ある日、シモツキ、キサラギ、ヤヨイの小学生トリオは、近くの犬神山で起きている超常現象のうわさを聞き調査に出かける。そこでふしぎな現象を体験した3人だったが、偶然出会った全能博士なる老人から、それが「パラドクス」であることを知らされる。興味をもった3人はパラドクス探偵団を結成し、さらにふしぎな現象の調査に乗り出すが、そこには日本中をパラドクスによって支配しようとする恐ろしい大悪魔の存在が……。
『大悪魔との算数決戦』は、シモツキ、キサラギ、ヤヨイという小学生3人組が織り成す冒険ストーリーです。どんな冒険かというと、ジャングルや洞窟を探検するようなものとは少し違って、ちょっと頭を使う、知性の冒険です。子供たちの行く手には「パラドクス」という秘境が待ち構えています。彼らは「パラドクス」によって生じるふしぎな現象の謎に挑んでいきます。
「パラドクス」というのは、ちょっと聞くと正しく思える話、登場人物である全能博士の言葉をかりれば「常識に反する結論が、一見、論理的に導かれていること」です。で、その「パラドクス」というのが、どうして算数やら数学と関係あるの? という人もいるかもしれませんね。そんな方も、ぜひ本書をお読みください。
みなさんは、算数や数学と聞くと、正確無比で冷静、つまるところ堅苦しい勉強、学問であるといった印象をお持ちかもしれません。しかし、実は算数や数学も、「完全無欠なんてことはなく、間違えたり、混乱したりすること」もあるのです。それがまさに「パラドクス」なのです。算数は、「パラドクスにやりこめられ、頭を抱え、パニックになり、それを乗りこえて一人前」になっていきます。それはあたかも、主人公であるシモツキ、キサラギ、ヤヨイの3人が、悪魔たちの投げかける難問(「パラドクス」)に混乱しながらも、なんとか知恵をしぼり、謎をといていく(成長していく)様子を見るかのようです。
そう考えると、算数や数学は、けっしてやっかいなものでも、めんどうなものなのではなく、自分たちと同じような存在なのかな、友だちとしてもやっていけそうかな、なんて思えてきませんか? 本書を読み終えるころにはそんな気持ちになっていることを願っています。