巷にはWindowsの解説書があふれています。中には高度な内容を持つものもありますが(たとえば小社刊『Windows 7 上級マニュアル』)、ほとんどは起動から終了に至る過程を中心に操作方法を説明していく方式のものです。ちょっと書店に足を運べば、このことは、すぐにわかるでしょう。
もちろん、初めて触るソフトの使い方を知ることは大事です。むやみにいじくり回し、へんな結果を招いて泣きを見ないためにも、その勉強はすべきでしょう。しかし、画面に現れているメニューに従って覚えていくというのがベストの方法かと言われると、大いに疑問です。
この世の中の物事には必ず原因と結果があります。たとえば、入口のドアに激突したから前歯が折れた、というようなことです。人間は、結果とワンセットで原因を覚え込み、それが痛いことであったなら二度と痛い目を見ないように気をつけるものです(一部に、そうでない人もいますが……)。
ちなみに、どんな原因でも、どんどん遡ることができます。ドアに激突したのは全速力で走り込んだから、走っていたのは薬缶を火にかけたままだったことを思い出したから、薬缶を火にかけたままだったのは……という具合です。今後はドアに激突しないよう家に走り込むのは止めましょうというのは、最も近くにある教訓です。しかし、本当は、そんなことが問題なのではありません。むしろ、薬缶を火にかけたままだったということの方が問題とも言えるでしょう。今回は、たまたま思い出したので前歯を折る程度で済みましたが、そのことを思い出さなかったならば、確実に家は丸焼けになっていたはずです。
まわりくどいことを言いましたが、メニューから操作を覚えていくというのは、直前の原因を知るということに過ぎません。本当のところは身につかないので、予想外の事態が発生したときには、もうお手上げになってしまいます。それに対して、本書は「遠くの原因」を理解してもらえるように作られています。分量はありますが読みやすいので、少しずつでも読み続けていけば、間違いなく実力が身につきます(家を丸焼けにせずに済みます)。この際、原因と結果をセットにして、確かな知識を吸収してください。(急がば回れ)