『種の起源』読むために

理科の教科書、もしくは歴史の教科書などの中で、⁠種の起源』という本の存在をご存知の方も多いと思います。本の存在はともかく、ダーウィンという名前や進化論という言葉を聞いたことがあるという方も多いかもしれません。そういう意味において、チャールズ・ダーウィンが著した『種の起源』という本は、世界の中でも、最もよく知られた本のうちの一冊といえるかもしれません。

しかし、それほどよく知られた本でありながら、実際『種の起源』を読んだことのある方、最後まで読み通した方となると、どうでしょうか? 今度は逆に、あまり多くはなくなってしまうかもしれません。それは実にもったいない話でもあります。

『種の起源』は歴史を動かした、という意味で稀有な本でもあります。まさに当時としては革命的な内容だったといえるでしょう。実際はアルフレッド・ウォーレスとともに、⁠種の起源』の出版(1859年)の前年に発表した「自然選択説」という論文がはじまりだったのかもしれませんが、歴史を動かしたという意味、一般への影響力という点では、⁠種の起源』の出版を待たざるを得ませんでした。そして150年たった現代の読者にとっても、それは十分に示唆に富んだ読み物となっているのです。

『種の起源』の根幹をなすのは、上記の「自然選択説」です。⁠生物の変化は自然選択の作用による⁠⁠。この結論にたどり着くまでに、実に長い道のりを読者はダーウィンとともに歩まねばなりません。いやダーウィンはもっと長く地道な研究と観察を続けてきたのだから、読者はそれと同じ興奮を味わうためなら、多少の遠回りは覚悟しなければならない、と考える向きもありましょう。しかし、それで途中で挫折したり、難しそうだからと、本自体に手を伸ばすことも無くなってしまっては意味がありません。

超訳 種の起源は、そうした難点を克服するため、できるかぎり原書の内容を損なわないよう、簡潔にやさしく訳し直し、書き直した本です。構成も原書と同じままですから、読了感も味わえるかと思います。また、本書によっておおまかな内容をつかんでおけば、全訳や原書にあたるときも役に立つでしょう。ぜひ中学生や高校生といった年代の方にもチャレンジしていただければ幸いです。