「デフレから脱却すればうまくいく」本当か

安倍政権の経済政策の三本の矢――大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略。なかでも注目されているのは、大胆な金融緩和措置を講ずるという金融政策でしょう。その目的は、日本経済を苦しめ続ける元凶とみなされているデフレからの脱却です。

この4月に弊社から刊行された「デフレ脱却」は危ない―アベノミクスに突きつけられるジレンマ⁠。この本のタイトルを見て皆さんはどのように感じるでしょうか?

「デフレを何とかしないと日本経済はよくならない。デフレ脱却が危ないなんてどうかしている」

「ようやく株価にも明るさが見えてきた。アベノミクスの足を引っ張るようなことをしてはいけない」

このような印象を持つ方もいらっしゃるでしょう。そこで、ここでは本書の意図するところを、簡単ではありますがご紹介したいと思います。

まず、本書著者の公認会計士・髙橋淳二氏は次のように言います。

タイトルから誤解されないようにあらかじめ説明しておきますが、私も当然にデフレがよい経済環境だとはまったく思っていません。非常に困った状況であり、デフレ脱却を目標に掲げる「気持ち」は痛いほどよくわかります。

そして、安倍政権の足を引っ張るような意図は毛頭ない、と。

私は、安倍政権の国政方針について、基本的に非常に強いシンパシーを覚えています。日本が直面しているさまざまな国難に立ち向かうためには、安定した政権基盤によって力強く国政に取り組んでもらう必要があります。安倍総理には是が非でも強力なリーダーシップを発揮していただきたく、強く応援したい気持ちで一杯です。

そのうえで、安倍政権の「経済政策」について異を唱えているのです。

しかし、経済政策「アベノミクス」については残念ながら賛同できません。

(中略)

アベノミクスに対しては、それを前提にして、次のように問いただします。

デフレ脱却に伴う金利上昇による「金融システムの崩壊リスク」についてどう考え、どう対処するのか? もしくは、金利上昇を伴わないデフレ脱却は実現可能か?

本書の意図は、ここに集約されています。

アグレッシブで大胆な経済政策は日本にとって福音となるのでしょうか。あるいは、そうではないのか。デフレ脱却政策賛成派にも懐疑派にも刺激的な経済オピニオンを、ぜひご一読ください。