そのスライドでプレゼンに勝てますか?

伝わらないプレゼン

とくにITC関係のプレゼンを受けていてよく感じることは、⁠これはいったい誰のためのプレゼン?」ということです。みなさんも、他社のプレゼン(下手すると自社のプレゼン)を聞いていて、そう思うことはありませんか? 開発した製品や技術などを参加者に向けて説明しているはずなのに、ちっとも伝わってこない。理解するのに苦労する複雑怪奇な図解やマトリクス。聞き慣れない業界用語で構成され情熱や感情が見えてこない文章。⁠ああ、これは自分には関係ない話なんだなあ」と感じて、こちらは思考停止してしまいます。ひょっとして理解できないこちらが悪いのではとさえ感じることがあります。

「自分たちのためのPowerPoint」になっていないか

もちろん、限られた業界の、限られた人たちだけに発表するようなプレゼンではあれば、それもありかもしれません。しかし、広く一般の経営者や、予備知識の少ない投資家などに伝えたいときは、それでは役に立たないでしょう。ただ、実際にはそんなプレゼンが多いのが実感であり、参加者の目が死んでいるセミナーも少なくありません。

そういうプレゼンのPowerPointを見ていると、確かに時間をかけて、ロジカルに作られたものが大半です。しかしそれは、プレゼンのためでなく、⁠自分たちが満足するために」つくったようなスライドになっていませんか? 本当の目的はプレゼン相手に伝えることではないのでしょうか?

伝えるだけでなく、動かさなくては

「伝える」ために戦略を考え、工夫する。大切なことですが、⁠伝える」だけではダメでしょう。ビジネスでプレゼンを行なう目的は、⁠相手を動かす」ことです。相手に伝え、動かすためにはどうしたらいいのか? PowerPointを開く前に、考えるべきことがあります。本書は、⁠相手に伝え、動かす」ために、どういう戦略を立てるのか、そのために、どういうスライドを作成すればいいのか、よくある「こうあるべき」という話ではなく、⁠具体的にこうする」という手法を述べるものです。アカデミックなものではなく、すぐに「実戦の場」で役立つ情報を盛り込んだものと言えます。

スライドのクリニックを誌上で再現する

筆者は、よく「PowerPointのクリニックをして欲しい」と、友人たちに依頼されます。クリニックの前に、目的や使う場面、そしてプレゼン相手の特長などを聞き、そして、⁠どういうプレゼン結果が、あなたにとってゴールなのか?」とヒアリングします。友人たちには、パパッとスライドを直して欲しかったのにと、じれったく思われますが、それらの周辺情報を聞かないと、単にスライドの見栄えをよくしただけでは役に立たないからそうするので、その結果、プレゼンに通過し感謝されます。その過程は、まさにクリニックで、何でもいいから薬を出してくれ、という患者にすぐに薬を出すのではなく、生活習慣や、食事、いろんな角度から分析し、最適な処方を行なうこと。この書籍については、筆者のスライドのクリニックを誌上で再現できないかというアイディアが、きっかけでした。そのようなビジネス書はほとんど見ません。

見本ファイルのダウンロードや加工も自由に

本書のキモは、その「スライドのクリニックの再現」であり、ブラッシュアップする加工過程を公開するところです。また、本書に収めたスライドのサンプルについては、PowerPointファイルをダウンロードできるようにしてありますので、ルールさえ順守していただければ、みなさんのビジネス現場で、自由に加工して使っていただけます。ぜひ、⁠伝えて動かす」プレゼンのために役立てていただきたいと思います。

(藤木俊明)
Before
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スライドのクリニックを誌上で再現

After
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