Kubernetesを俯瞰し⁠全体を把握しよう!

入門しづらいKubernetes

「名前は知っているけれど、どういうものなのかはわからない」という印象を持たれがちな技術はいつの世にもあるもので、⁠Kubernetes」もそんな技術の代表格です……というのは言い過ぎでしょうか。けれど、Kubernetesに対して「興味はあるし、勉強すべきと考えてはいるものの、いったいどこから手をつければよいかわからない」といった印象を持っているエンジニアは少なくないと考えています。

実際、コンテナ技術の有用性が広く認識されるようになり、それをとりまくエコシステムも日進月歩で充実しつつある昨今、多数のコンテナをうまく協調させ動作させる技術、すなわちコンテナオーケストレーションのための技術として、Kubernetesの重要性はますます高まっています。コンテナを利用したサービスをスムーズに運用し、かかるコストを低減するために、まず知っておきたい汎用的な技術こそKubernetesであるというわけです。ですから、興味がある、そして勉強をしたほうがよいと考えるのは理にかなったことといえるでしょう。

しかし一方で、機能やエコシステムの充実というのは学習の障害にもなりがちです。その技術をとりまく全体像を見渡し、どの領域について知ることが自分にとって必要なのか、どこに資料を求めればよいのか、そういったことを知るだけでも一苦労だからです。コンテナオーケストレーションという領域を牽引してきたKubernetesならではの独特の概念も多く、既存の知識をなぞらえて理解することが難しくなりがちであるという事情もそれに拍車をかけているかもしれません。

知識の「見取り図」を携えて

こうした状況を鑑み、⁠Kubernetesに関する知識の見取り図」を目指した書籍が『Kubernetesの知識地図』です。

どのようにアプリケーションを構築し、コードとして記述するのか。バッチ処理を行いたい場合はどのような手段がとれるのか。データベースのように状態を持つコンテナを構築・運用する際の注意点はなにか。負荷分散や冗長性確保のためにどのような機能があるのか。Kubernetesに適した継続的インテグレーション/継続的デリバリーの手法はどんなものか。機密情報の管理や認可処理はどのように実現すべきか。そして監視はどうすべきか……などなど、本書は多岐にわたる観点を一冊に盛り込んでいます。まさに「全体像」を見渡し、そのうえで歩いていくための「地図」というわけです。

もちろん、幅広い内容が盛り込まれているといっても、分厚く読み通すことが難しくなってしまっては本末転倒です。そこで本書は、先述のとおり網羅性を重視する一方で、個別のテーマについての解説を書籍のなかだけで完結させないというスタイルをとっています。ポイントとなる部分をおさえて解説する一方で、詳細については積極的にWeb上のドキュメントを紹介しているのです。

そんな特徴をもつKubernetesの知識地図は、初学者のみならず「使えてはいるけれど、ほんとうにこれでよいのだろうか」と不安に思うエンジニアにとっても、Kubernetesに関して効率的に学習・実践を進めていきたいのであれば必携の一冊といえるのではないでしょうか。