あなたのWebサイトはなぜ儲からないのか? ――ウェブ担当者に捧げる販売の極意

オンラインショップは、ごく普通のものになりました。どのサイトやモールでも、ドングリの背比べで、一目で違いはわかりにくくなっています。検索サイトで、欲しいものを調べて直接購入することも多いでしょう。そうなると「SEO/SEM」対策が大事なのだ、と短絡しないでください。SEO対策は、検索サイトとの無限のイタチごっこに陥るのは、皆さんご存じのとおりです。無駄金を投じるだけです。では、Webに求められるものは何なのでしょうか。それは至極シンプルでわかりやすい指標なのですが、皆さんうっかり見過ごしているものなのです。

Webマーケティングの誤解

いきなりですが問題です。次のウェブマーケティングに関する文章を読み、正しいものを選んでください。

  1. ウェブマーケティングでは集客が重要です。特に新規顧客を獲得することが大事です。
  2. 地域に根ざすスーパーなどの店舗でSEOを実施するならば、⁠業種」「サービス」で上位に上がっても意味がありません。⁠地域名+業種」で上位することが重要です。
  3. KPIを決めるときには、インターネット系の情報サイトや書籍にサイトの目的別KPIがのっています。その中から自社に合いそうなKPIを選ぶと良いでしょう。
  4. KPIとしてまず重要なのは直帰率です。しかし、直帰率を下げたからといって、サイトが良くなるとは限りません。
  5. ネットショップでは、つまり検索数の少ない商品(=少数の人しか検索しない商品)の利益がショップの半分の利益を占めています。だからロングテールの部分は大事にしなければいけません。

実は、1から5の中で正しいのは一つだけです。残りは、すべて間違っています。この回答は本書を読んでいただければ、わかるようになっていますので、ぜひ読んでください。

案外、全部正しいのでは、と考えてしまいますが、ビジネス視点で見ると、失敗パターンなのです。本書では、その秘密をあきらかにしていきます。

ウェブ分析とは何か?

SEO対策さえすれば自動的に顧客が増えて儲かると思い込み、SEO業者に依頼してもすでに競合他社が特定のキーワードを囲い込んでいれば、単に値段のつり上げに加担するだけで無駄金を費やしてしまいます。また、せっかく対策に成功しても検索エンジン側のSEOポリシーやソフトウェアが変更されたら意味のないものになります。つまりウェブ対策しても意味はありません。たとえば、化粧品をヒアルロン酸でSEOしても、失敗は火を見るよりも明らかです。競合が多すぎるからです。

本書では、前述のような間違ったマーケティングの常識から、思い込みを排する方法を提案しています。その方法とは、⁠売りながら調べ、調べながら売る」という販売の科学をベースにした「ウェブ解析」です。この解析は統計的なものではありません。ですから、数学に弱い人でも問題なく理解し使えるものです。

KPIを決めてWebを運営していますか?

KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)というマーケティング用語があります。これはKGI(Key Goal Indicator:目標達成指標⁠⁠、KSF(Key Sucess Factor:成功要因指標)から構成されています。つまりKPIは、目標値と目標を実現させる要因からなる概念です。たとえば、オンラインショップで日本一の売上げを立てる商品を販売する、というのはKPIになりません。⁠日本一」が曖昧だからです。一つの商品に対して現実的な販売目標とそれを達成させる手段を決めることが重要です。これが実際には非常に難しく経験が要ります。本書では、その方法をさまざまな実例をもとに解説しました。関西の引っ越し業者の例は、非常に示唆的です。顧客ニーズを「単身赴任」に絞り込み、検索サイトでキーワードの上位を掴むまでのサクセスストーリーは、Web担当者ならばきっとワクワクするはずです。

商売の本質を見極めろ!

企業のウェブサイトの9割が、ウェブマーケティングに失敗しています。その理由はたった一つ。⁠結論に飛びつく」こと、それに尽きるとい執筆者の江尻氏は言います。各社成功事例はさまざまなのに、鵜呑みにしてしまうことにあります。企業は一つ一つが、違う性質を持ち、同じものは一つとしてないのに、他社事例を真似てみて失敗するのです。何が足りないのか、というと自社の自己分析以外ありません。その客観的な指標が、KPI、KGI、KSFです。これらを道具にウェブ解析を行うことで、自分の商売の本質がわかるようになります。その意味で本書は実は単にWebの本ではなく、ビジネスを見直し再生するためのヒントが含まれていると言えます。ウェブを解析することで、顧客が何を自社に求めているのか、商売の原点も再確認できるようになります。また一段上を目指す、ウェブビジネス関係者に本書をお薦めします。きっと新しい道具と考え方を得られるようになるでしょう。