試験の新設と初級シスアド試験

新しくレベル1試験としてITパスポート試験が開始されます。出題は多肢選択式100問のみとなり、初級シスアドの午後試験に当たる長文問題がなくなりました。このためかなり受験しやすくなったといえます。

内容としては、⁠すべての職業人が共通に持っているべき情報技術に関する基礎知識」が問われます。これから就職活動を迎える学生の方や、若年の社会人の方、また、情報技術の基礎的知識を整理しておきたい方、新試験で腕試しをしてみたい方、ぜひ挑戦してみてください。

なお初級シスアド試験は発展的解消となりますが、経過措置として平成21年4月も実施されます。⁠ITパスポート試験」よりももう少し歯ごたえがある試験にのぞみたい方、これまで涙を飲んできた方、次回の試験がラストチャンスです! このチャンスを逃さずに、合格を勝ち取りましょう。

基本情報技術者試験は範囲が広がる

レベルは旧制度と同様。試験範囲は、マネジメント系やストラテジ系を追加し幅広い分野からまんべんなく出題されます。ただ、午前試験に関してはこれまでもマネジメント系・ストラテジ系の問題が出題されていたので、そう大きく変更はないと予想されます。

さらに、午後問題のプログラミング問題の出題比率を下げ、プログラム言語以外の問題(表計算を題材として論理的思考力を問う問題)を選択できる方式とされます。このため、ソリューション系だけでなく基本戦略系人材やユーザ側人材にとっても受験しやすくなったといえるでしょう。

ソフ開は応用情報技術者試験に名称変更

旧来のソフトウェア開発技術者試験が、応用情報技術者試験と名を改めます。また、午前の試験範囲にはストラテジ系が、午後の試験範囲はマネジメント・ストラテジ系が追加されます。

また、これまでは午前、午後I、午後II試験と3つに分かれていましたが、新試験では午前・午後試験の2つとなります。午後試験は記述式ですが、必須問題はなくなり、試験問題を選択して解答します。専門分野の方向性によって午後問題が選択できることになります。

情報セキュリティスペシャリスト試験

情報セキュアドとテクニカルエンジニア(以降TE)情報セキュリティが統合されます。レベル4の高度試験の位置付けとなり、試験範囲は、2つの試験を統合したものとなりますが、レベル4試験のためTE(情報セキュリティ)試験寄りの試験内容となります。

ITストラテジスト試験

システムアナリスト試験と上級シスアド試験が統合されます。試験内容は現行のシステムアナリスト試験に経営寄りの分野を追加したものとなります。

システムアーキテクト試験

現行のアプリケーションエンジニア試験に比べて範囲が拡大されます。

ITサービスマネージャ試験

TE(システム管理)に、マネジメント面を補完した内容となります。

システム監査技術者試験

現行の試験に、技術面を補完した内容となります。

その他の高度試験

プロジェクトマネージャ試験は現行試験と変更はありません。TE(ネットワーク)はネットワークスペシャリスト試験に、TE(データベース)はデータベーススペシャリスト試験に、TE(エンベデッドシステム)はエンベデッドシステムスペシャリスト試験に名称が変更されますが、試験内容は変更ありません。

免除制度

レベル4の高度試験は、高度試験に共通して必要とされる午前I試験と、専門的な知識を問う午前II試験に分かれます。また、①応用情報技術者に合格した人②いずれかの高度試験に合格した人③いずれかの高度試験の午前1試験で基準点以上の成績を得た人は、その後2年間、午前1試験の受験が免除されます。

免除制度には経過措置があり、旧試験でのソフトウェア開発技術者試験合格者は①の扱いに、システムアナリスト・プロジェクトマネージャ・アプリケーションエンジニアの合格者は②の扱いとなります。

なかなか一発合格は難しい高度試験ですが、この措置で、専門分野の学習に専念できることになり、利便性が増したといえるでしょう。高度試験受験の奨励策というわけです。

新しい試験の開始時は、試験問題の難易度が比較的抑え目にされていることが多く、実は受験のチャンスでもあります。

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