昨年の東日本大震災が引き起こした福島原発事故に端を発した脱原発の流れはここにきて一気に加速し、ついに今年の5月6日をもって日本国内のすべての原子力発電所が稼働停止になりました。これに伴い、原子力に代わるエネルギーとして、風力、太陽光、太陽熱、地熱といったさまざまな再生可能エネルギーが注目を集めていますが、こうした再生エネルギーの活用や電気を無駄なく有効に使用する意味で、脚光を浴びつつあるのが「スマートグリッド」です。
スマートグリッドは、アメリカで誕生した概念で、発電所などの電力の供給側と一般家庭など電力の需要側との間で、電力に関連する情報のやり取りを可能にする電力ネットワークのことです。発電所などの電力の供給側と一般家庭やオフィス、商業施設など電力の需要側との間で、ITを利用して電力に関連する情報のやり取りを可能にするものです。太陽光システムなどにより家庭にも多数の発電設備が備わったので、必要に応じて電力がそれらから送電網に流すことが可能ですし、電気自動車の蓄電池を送電網に接続して電力をその蓄電池から送り届けることなどもできます。このように電力の流れが双方向になることで、発電所への投資が抑制できるのです。
スマートグリッドの最大のメリットは、ピーク電源への対応です。電気の使用量は季節や時間によってさまざまです。使用ピーク時は、ひとつの電力会社が原発2~3基分の発電所を用意しなければならないことがありました。発電量は常に電力消費にぴったり一致させなければならないからです。これは最終的に顧客に転嫁されるため、ピークの電気料金は高いものになるわけです。スマートグリッドを整備することによって、こうしたピーク電源にかかる投資や費用を抑制することができます。
ただし、アメリカのように電力事業者が3,000社以上も存在している国とほとんど電力会社が固定され選択肢が皆無に等しい日本とでは同じように普及するのは難しいかもしれません。また、インターネットで問題になっているのと同様に、通信システムを利用することで不正操作やウイルス感染といったセキュリティ問題も懸念されています。しかし、数年前に起こった日本スマートグリッド不要論が今、見直されつつあることは間違いないでしょう。今後の動きに注目したいところです。