「だまし」にも負けず⁠閉塞感にも負けないための2冊

ご好評いただいております「生きる技術!叢書」4月は2冊の刊行です。

一冊目は、香山リカ著「だまし」に負けない心理学⁠。世の中に情報があふれればあふれるほど、どれが正しくどれが間違っているのか、見分けるのがむずかしくなります。人を不安に陥れるような言説もたくさん飛び交うなか、人はいったん不安にとらわれてしまうと、冷静な判断力を失い、正しい情報や科学的な答えをではなくて、不安を取り除いてくれそうな人や言葉を求めてしまいます。そこに「だまし」の入りこむ余地がある。

なぜ人はだまされるのか。それに対抗するためにはどうすればよいのか。占い・予言、マインドコントロールから、〈橋下徹的わかりやすい極論〉まで、危ない言説にだまされない処方箋を、心理学、コミュニケーション理論をもとに解説していきます。自分の頭で考えて、自分の判断を持ってだまされずに生きる。そのための知恵がつまった一冊です。

もう一冊は藤井聡著プラグマティズムの作法⁠。著者は京都大学大学院工学研究科で都市工学を専攻する「土木屋さん」でありながら、進化心理学、哲学に通じ、経済・金融政策にも明るいという「文理両道」のマルチな才能の持ち主。今回の本は、その藤井先生の「思考のエンジン」を明らかにし、多くの人に共有してもらうことで、日本の閉塞状況を打開しようという、力強いメッセージが詰まった本です。

景気の低迷、失業率の上昇、格差の増大……日本を覆う閉塞感の全ての元凶は、⁠プラグマティズム=現実における実用性でその真偽を測る哲学」の不足にある!と藤井先生は主張されます。では、そのプラグマティズムとはいったいどういうものなのか? それがあれば本当に日本は再生できるのか? ─⁠─その問いをとば口に、パース、デューイ、ウィトゲンシュタインらの哲学的解説から、アカデミズムの停滞、経済、ビジネス、まちづくり・国づくりの現場における堕落の実態、そしてそれを乗り越えるための処方箋に至る、骨太の論議が展開されます。生き方の指針を模索している方におすすめです。