かねてから、コンピュータのネットワーク(におけるサーバ群)は雲のような形の図式で描かれていました。クラウドコンピューティングという言葉は、おそらくこうした図式をイメージしたところから生まれたと考えられています。何かもやもやした雲のようなものにアクセスしているイメージ。実際に「クラウド」という言葉が使われ始めたのは、2006年、「検索エンジン戦略会議」における、グーグルのCEO(当時)であったエリック・シュミットの発言によるといわれています。
「PCか携帯電話かということに関係なく、『雲(クラウド)』にアクセスすれば、恵みの雨を受けられる」
もちろん、これ以前からも「クラウド」的な技術やサービスの提供は行われていましたが、このころから、クライアントサーバ型のモデルも含め、ネットワークにおけるサービス提供の形が「クラウドコンピューティング」という言葉に集約されていった、と理解すればいいのかもしれません。ただ、言葉だけの問題ではなく大きな変化の兆しはあったのです。
私たちが最もその変化を身近に感じることができるのは、Gmailです。それ以前も、Webメールはいくつかありましたが、Gmailは、一つの革新を備えて登場しました。それは保存できる容量です。Gmailはサービス提供開始時より、1Gバイトの容量を用意しました(現在は7Gバイトを超えている)。たったそれだけ? と思うかもしれませんが、それこそが「クラウド」となりうる重要なポイントだったといえます。
ところで「クラウドコンピューティング」などというと、何か難しいことのように考え、構えてしまうかもしれませんが、技術的なところはともかく、その仕組みを考えてみると、以前から私たちが親しんでいるあるものと似ていることに気づきます。わかりますか? それは「お金」です。私たちは、お金を銀行に預け、ATMやインターネットなどを利用して、自由に引き出したり、送金したりしています。しかし、私たちは、普段、実際の「お金」がどこに保管されているかなどということはまるで意識していません。海外旅行などでクレジット払いにしたときなど、現地通貨で支払ったはずの代金が、引き落とし時には日本円に換算されています。こうした仕組みを考えたとき、「お金」を「情報」に置き換えると、そこには「クラウド」の姿が見えてきます。そう考えると、「クラウド」もそんなにこわいものではないか、と思えてはきませんか?
『クラウドなんてこわくない!』では、「クラウドコンピューティング」の歴史や基礎知識から成功事例の紹介、さらには「クラウド」的な発想といったところまで視野を広げ解説しています。是非ご一読を!