8月に発売された「仕事脳を強化する記憶HACKS」。既に多くの方にご愛読いただき、ネット上にはたくさんの書評が掲載されております。本稿は、そのなかから当社のコンテンツサイト「gihyo.jp」の連載陣でもある堀 E. 正岳氏のブログLifehacking.jpで紹介いただいた記事を、電脳会議版として掲載するものです。10月には当社より、堀氏・佐々木氏共著の「iPhone情報整理術(仮)」が発売される予定です。こちらも楽しみにお待ちください。
「記憶を外部化する」などというと、「攻殻機動隊」の世界の話かと思われるかもしれませんが、もうずいぶん前から人間は記憶を外部に格納しています。私がユビキタス・キャプチャーに使っている Moleskine手帳がそうですし、Evernoteがそうですし、そもそも人類の知的財産のほとんどがそれにあたります。
データを記憶すること自体にもはや意味はあまりありません。ネットで何でも調べられる現代は特にです。
むしろ必要な情報を引き出せるように、
- 効率的な記憶の外部化
と、
- それを引き出すための「上手な質問の作り方」
の方こそ、現代の記憶術に必要なものなのです。
そんな「記憶の外部化」についてライフハックの視点からまとめあげたのが、「記憶HACKS」です。
誤解をおそれずに書くと、この本は「脳を鍛えて記憶力を強くする」といった安易な方法にページを割いてはいません。むしろ、持ち前の記憶力を最大限活かすための外部ツールの活用法がこれでもかと並べられています。そしてそちらこそが、実際の「記憶力」であるのです。
章立ては仕事で記憶を用いるポイントにあわせて分けられており、「タスクの外部記憶化」「スケジュールの外部記憶化」「学習の外部記憶化」といった場合に利用できる IT ツールが数多く紹介されています。
この本の一番の魅力は、さまざまなシチュエーションにおいて「情報の外部記憶化」を実現してくれる数々のサービスを、それぞれ「このサービスが有効になるワークスタイル」という視点で紹介している点です。
GMail、Remember The Milk、 OmniFocus、Evernoteといったものから、もっとマイナーなアプリケーションに至るまで、数多くの ITツールが紹介されているのですが、それぞれについて「これを使って記憶を解放するための戦略」が述べられているわけです。
また、必読なのはこれらのツールを使いこなすうえで耕すべきなのが「メタ記憶」、つまりは「記憶に関する記憶」なのだということを説いている部分です。
記憶を外部に格納して、普段は安心して忘れていたとしても、必要なときに「忘れていたことを思い出せる」ようにしなければ意味はありません。そのために「思い出すべきことを引き出すキーワードを思いつけるか」が肝心になるのです。ネット時代の記憶術は「答えを導く質問を考えつくこと」、英語で言うなら、Asking the right questionだというわけですね。
本書ではさまざまなツールで、そうしたメタ記憶を構築するための方法についてもヒントが数多くあります。「記憶力とは、暗記力」と思い込んでいた人は、ぜひ本書を読んで「ツールを使って記憶を外部化」「大事なことだけを暗記する」という哲学に従って、自分に合った補助ツールを利用する戦略をねってみてください。