機械設計⁠モノづくりの喜び⁠エンジニアの心得

空を飛ぶ道具や宇宙を旅行する乗り物などは、それらが実際に存在していなかった頃から、数多く描かれてきました。また、たとえ実現不可能でもアニメーションの世界で活躍するロボットを頭の中で設計(空想)した経験のある人は多いことでしょう。

人類は試行錯誤と経験の蓄積によりこのような夢を実現してきました。機械を設計することは人類の過去からの知恵を用いて夢を具体化する創造的な作業なのです。このような夢を持って機械設計の勉強を始めましょう。

エンジニアにとっての喜び

例えば高齢化社会を迎え、介護ロボットへの関心が高まっている昨今、苦しみから解放する道具、介護作業を補助する道具などが求められています。エンジニアはこれらの要求に、どのような部品、材料、装置が必要になり、それを組み立て、動かす場合の機構はどのようにすればよいか、安全で快適な構造はどのようなものか、安価に製造するにはどのような方法があるのか、等を考えなくてはなりません。設計するときにはこのように考えなければならないことが多岐にわたります。全てを実際に試してみることができないので、机上でアイデアの試行錯誤を繰り返すことになりますが、これが機械の設計です。

これらの作業の中で、アイデアを形にする作業が設計において重要になります。この作業は、決して一朝一夕に実現できるものではありません。なかなかうまくいかずに苦しい日々が続くことも多々あるようです。ですが、ユーザの苦しさから解放された時の笑顔は、エンジニアにとってこのうえない喜びでありやりがいであることはいうまでもありません。

エンジニアの心得(機構を正しく理解するために)

世の中で、要求されるさまざまな機能には、それに応じて最適な機構が存在するはずです。設計者は、その機構を正確に理解することで「正しい設計を行う」ことができ、幅広い知識を習得することで「より高機能の設計を実現する」ことができるようになります。

そこで、日頃より機械の内部への関心を持ってください。どのような機構を利用しているのか、なぜこのような機構なのか、と意識して考えてください。残念ながら最近の機械は安全上の配慮から、内部の構造が見難く簡単に触れることができないようになっています。私たちはとかく機械の一番美しい部分を見ずに外観の形に目がいってしまいます。だから意識的に機械の内部に関心を持つ必要があるのです。このことは、人間の魅力を知ることに似ていませんか? 内面(機構)を知ると美しさ(面白さ)が分かり、さらに設計に対して興味がわいてきます。工場の片隅にある無骨な機械の美しさが分かるようになったら、もうあなたも一人前のエンジニアです。