覚えやすく忘れにくい記憶

記憶について、みなさんは普段意識することはありますか? 試験勉強や人との約束、頼まれた用事、友だちの携帯電話番号など、ちょっと考えただけでも、日常生活の中のあらゆる場面で記憶は顔を出します。人が生きていくうえで記憶はとても大切な情報です。鏡の前に立ち、自分の姿を見る。それが自分だとわかる。こんなあたり前のことさえ、記憶がなければできなくなってしまうのです。

私たちは生まれてから、実に多くのことを記憶していきます。さまざま記憶(情報)を蓄えていくことで、現代を生きていくための知恵を身につけ、自分自身をつくっているといってもいいでしょう。しかし、記憶が蓄えられている脳にも容量の限界があります。もし、私たちの五感を通じて入ってくる情報(目でみたもの、耳で聞いたもの、匂いや味など)をすべて記憶していったとしたら、5分ほどで脳の記憶容量は満杯になってしまうといいます。脳の中では、神経細胞がいろいろと複雑に刺激しあって、どの情報を記憶し、どの情報を捨てるか、とやりくりしながら、大切な記憶を保存しているのです。

私たちはときどき、すごい記憶力をもつ人をみて、あんな風に記憶できたらいいのにとか、どんな方法で記憶しているんだろう、ということを考えます。もし記憶のスイッチがあって、これは覚えよう、これは覚えなくていい、などとコントロールができたら、ちょっと便利かもしれない、なんて。

記憶については、まだまだ解明できない謎も多いようですが、かなり研究も進み、その性質やしくみについての理解は進んでいます。⁠記憶のスイッチ」についても、脳のこの辺にありそうだという研究報告が少し前にありました。

もちろんスイッチが見つかったとしても、それをどうコントロールするかは別の話です。脳はいつも同じコンディションでいるわけではありません。コンディションによって、覚えやすかったり、いくらがんばっても頭からこぼれ落ちていくように、何一つ記憶に残らなかったりもします。一朝一夕にはいかないのでしょうが、こうした記憶のコンディションの波をどうにかこうにかやりくりし、いつかは究極の記憶術が生まれる日が来るのかもしれませんね。