SD発⁠『万能IT技術研究所』第2弾!

二度目の書籍化

ITエンジニア向けの総合技術解説雑誌である『ソフトウェアデザイン』のカラーページでの長期連載が『万能IT技術研究所』である。そもそもカラーページを活かしつつ、プログラミングの楽しさを伝えるという目的で企画され始まったものなのだが、異才・平林純氏の手にかかるといっきにPythonを武器に世相を平然とぶった切るディープな記事ができあがる。本書は、じつは2度目の書籍化である。2018年から2年ほどの連載記事をもとに制作したなんでもPythonプログラミング⁠2020年10月発行)があり、この本の目次は次のようになものだ。

  • 第1章 光の研究
  • 第2章 流体力学の研究
  • 第3章 音の研究
  • 第4章 画像処理の研究
  • 第5章 AR(Augmented Reality)の研究
  • 第6章 三次元画像処理の研究
  • 第7章 物理計算の研究
  • 第8章 数学と分析の研究

物理を切り口に、真面目に科学しているのがわかる構成である。AnacondaでPythonプログラミング環境をつくり、Jupyter Notebookでブラウザベースですぐに試すといったコンセプトである。スマホアプリ全盛だった当時としてはiPhone上で動かすアプリについてはPythonista(有料)を使用し解説している。スモールコンパクトでパーソナルなPythonプログラミングを楽しむことができるので、Webや機械学習に飽きてきた皆さんに非常に好評だった。

より深く世界を分析

さて、本書Python科学技術研究所の目次は次のようだ。

  • 第1章 画像可視化の技術
  • 第2章 画像作成の技術
  • 第3章 画像分析の技術
  • 第4章 工作の技術

科学的な話題をより深堀して抽象的なものに変化したのがわかる。筆者の平林氏の専門がまさに光学なので、そうなるのは自明ともいえる。第1章の内容については、スマホのカメラがとらえた画像をもとに人間の表情の色を分析して精神状態を分析してみせたり、グリコ森永事件で使われた無線電波の地理的な情報から犯人像を推測してみたり、前作よりより深い分析と解析をPythonプログラミングを駆使することで示している。

筆者自らの科学知識とPythonプログラミング技術が融合し、まさに魔法のように事象を分析し、想像しえない結果を導き出す。前作の『なんでもPythonプログラミング』から、内容もパワーアップしてより深い洞察に富んだものになった。その違いは、生成AIの活用が加わったことが大きい。分析・解析するプログラミングロジックの基本は前作でも筆者が述べているが実は同じものが多く、研究対象が違うだけなのだが、生成AIの力を使うことで、一ひねり違った結論が導かれるのだ。今回は単にそれだけでなく、身近な事象から自然界の現象を理解していく手がかりを示す記事が多くなっている。筆者のGitHubからダウンロードしてコードも再現可能だ。実際に試しながらPythonと科学を楽しんでほしい。