理想的なウェブサイトが実現できるCMS
コンテンツファーストといわれるようになって久しいウェブ業界ですが、ウェブサイト構築の理想はデザイナーが優れたUIを用意して、クライアントが自分でコンテンツをどんどん更新して、という役割分担がうまくできる仕組みがつくれることです。そこで登場したのがCMS=コンテンツ・マネジメント・システム(Content Management System)です。
CMSソフトの事実上の世界標準となっているのがWordPressで、世界の主要なウェブサイトの28%、その中でもCMSを導入しているウェブサイトの59%が利用しているとされています(W3Techsの公表値で2017年5月時点)。CMSの導入を検討するなら、まずWordPressをといっても過言ではないでしょう。
もともとブログ制作システムとして生まれたため、気軽にブログを書くようにコンテンツを追加していけるのが特長です。とはいえ、アップデートを重ねて4.8となった現在、あらゆる目的のウェブサイトに対応するために豊富な機能が実装され、任意で追加できる機能もないものはないというくらい用意されています。
CMSではサイト制作者とコンテンツ管理者が役割分担をしながらサイトをつくります
イラスト:角田綾佳
ウェブデザイナーとしてのWordPressとの向き合いかた
ウェブデザイナーとしてWordPressに対応しなきゃ、と思いつつも二の足を踏んでいる人も多いのではないでしょうか。実際、初学者が全体を見渡すのは並大抵ではありません。そこで多くの入門書では理解するよりもまず慣れろで、「とりあえずWordPressで1つサイトができればいいでしょ」と割り切って、言う通りやってみたら本の通りのサイトができた! で終わってしまうことが多いのです。
DIY的にサイトを1つだけつくるならそれでもいいかもしれませんが、デザイナーとしてWordPressをずっと受託業務に利用していくなら、クライアントに期待されるサイトを実現するための創造性がやはり求められます。それにはある程度まではWordPressのしくみを理解しておく必要があるでしょう。
WordPressはPHPを使って動いているので、PHPを一から勉強しなければいけないというわけではありません。大切なのは、WordPressによるサイト制作で用いる数多くのパーツを組み合わせていく工程の全体像が見えていること。第一にサイトの機能と外観を左右する「テーマ」の設計がありますが、機能を追加する「プラグイン」の探し方や選び方も基準がないと困ります。ひとつひとつはユニットのように単純化されて見えますが、組み合わせて1つの完成サイトとして提供できるまでには多面的なノウハウが必要になります。
個別の技術を究めるよりも工程全体を見渡せるように
DIY的なサイトと受託業務としてのサイトのつくり方では何が違うでしょうか。業務ではローカルできちんと動作テストをしてから本番サーバに公開(デプロイ)します。しかし、WordPressのローカル開発環境の構築までは自助努力が必要で、ここでつまずくと門前払いの気分になります。またローカルで作成したデータをFTPでそのまま公開サーバにアップしても、データベース内のパスが変わるため動きません。パスを書き換えるツールを利用することになりますが、そのあたりは意外と本では教えてくれないのです。
サイトのセキュリティもきちんと考えておくことが大切です。世界標準のCMSということは攻撃される可能性も高いため、管理画面へのアクセス制限を強化したり、万一に備えたデータのバックアップは必須です。復旧にはどのデータをどうバックアップすればいいのかを知っておかないといけません。
幸いWordPressには強力なユーザーコミュニティがあり、ボランティアによって有益な情報が豊富に公開されています。関西コミュニティのメンバーによる『世界一わかりやすいWordPress導入とサイト制作の教科書』は、WordPressを末永く使い続けてもらえるように初学者に本当に必要な情報を選び出し、やさしく丁寧に解説しています。膨大なWordPressの一次情報へアクセスするための足がかりとして読んでみてください。