春です。春といったら海。おだやかな春の海。「ひねもすのたり のたりかな」で、ながめていると時間のたつのを忘れてしまいそうです。ぽかぽかの陽気なら、ちょいと海まで出かけ、童心にかえって貝拾いなどしてみるのも楽しいものです。実は、貝だけでなく海辺には、いろいろなものが流れ着いています。生き物やそのカケラたちが漂い、やって来ているのです。
1本の大きな朽ち木
これ、ちょっとみると、タダの朽ち木です。普通の人なら心に留めることもなく、単なる風景としてスルーしてしまうはず。でも、実はそこには、ちいさな生き物たちのドラマが隠されていたりして。さてさて、木を眺め回してから、表面をはぎ取ると……。
表面をはがしてみると、そこには、なんと。クワガタムシ(のサナギ)
あら不思議。そこにはなんと、クワガタムシのサナギが隠れていました! 川を渡り海を越えて、はるばるビーチに流れ着いたクワガタムシ(のサナギ)。「波の音を聞きながら羽化したクワガタ」なんてのも、なかなか素敵かもしれません。
直接、その生き物たちと遭遇しなくても、砂浜に空いた穴やの1つひとつ、足跡の1つひとつから、生き物たちの生活をうかがい知ることができます。小さな穴と鳥の足跡らしきものから、スナガニを狙ったカモメたちの虎視眈々たる姿を思い描いたり、隣り合って岩にくっついているフジツボの殻から、つがい相手を求めて同種のフジツボの側に降り立つフジツボ幼生の姿を思い描いたり……。
海のおだやかな波の音を聞きながら、日常の喧噪から離れて、生き物たちの暮らしに思いを馳せる、そんな豊かなひとときを過ごしてみませんか? ちょっとした自然の中にも、意外性に満ちた出会いと喜びは満ちあふれています。上記の海辺のエピソードほか、ユーモアと生き物(ヒト含む)への愛に満ちたエピソード満載の『タゴガエル鳴く森に出かけよう!』是非、春の日のお伴にどうぞ。(まる)